悪女は書く語りけり
悪女は悪女らしく華々しく散りましょう。
私は伯爵家嫡男ユグラ様に、幼いときパーティーで見てから、好きになりましたわ。
そして、運が良かったのは母様同士が親友だったため、婚約者の話は進み決まりましたわ。
『カナリヤ、男爵令嬢如きが辺境伯令嬢の私に指図をしないでくださいませ!』
バチン!
『ふん…ユグラ様に色目を…好色女が!』
彼女を叩いた右手がヅクンと痛む。
『行きますわよ!皆様方!』
「はい、リンディ様」
「今日も美しいですわ」
「リンディ様、新しい焼き菓子をご用意いたしましたの」
頬を抑え、涙を流すカナリヤが痛ましくて…。
毎日私がイジメをし、とうとう断罪され、婚約破棄を言われた。
これで良かったの。だってユグラ様とカナリヤは…相思相愛だったのを私が壊してしまった。
ならば、私は婚約破棄をするため、カナリヤをイジメぬいた。そして、とうとうユグラ様のご実家から婚約破棄を言われました。
良かった…本当に。
真実は家族が知っていれば良いこと。
最北端のとある教会に私は追放され、シスターとしている。
煩わしいパーティーやら茶会やら開放され、のびのびと孤児達と神父様、数人の見習いシスターや見習い神父様と暮らしている。
『さ、皆さんシチューですわ』
「やったー!」
「雪合戦したから嬉しい」
「腹減った〜」
「パンもある?」
「手洗いしよーよ!皆!」
賑やかな教会は毎日が愛しくて大事な日々。
そして、新しいニュースが耳に入った。
ユグラ・コーデリア様と、カナリヤ・キャロライン様がご結婚した、と。
相思相愛だった二人の挙式は、華々しくて豪勢だったと神父様が教えてくれた。
私が歳を取り、お婆さんになったとき、見知らぬ青年が訪ねてきた。
「はじめまして、クロエ・コーデリアと申します。リンディ様ですね?」
『えぇ…』
「リンディ様のお母様の日記が見つかりました。日記には、リンディ様が自ら悪女となり、私の母様をイジメぬいた、と書かれていました」
『母様ったら…仕方ない方』
「父様は真実を見抜けなかった自分を悔やみ、1ヶ月前老衰で亡くなりました」
『そうですか…』
「辛くはなかったのですか?」
『…私の過ちは、相思相愛だった幼い二人の仲を引き裂いた事。それを戻しただけですわ』
「…父様は…父様は…ずっとリンディ様を想っ『シーッ…真実は知っていればそれで良いのです』…でも!」
私はクロエ・コーデリアに微笑む。
『真実は貴方の人生の糧になさい。いつか必ず役に立ちます。ですから、貴方の財産としてお持ちなさい…』
「っ…リンディ様!」
『泣かないのよ…クロエ・コーデリア。泣くのは今ではないの。泣くべきときは必ずきます。その時までとっておきなさい』
「はい!貴女こそ…貴女こそが私の女神です…その強く気高き微笑みは…私だけの記憶におさめます」
『ふふふ…女神じゃないわ…私は悪女リンディよ』
その夜、眩い夜空の夜、私は凄い睡魔に襲われ………。
私は悪女リンディ!
それ以外ないのですわ!
読んでいただきありがとうございます。
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