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悪役令嬢に転生した、はずですが?  作者: れもん。
2章
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56 出会い

「な、んで?このままだったら、フィデルの代償は、消えないのに」



 なんで、と聞かれると答えられなかった。さっきまでは確かに、クリューと一緒にいこうと思っていたのに。だけど、どうしても。



「フィーを一人には、できないから」



 もうフィデルは覚えていないかもしれない。遠い昔、シェリアが初めてフィデルと出会ったときの言葉を、不意に思い出したのだ。










「シェリア、この屋敷のなかだったら探検したりしてもいいからね。いい子にしてるんだよ」



 そう言ってジェラードは幼いシェリアの頭を撫でた。これは、シェリアが七歳くらいの頃。初めてレヴィン邸を訪れた頃の記憶だ。



「おとーさま、いつも他のお屋敷に行ったときにはうろうろしちゃダメって言うのに、ここはいいの?」



 普段と言うことが正反対の父にシェリアはこてんと首を傾げた。すると、ジェラードは苦笑しながら腰を屈めて、シェリアに目線を合わせる。



「この家に来たときだけ、特別だよ。ここの主はお父様のお友だちだからね」



 父から初めて聞くお友だち、という言葉にシェリアは顔を輝かせて頷いた。お友だちという存在には憧れるが、社交界デビューもしていない貴族の令嬢にそんな相手がいるはずもなく。だから、自分にはいない『お友だち』がいる父を少し羨ましく思いながらも、シェリアはご機嫌に駆け出したのだった。


 見たこともない花が咲く庭に、高そうな楽器のあるホール。シェリアの家よりも少し長い階段と、初めての冒険にシェリアの胸は踊った。人の家の部屋を勝手に開けてはいけない、というマナーは知っていたので、探検するのは開いている部屋だけだったが、それでも楽しかった。


 しかし。ジェラードに自由に探検する許可をもらったので、楽しく歩き回っていたが、作りも知らない家なのだから当然こうなる。



「ここ、どこ?」



 ふわりと優しい香りを放つ花の咲く庭の中心で、シェリアは呟いた。外に出たり、柵を越えたりに夢中になって気がつくとよくわからない場所に来てしまっていて、父と別れた場所に戻ろうにも帰り方がわからない。困り果ててシェリアは花に囲まれた芝生の上に座り込む。探検した疲れが出たのか、ふわあ、と小さなあくびが漏れた。



「ちょっとだけ......」



 ころんと座り込んだ姿勢から、芝生に横になった。ここにいつものマナーの教師がいたら真っ先に怒られるだろうが、幸い咎める者は誰もいない。気持ちのいい太陽の光と、ふわふわ揺れる花の香りにシェリアは誘われるようにして眠りについた。




「......ろ、おい、起きろ」



 誰かに揺さぶられてシェリアはまぶたを持ち上げた。自分と同じくらいの歳の少年が、シェリアの顔を覗き込んでいる。



「お前誰だ?ここは俺の家だぞ。どうしてここにいる」



 口調はそっけないが、困っているような表情で少年はシェリアに問いかけた。シェリアは眠い目を擦りながら、起き上がる。



「私はシェリア。あなたこそ誰?」


「な、誰ってだから、俺はこの家の」


「お名前は?」



 シェリアが名乗らない少年に首を傾げながら聞くと、なぜか彼は赤くなりながら答えた。



「フィデル・レイ・レヴィン」


「ふぃれる?」



 シェリアが舌ったらずに聞き返すと、彼は首を横に振る。



「フィデル」


「ふぃ、ふぃれる」


「もうフィーでいい」



 頑張って発音しようとするが、どうしてもうまくいかない。するとフィデルは諦めたようなため息をつきながらそう言った。そんな彼の提案にシェリアは瞳を輝かせる。



「うん、フィー!」


「そ、それで、シェリアはなんでここにいるんだ?」



 シェリアは自分よりも落ち着いてしゃべるフィデルに、大人みたいだと思った。本当の大人から見れば全然そんなことはなく、子供らしいの範疇なのだが、シェリアから見ればそうだったのだ。



「おとーさまがお友だちと話してるから、探検してていいよって」


「シェリアのお父様の友達?ってことは父上か?」


「わかんないけど、アディって人だって言ってた」



 言いながらも、シェリアはムッとする。何が、というわけではないけれど、なにかが不満だ。突然起こされたことでも、迷子になったことでもない。何かが───。



「シェリア───言いにくいな、リアでいいか?」



 自分だって似たようなものでフィーと呼んでいるのだから、特に断る理由もない。シェリアはこくりと頷いた。ちなみにこのときのシェリアは、お互いが愛称で呼びあっているような状況になっているのに、まるで気がついていなかった。フィデルは気づいていたが。それでも、なんだかフィデルと仲良くなれた気がしてシェリアの不満が消える。そしてその代わりに笑みがこぼれた。



「リア、ここの花は魔力を少し吸うんだ。だから、とりあえず中に戻らないか?」


「まりょく?」



 聞いたことのない言葉に意味もわからないまま聞き返す。するとフィデルは、丁寧なような、適当なような、よくわからない説明をしてくれた。



「要はここにいると眠くなるってことだ」


「確かに眠い」



 ふわあ、とシェリアは再びあくびをする。そしてフィデルに連れられるまま、屋敷の中に戻った。

次回も回想が続きます。幼いシェリアとフィデルを書いてるのは、作者的にも楽しいです笑

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