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黒髭の子と呼ばれた日本人少年  作者: 蓮千日紅
黒髭の子と呼ばれた日本人少年二
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序章

「この船を何回探険しても飽きませんね」

「それは良かったです。この船の船長として嬉しいことです」

 エンドレス・ヴォィイヂュ号の船内。

 クドウは五〇回目となるミリーの探険に付き添っていた。

 ハルトンから逃げ切ってから六ヶ月が経過した。

 ここまでの航路は良好でこのまま続けば今日中にアステラ王国にたどり着くとクレアが言っていた。

 それを聞いたクドウは舵を彼女に任せた。


「……ん?」

 ふと、後ろから視線を感じた。

 振り向くと通路を掃除していた二人の水夫がこちらを、特にミリーを見ていた。

 目が合った途端水夫二人は気まずそうに逸らした。


 ……。


 ーまぁ……しゃーないよな。


 彼らが彼女に釘つけになるのは無理もない。この歳とは思えない発育でおまけに美少女。ミリーがこの船に乗って一日経たないうちに乗組員たちのアイドル的存在になった。

 もちろんサリアも同じ存在だけど、

「いや、むしろ癒し系お姉さん的存在かな?」

 苦笑して引き続き探険の付き添いをー。

「船長さん」

 コートの袖をクイクイと引っ張られた。向くと上目遣いでこちらを見上げていた。

「なんでしょう」

「ずっと前から気になっていたんですけど船倉に布を被せた物が多くあったのですがあれはなんですか?」

「布を被せた物?」

 何それ、初耳ですが。

 と言うかあそこには猟犬海賊団から手に入れた戦利品が置いているはずだ。

「はい。僕気になって乗組員さんたちに聞いたんですけど……なぜか知る必要はないよって教えてくれないんです」

「で、僕に?」

「はい」

「……」

 無言でくるりと反転して指で『船倉に行きましょう』とジェスチャーした。意味が伝わったのかパァッと明るくしてコクコクと何度も頷いた。


「ん、クドウさんと……ミリーちゃんじゃないスか!何しに来たんスか?」

「……」

 船倉に着くと扉の前にスンと数人の戦闘員がいた。スンからちゃん呼びされるのが嫌だったのか真顔のままクドウの背中に隠れた。

「……いえ、ミリーに船倉の中を見せようかと思って……?」

 ただ中を見せようとしているだけなのになぜかスンたちが扉の前に立ち塞がった。

「何しているんですか?そこに立つと通れませんよ」

 ジト目で目の前に立つ壁に言った。

「べ、別に変なものは積んでませんよ!」

「……僕、一言も変なものとは言ってませんが?」

 直後、その言葉を聞いたスンたちはギクッとさせた。

「ハァ……そこをどいてください」

「「「はい」」」

 観念したのかすんなりと退いてくれた。内心、呆れながらトアノブに手を掛けー。

「船長!甲板に上がってください!アステラ王国が見えてきました!」

 甲板から降りてきた乗組員が嬉々とした声で報告しに来た。クドウはドアノブち伸ばした手を一旦戻して分かりましたと言い、ミリーに向いた。

「申し訳ないですが別の機会でよろしいですか?」

「はい!それよりも早く甲板に上がりましょう!」

 すると、船倉なんてそっちのけで目を輝きだしてこの場を後にした。

「……まったくあんなにはしゃいで」

 勢いよく階段を駆け上がったミリーの背を見ても微笑ましく呟いた。

「……お姉さん」

 その呟きを聞いたスンは微笑むクドウを見て言った。

 ー……。

 無言のまま人差し指に少しだけ風を纏わせてチャラ男のおでこにデコピンをした。

「ほら、アホなこと言ってないでとっとと甲板に上がりますよ」

 額を押さえて痛みに悶えるスンに清々しい表情で言い、バサッとコートの袖を翻して何かスカッとした気分で階段を上がった。

「やっと来たわね。ほら、もう少しで着くわよ」

 上がった先にはクレアが立っていた。クドウが来るのを待っていたようだ。

「舵は他の人に?」

 クドウは彼女の隣に立ち、顔だけを操舵輪のある甲板に向いて尋ねた。

「えぇそうよ。早く艦首に行きましょう」

 答えると艦首甲板に続く階段を上がった。そうですねと呟いて後に続いた。

「……あれがアステラ王国」

 艦首甲板に上がると遠い前方に港の影があった。

「の一部です」

 眺めていたら隣からシオンの声が。向くと変わらず鉄仮面を被っているような表情で立っていた。

「一部?」

「正確に言えばそうなります。アステラ王国なこの辺りでは大国であるので」

「へぇ~……ん?」

 説明を聞いて感心していたらズイッとクドウの耳元まで顔を近づかせた。

「そして、クドウ様のような人が転生する先の一つであります」

 と周りが聞き取れないように囁いた。それを聞いてピクッと反応してシオンに向こうとしたが彼女はそそくさと離れていった。

「……元いた世界の人が降り立つ先の国……」

 離れていくシオンを見送ってから前を向いて呟いた。

「ん?何か言いましたか?」

 いつの間にかクドウの隣に建っていたサリアがキョトンと彼の顔を覗き込んだ。なんでもないですと言い、とっさに目を逸らした。

 ー急は止めてください

 若干鼓動が高鳴る中で呟いた。

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