第十話「賑やかな街のギルド」
「お、その様子だと問題なく作れたみたいだな。」
「はい。おかげさまで。」
「いいってことよ。これから街に入るんだろう?一応、ステータスプレートを確認させて貰うぜ。」
そう言われ、二人共ステータスプレートを提示する。
「よし、問題なさそうだな。じゃあ改めて…ようこそ、ミバイルの街へ!
金を稼ぎたけりゃ、大通り沿いのギルドへ行けばいいぞ。看板は剣のマークだ。
そして、ほら、これがミバイルの地図だ。」
「何から何まで…本当にありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「おう。」
繰り返しお礼を言ってから祈光達はミバイルの街に入った。
「なぁ悠誠,まずどこ行く?」
「さっきの人も言ってたし、とりまギルドってとこ行ってみたらいいんちゃう?」
「せやな。大通りやっけ?」
「おん。」
そうして二人は地図を見て歩いていく。
水路とレンガによって構成されたヨーロッパらしいその町並みは、
元の世界で言えばヴェネツィアに近いものであろうか。
小舟が通る程度の少し小さめな水路の両脇では露天商のようにして
それぞれ様々な商品を売る人々が居る。
夕方にしては賑わいの残ったその光景は、昨日まで暮らしてきた
日常の下校時刻、駅前でダラダラと過ごした頃を思い出させるもので、
祈光には離れて間もないその日々が酷く懐かしく思えた。
「お、ここっぽいな。」
それらしい建物にたどり着き、祈光が扉を開ける。
中には、酒を飲んで盛り上がる人や、受付らしい場所で魔物の素材を売る人、
依頼版を眺める人などが居て、ぴったりそのまま想像通りのギルドといった様子だった。
受付へと向かうと、そこに居たお姉さんに声をかけられた。
「こんにちは!冒険者登録の方ですか?」
「えっと、そうなるんですかね…?門番の人にお金を稼ぎたいならここに行け、って
言われたので来たんです。」
「あぁ、その人は多分ガロドさんという方ですね!ここギルドでは、冒険者登録をすることで
冒険者になって、魔物の素材を売ったり、依頼を達成したりすることで
お金を貰う事が出来るんです!」
「へぇー、そうなんですね。」
「祈光、どうする?」
「登録にお金かからんならやっても良さそうやな。」
「登録に料金はかかりませんよ!冒険者登録について詳しい説明をしましょうか?」
「あ、お願いします。」
「冒険者になると、先ほど説明したものに加えて、
ギルドオークションと呼ばれる競りに参加できるようになったり、
高ランク冒険者になれば危険度が一定以上の立ち入り禁止区域に入ることなどが出来るようになります!
ギルドオークションというのは、冒険者が手に入れた武器や装備品などを
ギルドでオークション方式の売買ができるものになりますね!
滅多に市場には流れないような物が出ることもありますので、
それらを優先的に入手出来るのは冒険者の特権になります!
後は…ああ、ランクについてですね!
冒険者には、それぞれEからSまでのランクが割り当てられていて、
その功績や能力、他の高ランク冒険者からの推薦などを総合的に判断して
ランクが上下します!」
「なるほど。」
「ただ、一つ注意をしなければならないのは、冒険者には義務が発生する
場合があるということです。」
「義務、ですか?」
「はい。魔物の大発生や、魔族による襲撃があった場合などに、
ギルドから指名で依頼が入ることがあります。
そういった場合に依頼遂行の気がなければ最悪、冒険者から除名される場合があります。」
「へぇー。悠誠、どうする?登録する?」
「折角やし、しとこうぜ。」
「じゃあ、登録させていただいてもいいですか?」
「承知いたしました!では、必要事項をこの紙にご記入ください!」
そう言われ、名前や年齢などを書き込んでいく。
書き込んだ後それを手渡すと、祈光達は、数分待っていてくださいと指示を受けた。
「登録が完了いたしました!これで、祈光様、悠誠様は今日から
それぞれEランク冒険者となります!そこの掲示板の紙をこちらへお持ち頂ければ
依頼の受領ができますので、ご確認ください!」
「はい、ありがとうございました!」
お礼を言って受付を離れた二人は、話し合い始める。
「なぁ悠誠、俺らこれ、やばくね?」
「は?なんで?」
「俺等今一文無しやん。」
「確かに…やばくね??」
「やろ?やから今日中に依頼こなすか魔物の素材売るかせんと
泊まるとこないのに、今、もう、夕方。」
「うっっっわマジかぁ。マジかぁ……。」
「素材、取りに行かなあかんよな。」
「せやなぁーー。ついでに良さそうな依頼受けとこうぜ。」
「そうしようか…。」