悔い
「それじゃあ……」
アンナ・カーペンターは息を整え、ベッドに横たわる友人、ミシェルを見る。ミシェルはおなかを撫でて、涙ぐんでいる。「正当防衛で、間違いないわね」
「あの銃は携行の許可をとってないわ」
「そんなのたいしたことじゃない」
アンナが叫ぶようにいっても、ミシェルはゆるく頭を振るだけだ。
「わたしはいいの。ミス・アラ、……ミセス・ラーヴァが罪に問われないようにしなくちゃ。わたし……」
医者がはいってきて、これ以上患者を刺激しないでほしいという。アンナは素直に外へ出た。
アンナは警察署に居る。担当の刑事の話を聴く。
ミシェルの傷は浅かった。それは、手許が狂ったとか、そういうことではない。わざと浅い傷にした。刃ものが複数用意されていて、なにかしらおそろしいことが行われようとしていたのは明白だった。
アンナは吐いた。
ミシェルは情状酌量され、正当防衛で無罪になった。アンナや、弁護士仲間の尽力もあってのことだ。銃の携行についても、彼女が銃の知識に乏しく、実際つかえるものとは認識していなかった可能性を指摘して、罰金で済んだ。
実際のところ、彼女は銃がつかえるものだとは思っていなかったのだ。ただ、夫を脅す為にかまえただけだった。引き金を引いた時も、子どもの命が助かる可能性が少しでも上がるならとやったことで、夫を殺そうとしたのではない。
そうだ。彼女は今に至っても、夫を傷付けたことを後悔している。彼女はただ、夫を傷付けた自分を責めている。
彼女はメディアが、自分を悲劇のヒロインに仕立て上げていると、泣いていた。
ミシェルは、ダブチックの跡取りが弁護士になったのを見て、シルバーバレーを去った。赤ん坊を抱えて。