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悪役令嬢に転生した、はずですが?  作者: れもん。
3章
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87 小鳥の計算

すごくネタなので閑話にするべきか悩みましたが……本編の時間軸に沿ってるので。

 翌朝、シェリアは小鳥のさえずりで目を覚ました。……なんてあったらいいな、と思っていたが、実際にそうなるとなんだか感動してしまう。たったそれだけなのに、まるで物語のお姫様みたいだ。人に話せばもうすぐ十五歳になるのにと笑われてしまいそうだが、前世では乙女ゲームをやっていたほどなので、やはり空想家というかなんというか、そういう夢は前世からあったのだろう。思考の端でそんなことを考えながら、シェリアはベッドの端で待機する小鳥に手を伸ばした。



「おはよう、小鳥さん。起こしてくれてありがとう」



 おはよう、と挨拶を返すように小鳥はシェリアにすり寄った。そのしぐさが堪らなく可愛くて、思わず小鳥を抱き締める。



「そういえば、そろそろあなたのお名前を決めなきゃね」



 普段はなかなか起きれないのに、すっきり起きれたことにごきげんになってシェリアはそう呟いた。



「名前はフィーにも候補を聞くとして、小鳥さん」



 小鳥はきょとんと首を傾げる。シェリアは真剣な表情になって、ずっ、と小鳥に顔を近づけた。



「その、今日のフィーとのデートは、中止になっちゃったと思う?」



 真剣なまま、シェリアは瞳を潤ませた。小鳥は「えー、知らないよ」というように首を傾げたままだった。


 まあ、当然といえば当然だ。別にシェリアも、ここで突然小鳥が喋りだして何か意見を言ったりしてほしかったわけではない。ただ、ルティルミス家からあまり遠くないのになぜかシェリアが居候しているレヴィン家には、フィデルを除く唯一の友人と言っても過言ではないティアがいないので、相談相手がいないのだ。


 はぁ、とため息をついて落ち込んでしまったシェリアの周りを、心配そうに小鳥が歩き回る。大丈夫?大丈夫?と言いたげなしぐさは本当に愛らしくて、シェリアも少し癒された。



「ありがとう、小鳥さん。そうだよね。本人に直接聞いてみればわかる話だよね」



 シェリアは拳をぎゅっと握りしめて頷いた。そんなとき、タイミングよくノックが聞こえた。



「リア、起きてるか?出掛けるんだったらそろそろ支度しないと……」


「お、起きてるから大丈夫!」



 出掛けるんだったら、ということはつまりデートは決行ということだ。そんな嬉しさから思わず裏返ってしまった声で返事をすると、フィデルが驚いた顔をして入ってきた。そして、信じられないものを見たように大きく目を見開いて、瞬きを繰り返す。



「リアが、自力で起きてる?」


「私だって自分で起きるくらいできるもん!毎日フィーに起こしてもらってるわけじゃ……なくも……ないけど……」



 失礼な言葉に反論しようと記憶を辿るが、最近はフィデルに起こされた以外の記憶がない。ならルティルミス家では、とさらに記憶を辿るが、やはりフィデルにたまにティアが混ざるだけで、自力で起きた記憶はなかった。



「で、どうやって起きたんだ?」


「小鳥さんが起こしてくれたの」



 ほぼ毎日フィデルに起こしてもらっていることが発覚したシェリアは少し気まずくて、小さな声で答えた。すると、フィデルの視線はシェリアの肩の上で「どうだ!」と言わんばかりに胸を張る小鳥に移る。



「目覚めの上級魔法か?そんなに魔力は込めてないはずなんだが」


「え?この子、魔法が使えるの!?」



 シェリアが思わず肩の上へ顔を向けると、小鳥は甘えるように頬にすり寄る。



「ああ、こいつは俺の魔力の塊みたいなものだから、理論上は使える。あまり大きなものを使うとこの鳥ごと消えるから、小さなものだけだけどな」


「理論上は?」


「何回か作ったことはあるが、実際に魔法を使わせたことはないんだ。自分だけで事足りるから」



 そこまで言うと、フィデルは一度言葉を切った。そして、ため息をつく。



「上級魔法を使えるほどの魔力は込めてないんだけどな」


「?でもこの子は使ったんじゃないの?」



 シェリアが首を傾げている間に、フィデルは小鳥の頭を撫でた。撫でられた小鳥はというと、つんと顔をそらしているが、まんざらではない様子。シェリアの肩の上で羽を伸ばして安らいでいた。



「やっぱりな。こいつ、あと一時間くらいで消えるぞ」


「……え?嘘!」



 シェリアは慌てて小鳥を肩から下ろし、手のひらに乗せてぎゅっと抱き締める。そんな、シェリアを起こすために魔法を使ったせいで消えてしまうなんてあんまりだ。シェリアは思わず潤んだ瞳でフィデルを見上げた。



「フィー、なんとかしてこの子を助けられない?」


「いや、普通に俺が魔力を補充すれば回復するが」



 呆れ気味に放たれたフィデルの言葉に、シェリアはほっと笑顔をこぼす。シェリアの手からそっと抜け出した小鳥はフィデルの肩に止まって、「早く治せ」というようにフィデルの頬をつついた。



「痛、っていうかお前、リアがこう言って俺が魔力を注ぐところまで計算済みか」



 フィデルが小鳥に杖を向けながらボソボソと何か呟くが、声が小さくて聞こえない。小鳥も反応した様子はないので、たぶんひとりごとだったのだろう。


 しばらくしてフィデルが杖をしまうと、小鳥はすぐにシェリアの方に戻ってきた。



「もう大丈夫なの?」


「ああ、だけどリア。ちょっと一回つねらせろ」


「?」



 ふにっと頬を掴まれて、シェリアはぱちぱちと瞬いた。あれ、何かお説教されるようなことしたっけと考え込むが、思い出せない。



「リア、鳥に操られてどうする」


「とりってこのこ?ならべつにあやつられてなんか」



 そこまで言ったところで、「そうだそうだ!」というように小鳥がフィデルの指をつつく。その攻撃に、フィデルは痛そうに手を離して、再びため息をつく。小鳥は敵の撃退に成功して、満足そうにシェリアの手の上で羽を伸ばした。そんな二人───一人と一羽を見比べて、シェリアは首を傾げるのだった。

小鳥さんとシェリアの絡みも楽しいけれど、あざとい小鳥さんとそれに嫉妬するフィデルのやり取りも楽しいです。次回の投稿分ではやっと!やっと二人のデートが行われる……はず。

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