第十二話「良心的な宿」
短めです。
「安い宿やったら一人につき銀貨一枚って言ってたよな?」
「せやな。」
「俺たちが持ってるのは銀貨三枚と銅貨五枚やから、泊まる分引いたら
残金は銀貨一枚と銅貨五枚分。これアイテムボックスっての買えるか探してみるか。」
「あ、さっき売ってたで。」
「マジか。どこ?」
「ほらあれ。あっこの店の前のとこの左の方。」
「お、マジやん買おうぜ。」
「でもあれ銅貨十五枚分って書いてあるで」
「残金0になるんか…。まぁでもしゃあない。買おう。」
「これください。」
「おっ、兄ちゃんたち冒険者かい?」
「あ、はい。そうです。」
「装備を着けてない所を見ると新米だろ?安くしとくぜ!」
「え!ありがとうございます!」
「いいってことよ。兄ちゃんたちみてぇな冒険者が居なきゃ、
俺たちもこんなに平和には暮らせねぇからな!」
かくして祈光達はアイテムボックスを銀貨一枚、つまりは銅貨十枚分で手に入れることが出来た。
「さて、あと使えるのは銅貨五枚やな。悠誠,どうする?」
「宿、素泊まりになるやろうし、飯買おうぜ。」
「そうするか。」
「あ、あれ良さげじゃね?」
「おぉ、確かに美味そうやな。」
そう言って買ったのは銅貨二枚分のサンドイッチ2つ。
「一個ずつ食おうぜ。」
「おう。」
こちらの世界に来てから何も食べずに森を歩き続けていたため、お腹が減っていたこともあり、
二人は直ぐにそれを平らげた。
「そろそろマップに載ってた宿行ってみるか。」
歩いてそれらしき場所に向かうと、想像よりも余程綺麗な宿に辿り着いた。
「値段どんくらいやろ。」
「俺聞いてくるわ。」
「すみませーん、ここってどのくらいの値段で…え?え?マジですか?え??
あ、ありがとうございました。」
「悠誠、どうやったん?」
「朝飯付き、風呂トイレ付きで二部屋併せて銀貨一枚と銅貨五枚分やって!」
「え?マジ??めっっっちゃ安いやん!」
「な!やばいな!」
「今日ここ泊まります!二部屋で!」
「はいよ!二階の215、216の部屋を使いな!」
「はい!ありがとうございます!」
部屋を見てみると、豪華と言えないまでも小綺麗な部屋。
あまりの喜びに叫んだ二人が宿の人にちゃんと怒られ、
平謝りをすることになるのは、また別のお話…。