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悪役令嬢に転生した、はずですが?  作者: れもん。
2章
56/142

48 面白いね

更新遅くなってすみません!

「いやー、フィデルが僕を呼ぶなんて思わなかったよ」



 クリューはシェリアとフィデルの向かいの長椅子に座り、紅茶を啜りながら言った。えへへと笑う表情も、大皿に盛られたクッキーに手を伸ばす姿も七、八歳の年相応なのに、言葉に大人のような落ち着きを感じるのはなぜだろう。色々と謎の多いこの少年に、シェリアは内心首を傾げた。けれどせっかくの師弟の再開に水を差すのも野暮なので、シェリアは二人の会話を黙って見守る。



「手紙に書いた通り、緊急事態なんだ」



 フィデルは不機嫌そうなまま、隣に座るシェリアの髪をいじりながら告げる。



「そうみたいだね」



 クリューは真剣な声音でそういうと、シェリアの手をとった。少年に手を掴まれているだけなのに、シェリアはわけもなく緊張してしまう。脈を測るようにしばらくその状態でいると、唐突にクリューが吹き出した。



「あはは、シェリア、面白いね!ねぇ、フィデルなんかに嫁ぐのはやめて、僕のところにお嫁に来ない?」


「え!?」



 なぜそういう結論に行き着いたのかはわからないが、まさかの師匠からの略奪婚のお誘いだった。

 シェリアは自分の半分くらいの年の子供の発言とは思えず、つい声をあげる。冷静に断るべきなのか、冗談として笑うべきなのか。シェリアがまごついていると、絶対零度の空気をまとったフィデルがクリュー......となぜかシェリアにまでお仕置きした。

 ただしシェリアには、いつもの水滴の魔法で。クリューには拳骨で。ちなみに先程の何倍も力が入っていて痛そうだった。



「クリュー、わかってると思うが、俺からリアを奪った日には、お前の命はないからな」



 フィデルは殺気を含んだ声で、痛そうに頭を押さえるクリューに言った。えへへと悪びれもせずに笑っているクリューは、やはり年には合わないほどの落ち着きがあって、強者だな、とぼんやり思う。するとシェリアにもフィデルはあきれたようなため息を投げ掛けた。



「リアも、素直に捉えすぎだ。俺と婚約してるのに動揺しすぎだろ」


「ごめん......」



 返す言葉もない。シェリアがしょんぼりとうなだれた。



「それで、今のリアのどこが面白かったんだ?」


「んー、ちょっと待ってね」



 クリューは冷気の滲むフィデルの質問にも答えずに、掴んだままだったシェリアの腕に両手をかざす。すると、まるでシェリア自身から出ているかのような光の粒がその手の隙間からこぼれた。



「これは......?」



 何か、と聞こうとした言葉は続かなかった。くらりと視界がゆれて、眠気が襲う。前にも一度、夜会の日に感じたことのある感覚。けれどそのときほど辛くはなくて、幼い頃遊び疲れて眠くなってしまったときのような。



「おい、クリュー」



 たまらずフィデルにもたれかかると、まぶたが落ちる。フィデルがクリューに何かを言う声と───自分の頭が何か柔らかいものに乗せられたことを感じて、シェリアの意識は途切れた。







「シェリアの魔力は美味しいね。美味しいけど、不思議な感じがする」


「いきなり食い過ぎだバカ」



 魔力を食べられて(・・・・・)眠ってしまったシェリアの頭を膝の上に移動させながらフィデルは言った。すやすやと気持ち良さそうな寝息をたてる彼女の頭を少し撫でる。



「えへへ。説明するのも面倒だったし、どうせ眠らせるなら一緒かなと思って」



 ちゃんと治癒魔法はかけながらやったから、辛くはなかったはずだよ、というクリューは杖なんか持っていない。だから、治癒魔法などかけれたはずもないのだ。普通なら。けれどフィデルはクリューが普通じゃないことを知っているので、ため息だけで終わらせた。



「で、リアを眠らせてまで何が言いたかったんだ?」



 あとで二人になったときに言えばいいのに、わざわざシェリアを眠らせるくらいなのだから、何か大事なことを言いたかったのだろう。そう思って聞くと、クリューは案の定、ふふんと胸を張った。



「僕、気づいちゃった。シェリアの秘密」

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