担々麺とオムライス
早朝
「曉、久しぶりだな。」
友達の車に荷物を積み込んで乗り込む。
「おう。山上元気そうだな。よかったよ。」
土井曉( ど い さとる)はゆっくりと車を発進させる。
「いつも迎えに来てもらって悪いな。ところで奥さん元気?」
「気にすんな。ん?あいか?元気だよ。ばりばり働いてる。休みの日はツーリングとかにも行ってるしな。」
「相変わらず、活発な人だよね。」
「おう。お互い干渉しないからな。好き勝手やってる。俺もあいつもな。」
「そっか。いいね。そういうの。あ、ちょっとコンビニ途中寄って。朝ご飯買いたい。」
「おう。わかった。」
「コーヒーかなんか飲む?」
「あ、飲む。ドリップしたヤツ買ってきてくれ。」
「猫舌なのに?わかった。御飯は?」
「うん。サンドイッチ食べたい。」
おう。と言い置いて、コンビニに走って行く。
適当にサンドイッチとおにぎりビールとお茶を買ってレジでコーヒーも二個頼む。
「はい。コーヒーとサンドイッチな。」
「さんきゅ。いくらだ?」
「いいよ。迎えに来てもらってるし。それに今日はビールパット勝つからな。」
「お前ここんとこ俺に勝ててねえじゃん。」
「うるさい。今日こそ勝つんだよ。」
もりもり朝ご飯を車の中で済ませてとりとめなく会話を展開しているうちに目的地のゴルフ場に着いた。
「お前の荷物これだけ?持ってっておくな。」
「おお。よろしく。」
中に入って荷物棚に荷物を置いて受付を終わらせると曉を見つけた。
「荷物ここに置いてあるから。先に行ってるからな~。」
適当に声を掛けてロッカールームに行って靴を履き替える。荷物もつっこんで、ラウンドの出入り口から外に出て自分のカートを探す。ボールとかティーとか小物類をポッケに突っ込んでグローブをはめる。パターを持ってちょっとパット練習。曉も練習に加わる。
「時間だな。」
「よーし。景気づけに、はい。」
俺は曉にビールの缶を手渡した。
「はい、カンパーイ。」
「朝から飲むのってすごく贅沢だよな。」
カートを走らせ、最初のコースに向かう。くじを引いて俺後、曉先。
「お、ナイスショット。」
「自分で言うなよ。」
あきれつつ自分のティーをセットする。
ばぎゃーんといい音でボールが飛んでいった。
「お、ナイスショット。」
「お前も自分で言ってんじゃねえかよ。」
曉の運転で先に進む。
「お前、さっさと他の女見繕ってつきあっちまえよ。」
「唐突だな!縁があれば…。ちょっと今はまだ考えられないな。…まだむり。」
「なんだ。まだ引きずってんのかよ。」
まだって言われてもこっちからしたらまだって言う程の時間は過ぎていない。その知らせを聞いて俺は目に見えて動揺してしまうくらいに傷ついたんだ。折良くそんなときに曉から連絡が来て少し弱音と愚痴を漏らして次の休みにゴルフでもして気晴らしをしようと提案を受けて今ここである。だから以前から惚れていた女性が結婚したという知らせを聞いてから一週間かそこらである。全く無茶な話である。
「だって、お前、付き合ってなかったんだろ。」
その通りだ。全くもってその通りである。むしろ俺はその人に彼氏がいることさえも知らなかったのだ。しかしだな、俺にも言い分はある。一回そんな雰囲気なったとき身体に触れるのを拒まなかった。しばらくして無理かなっと半ば諦めて会社の女子を交えた飲み会に渋々ついて行ったとき丁度目撃されて俺の顔をみて傷ついた顔をされた。そんな顔されたら気持ちが俺にあるのかと期待するだろ。普通。じゃあ、大事に行こうと思っていた矢先のことだ。結局、俺の独り相撲だったんだな。とひどく落胆した。というか現在進行形でしている。
頭に浮かんだこれらをぐっと言うのをこらえてため息をついた。
「そうだよ。けどな、俺はまじめに考えてたの!繊細なの!いろいろあったの。おしまい!お前のせいでミスるから止めろ。変な話題ふるんじゃねーよ。」
「いろいろ、ね。ふーん。まあ、作戦の内だ。」
完全なる八つ当たりにからからと曉は笑う。グリーンの芝の目がどうのと、ちょっと下ってるだの話ながらしっかりパーをとりやがる。ちなみに俺は集中しきれずにダボだ。
「出だし最悪。」
と俺が言えばからからといつものことじゃねえか。と笑われる。
そんでもって前半の8、9ホール目ビールパットは一勝一敗。
「まずまずだな。」
靴の裏の芝生をとってレストランに向かう。あいつがトイレに行っている間にビールとつまみを少しと担々麺を頼み、背もたれに深く体を預ける。
戻ってくる頃にちょうどビールとつまみが出てきて背もたれから体を起こす。
「お前何にしたの?」
「俺担々麺。」
「ふーん。お前どこ行ってもだいたいそれだな。俺カレー。あ、ちょっと待て、やっぱオムライスにしよ。」
メニューをぺらぺらめくって心が揺れたらしい。曉を放っておいてタマネギサラダをつついてビールを飲み干す。
「おかわり。」
曉にジョッキをつきだして足りないとアピールする。
「わかったよ。今日はおごってやるから好きなだけ飲めよ。」
スタッフを呼んで曉はオムライスとビールを頼む。
「おおー。さんきゅ。」
優しいなあと心の中で感謝しつつも口では気のない返事になる。先ほどの思考にまた囚われた。俺が強引に行けば結婚を回避できたのか?いや、そもそも俺の気持ちに応える気はあったのだろうか。しかし無いという事は無いだろうよ。あの表情に説明が付かない。だが……。この事を考え始めると身体が重く息苦しさを感じてしまう。これ以上は考えるのを止めた方が良さそうだ。どうせ考えたところで他人の気持ちなんかわかりっこない。
「俺さあ、幸せになって欲しいと思ってるんだけどさ、どこかで諦め切れてない気持ちもあるんだよな。笑ってくれ。」
自分でもみっともないなと思いつつ自嘲気味に笑う。ほんとに曉にからからといつものように笑い飛ばして欲しくて独白した。
「そんだけ本気になれるヤツに会えたんならそれはそれで幸せなことだろ。」
曉は俺を笑い飛ばすことは無くただ紳士にまじめな顔で言った。
そのうち担々麺とオムライスが来てたわいない会話を繰り返して胃袋に納めて後半戦にいどんだ。
まあ、その日のスコアはもちろんボロボロだった。うん。敗因はわかっている。飲み過ぎたこととメンタル豆腐だったからね!面白い程ぼろぼろスコアは落ちた。とりあえず全てがぼろぼろに終わった。




