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悪役令嬢に転生した、はずですが?  作者: れもん。
2章
76/142

68 思いがけない

「お、王城......」


「まあ、あれだけ色々あればな」



 緊張でプルプルと震える手をぎゅっと握りしめていると、隣に座るフィデルがため息混じりに言った。



「でも、王様は私のことなんて何も知らないはずじゃ」


「リアは王の情報団を甘く見すぎだ」



 王の情報団、というのは国王が大陸中の情報を入手するために存在するとまことしやかにささやかれている団体である。国王はもちろん情報団について公表していないため、あくまで噂止まりだが───貴族社会ではその存在は常識だ。



「情報団はどんな情報でも集めていると言われているし、リアはこの間クラウディス元伯爵令嬢の件に巻き込まれたばかりだ。注視されててもおかしくない」


「そういうもの?」



 なんだか監視されているみたいで少し気味が悪いが、国のためには必要なシステムなのだろう。それに、国王がシェリアに起こったことを知っているとすれば、召集をかけられる理由なんていくつでも思い付いた。とはいえ、やはり気は重い。



「フィー」


「大丈夫だ、たぶんケーキは食べられる」


「うう、からかってるでしょ」



 フィデルのふざけた答えにシェリアは涙目になる。こっちは本気で緊張しているのに。



「フィーのバカぁ」


「ごめんごめん」



 シェリアがポカポカとフィデルを叩くと、フィデルは苦笑しながらシェリアにハンカチを差し出す。そして真面目な表情になって言った。



「リア、行き先は王城なんだから当然第二王子もいる。もし会うことがあっても、最低限の礼だけとってすぐ逃げるぞ」


「うん」



 シェリアは涙を拭きながら頷いた。遠目に姿を見たことはあるが、会ったことも話したこともない王子相手に大袈裟じゃないかとは思うが、面倒事はないに越したことはない。それに王族との面倒事なんて、面倒どころじゃないことになるのは簡単に想像がつく。シェリアは第二王子に会わないこと、会ってもすぐに逃げることに全力を注ごうと決めるのだった。もちろんフラグだったが。





「ふぅん、これがメルディアが罰を受ける原因になった『ルティルミス伯爵令嬢』ね」


「あの......?」



 シェリアはどうしてこうなってしまったのかと思いながら、身を硬くした。いや、どうしても何も、王城に来たら運悪く出くわしてしまった。それだけなのだが。目の前には、新しい玩具を品定めするようにシェリアの髪をつまむ第二王子。隣で王族相手に殺気を放つフィデル。



「ランドルフ殿下、俺たちは陛下とお約束があるのですが」


「父上がお前らを?なんでまた。こいつに罪を着せてメルディアを社交界に戻す気になったわけでもあるまいに」



 はっきりとした侮蔑を含んだ視線を向けられて、シェリアはぴくりと体を震わせた。このまま言わせていてはいけないと思うのだが、相手は王族だ。どう対応していいのかわからない。



「聞こえているはずだが、無視か?伯爵令嬢ごときがいい度胸だな」


「ランドルフ殿下!」



 フィデルはシェリアをその背に隠すように引き寄せると、声を荒らげる。まさに一触即発。そう思われたとき。



「ランドルフ、客人の前で無礼な振る舞いをするな」



 冷水のような冷たい声音がシェリアの背後から響いた。



「リーエット兄上......っ!」



 ランドルフの悔しげな呟きにシェリアたちは思わず振り返る。ランドルフにとって兄といえば第一王子以外ありえないし、リーエット・クルティナをこの国で知らない者などいないだろう。



「私にはランドルフが客人に適切な対応をとっていたようには思えなかったが?」


「っ。申し訳ありません、兄上」


「謝罪する相手が違うだろう」



 頭を下げるランドルフをリーエットが冷ややかな目で見つめる。ランドルフは嫌悪感を示すようにグッと眉根を寄せると、シェリアと目も合わせないままに言った。



「すまなかった」



 その声に言葉通りの気持ちが籠っているとはとても思えなかったが、シェリアが許すとも許さないとも言えず戸惑っているうちに、ランドルフは走り去ってしまった。



「弟が失礼をした。謝ってたりるものではないが、代わりに謝罪させてくれ」


「そんな、リーエット殿下が謝られることではありません」



 リーエットが頭を下げ、フィデルが慌てる横でシェリアは考えこんでいた。さらりと肩を流れる銀髪。澄んだ瞳。ひんやりと冷たい声だって、記憶にある人物と酷似している。だけど、彼が第一王子なんてそんなはず───。



「リーエ兄様?」


「シェリア、こちらから呼び出したのにこんなことになってしまってすまなかった」



 そう言うとリーエットは穏やかに少し目を細めた。一方、確認がとれてしまったシェリアはだんだんパニックになる。



「ほ、本当にリーエ兄様なの?でもなんでお城に......リーエット様は、リーエ兄様で、リーエ兄様は第一王子のリーエット様で、え?ええ?」


「リア?どうしたんだ?」



 フィデルが不思議そうに問いかけるが、シェリアは混乱していてそれどころではない。似ているから、それだけの理由で聞いてみただけなのにまさか同一人物だとは。



「すまないが、説明すると長くなるし父上もお待ちだ。歩きながらでもいいか?」



 混乱しきったシェリアと何がなんだかわからないフィデルは、リーエットの言葉に迷いなく頷いたのだった。

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