十五
アーサーたちに見守られる中。
二人の間に沈黙が続いたがそれを破ったのはイェーガーだった。
「今度こそ死ねェェェェッ!!!」
甲板を蹴ってすかさず黒い鉤爪を突き出した。
迫ってくる黒い鉤爪に対してクドウはただ突っ立ていた。
「スゥー……ハァー……」
一度深呼吸してから剣を甲板に刺して突き出されたイェーガーの腕を流れるように両手で掴みそのまま階段の下に投げ飛ばした。
「何ィィィィィィッ!!!」
一瞬何があったのか理解が追いついていなかったのか驚きの声を上げながら落下していった。
クドウはすぐに甲板に刺した剣を取り、下の甲板に飛び降りた。
「……お前ら船に戻るぞ」
飛び降りたクドウを見送るいなアーサーは乗組員たちに向いて言った。
「えっ!船長を置いていくんですか!」
「いや、このスクーターが半壊しそうな予感がしたのでな。あいつなら大丈夫だろう。お前たちの船長だからな」
「……そうっスね」
アーサーの言葉を聞いた乗組員たちは納得して早足でエンドレス・ヴォィヂュ号に戻った。
「……ところでお前は何をしているんだ?」
隣で未だ座り込んでいるスンを見て呆れたように声を掛けた。
「腰……抜けてしまっーちょまッ!」
「はぁ……おらよ」
間抜けらしい返しを聞いてアーサーは無造作にスンを掴みそのままエンドレス・ヴォィイ
ヂュ号の甲板に投げた。
「おいこらテメェ!人を物か何かのように投げるんじゃーぶへッ!」
「……ナイス。アーサー……」
「おう」
なにか叫ぶスンを無視して親指をグッと上げたラルに同じように返した。
「レディ。聖女は」
クドウを庇って気絶したサリアを介抱していたシオンに尋ねた。
「はい。気絶している意外特に目立った外傷はありません」
「そうか。それは良かった」
その答えを聞いてホッと胸を撫でて気絶しているサリアをそっと抱き上げて巻き込まれないようにエンドレス・ヴォィヂュ号に運んだ。
「……見せてくれよ……俺に。お前がどこまで強くなれるかを」
その際に顔だけ振り向き、囁いた。
飛び降りたクドウは起き上がるイェーガーに歩みながら言いたいことを言った。
「何が……何が仲間を恐怖にさせれば船長の素質があると言えるんだ!」
「あ、そんなん当たり前だろ。海賊の世界に仲間などー」
「いるんだよ!海賊の世界に!だから仲間がいると海の旅が楽しくなる!仲間がいるからそいつために戦える!仲間がいるからその人の気持ちを分かち合えるんだ!」
直後に剣を構えて突進した。
「ふん、さっきまで押されていたクセに急にいきりやがって!なめるな……よ!」
突進してくるクドウの体を見て後退りして、
「バ、バカな!あり得ん!テメェはもうー」
そして、叫んだ。
「ー神の力が使えないはずだ!」
彼の胸から風が発生して体を纏わせていた。それもさっきより大きくなっている。
ーなぜだ!神の力は弱りきっているはず……まさか!
もう一度クドウの胸を見た。
「お前……まさかー」
「あぁそうだ。俺もあんたも勘違いしていようだ。神の力がまだ使える!」
言いきる前にクドウは使えなくなったと思っていた神の力を惜しまさず全力で出した。
「❬八咫烏=斬上流ー❭」
風を剣に纏わせると下段に構えて瞬時にイェーガーの懐に潜った。
「なッ!」
いつの間に懐に潜り込まれとっさに距離を取ったが遅かった。
「❬ー竜巻❭ッッッッッ!!!」
下段に構えていた剣を斬り上げた。
すると、剣に纏っていた風が膨大になりクドウを中心部とする竜巻が発生し、イェーガーを空高く飛ばした。
「ーッこの!」
空高く飛ばされたイェーガーは大柄な体を使って無理やり風を払い消した。
「クソッ!」
そして、すぐに下を向いた。けど、そこにはクドウの姿がなくただ神の力のよって半壊した甲板のみだった。
「どこだ!どこに消えたッ!」
「こっちだァ!」
ふと、自分よりもさらに上からクドウの声が。
向くとさらに風を膨大にさせたクドウの姿が。剣は鞘に収めていた。
ーあの技をするつもりか!
「無駄だァ!俺は勘がいい!もうその技……は……!」
すかさず空中で黒い鉤爪を構えたが彼は突進しなかった。
「これで終いだッ!!!」
そう叫ぶ同時に膨大な風が剣を収めた鞘に集まると抜刀した。
「❬八咫烏=抜刀流鳳❭ッ!」
抜刀した直後に鞘に纏っていた風が無尽の刃になり放たれてイェーガーに向かっていった。
「なッー」
ヒューッと風が聞こえた途端、体全体の感覚が無くなった。
ーき、られ、た!こ、のお、れが!金、貨千、ま、いのおれ、が……ー!
「勝った……!」
体とともに切り裂かれたイェーガーの首が海に落ちたのを見届けたクドウは神の力で半壊したスクーターの甲板に降りた。




