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悪役令嬢に転生した、はずですが?  作者: れもん。
3章
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84 すれ違う気遣いと

「リ~ア~?」


「ふぃー、えと、その」



 フィデルは怒気、というよりも呆れをはらんだ声でシェリアの名前を呼ぶ。それもただ呼ぶだけではなく、シェリアの左右両方の頬をふにっとつねるお仕置きつきだ。手加減はしてくれているらしく痛くはないのだが、なんというか、地味にくる。



「関わらない、の言葉の意味はわかるよな?」


「わ、わかるからはなして」



 シェリアは帰りの馬車に揺られながら、抗議の声をあげた。しかし、フィデル的にはまだお仕置きが足りないらしく、離してくれない。



「俺には本当にわかってるとは思えないんだが。リアの取った行動は『関わらない』だったか?」



 フィデルの質問に答えづらくなって、シェリアはそっと視線を外した。

「関わらない方がいい」という忠告に対して、シェリアが取った行動は「ヴァレンティーナと友達になる」だ。シェリア、ティーナ様と呼びあうほどの仲になったのだから、友情としては大進歩だが、フィデルの忠告の通りに行動したとはとても言えない。



「でっでも、ティーナさまはいいひとだったよ?」



 シェリアの話を楽しそうに聞いてくれたし、範囲の途中からで難しいはずの授業も真剣に受けていて、まさに非の打ち所がない人だ。こんな完璧な人を疑うくらいなら、誰も信じられなくなってしまう。けれどフィデルはそうは思わないらしく、シェリアの頬を解放して、ひとつため息をついた。



「俺も、それだけならただの優等生だと思う。だけど、リアに対する態度が怪しすぎるだろ」


「私?」



 シェリアはきょとんとして自分を指差した。



「あいつ、自己紹介のときにリアの方しか見てなかった。それにさっきだって、あれだけたくさんの生徒が囲ってたのに、わざわざ振り払ってリアの隣に来たんだぞ」


「それは、たくさんの人に囲まれるのが苦手だからって……」


「だとしても、ここよりもっと人の少ない席はあった」


「でも、私とティーナ様は初対面で……」


「だから怪しいんだ」



 そう言われても、いまいちぴんとこない。シェリアはクルティナの一伯爵令嬢で、社交界にすらまともに出ていないのに、隣国の貴族であるヴァレンティーナが自分のことを知っているとは思えないのだ。特に何か才能があるわけでも、ヴァレンティーナのように容姿が秀でているわけでもないのだからなおさら。



「リア、約束してくれ。あいつにこれ以上関わらないって」


「だけど、ティーナ様は悪いひとじゃないのに」


「まだ会って一日だぞ?そんなのわからないだろ」



 いつもと同じ、シェリアを心配して作った、呆れた声音。けれど、なぜか今日だけは少しムッとして、シェリアは言い返した。



「フィーだってティーナ様のこと、何も知らないでしょ」


「あいつのことは何も知らなくても、リアのことはずっと知ってるつもりだ」



 冷静に考えたら、フィデルの言っていることが正しいのはわかる。シェリアを想って言っているのも、守ろうとしてくれているのも。それでも、今回だけは何かがプチっと切れてしまったような気がして、気がついたら叫んでいた。



「私とティーナ様のことはフィーには関係ないでしょ。もうほっといて!」



 叫んだ瞬間、頭に上っていた血がすっと引いたような気がした。急に冷静さが戻ってきて、罪悪感が顔を出す。

 まずいことを言ってしまった、とは思う。悪いのが自分だということもわかる。けれど、今更取り消すことも出来なくて、シェリアはちょうど停車した馬車から飛び出した。



「あ、待て、リア!」



 我に返ったフィデルがシェリアの右手を掴もうとして、するりと抜ける。

 謝らなくては。そう思うのに、ちゃんと面と向かって謝罪できるほど心は冷静じゃなくて、とりあえず落ち着きたい、一人になりたい、とレヴィン邸の扉を開けて、急いで自分の部屋に滑り込んだ。そして、内側から鍵をかけると、そのまま扉にもたれて座り込む。


 ついさっきまで後ろからシェリアを追っていた、追ってくれていた足音はもう聞こえない。部屋にこもってしまったから追いかけるのを諦めたのか、それとも。


 ただ謝らなくてはと思うのに、それだけの勇気が出なくて、シェリアは抱えた膝に、ぎゅっと額を押し付けた。



「ティーナ様も、フィーも悪くない。悪いのは私なのに」



 フィデルの言う通りに、ヴァレンティーナと適度な距離を保っていればよかったのだ。シェリアにはフィデルのような観察眼もないし、フィデルが「怪しい」といった理由のどれにも気がつかなかった。けれど、何も知らないヴァレンティーナを疑いたくはなくって、でもそれだけでフィデルの心配を否定してしまって。結局何が正しいのかわからなくなって、シェリアははぁ、とため息をつく。


 もう何度目かわからない謝らなくては、という気持ちと共に、今朝あれだけ楽しみにしていたデートも、これでは中止だろうなと、的はずれなことを考えた。

たまにはシェリアにも感情を爆発させてほしくて、この話を書きました。誰が悪い、などは様々な見方があると思いますが、物語の進展だけを考えた話ではなく、シェリアやフィデルたちの人間らしい面も出していけたらなと思います。

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