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悪役令嬢に転生した、はずですが?  作者: れもん。
1章
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37.5 はじまり

「リアー、まだかかりそうか?」


「も、もうちょっとだけ!」



 シェリアは扉に向かってそう叫んだ。フィデルを待たせてしまうのは申し訳ないが、今日くらいは許してほしい。なんといったって、彼との婚約を世間に知らせる、大事な日なのだから。


 最初、フィデルとの婚約が決まったときには夢かと思った。それに禁術を解くことだけが理由ならまだ理解できるが、「リアのことが好きだ」と言われたときには絶対に嘘だとも思った。それほどまでに、あり得るはずのない話だったからだ。『シナリオ』通りなら、シェリアは好意を向けられるどころか憎まれる対象なのに。そう思ったときに思い出したのは、やっぱりゲームのイベントで。しかも、シェリアが断罪される場面そのものだった。それが、今日の婚約の儀である。そのときに思ったのが「きっとこの婚約はシナリオ通り、断罪されるために結ばれたんだ」ということだった。素直に喜べばよかったのに、どうしてもそれができなかった。リアルすぎる確約された運命。それを変えようと動くのはとても難しくて、その通りに動くのはとても、とても簡単なことだから、シェリアはシナリオを信じることしか出来なかった。


 けれど、フィデルの言葉に救われた。何度拒絶しても、『この世界は現実だ』『リアは悪役じゃない』と言ってくれた、その言葉をシナリオよりも信じてみたいと思った。きっと、今の自分はあのゲームのヒロイン以上にわがままだ。それでもいいと思った。それでも、『登場人物』としてだけじゃなくて、フィデルの隣にいられたら───。



 まだ少しシナリオを信じてしまう気持ちはある。自分を誘拐していた男が言っていたことも怖い。だけど、もう引き返せないところまで来た。シナリオ通りに『自分の命』と『フィデルの隣』を天秤にかけるのではなく、『シェリア・リナ・ルティルミス』としての未来を、両方を掴むために。


 そう決意して、シェリアはゆっくりと息を吸い込んだ。そして扉を開ける。



「お待たせ、フィー」


「リア......」



 シェリアの姿を見て、フィデルは瞳をこぼれんばかりに見開いた。



「おかしい、かな?」


「いや、すごく似合ってる」



 シェリアが身に付けているのは、夜会の時と同じ桜色のドレスで一度は見ているはずなのに、そんなに驚くことだろうか。違うのは上着を羽織っていることと───。



「この髪飾り、つけてくれたんだな」


「一回蹴っちゃったけど」



 フィデルの言葉にシェリアはそう言って髪飾りを触る。白い花と星をあしらった、シェリアにはもったいないくらいのものだ。



「リア、まだ怖いか?」



 シェリアはフィデルの質問に思わず肩を揺らす。何が、とは言われなくてもわかる。これから断罪イベントの舞台に行くのだから。あのあとフィデルにはしっかり話したから、心配してくれているのだろう。



「怖いよ。怖いけど、フィーがいれば大丈夫な気がする」



 フィデルがいなければ断罪されることもないのに、フィデルがいれば大丈夫な気がする。おかしな気持ちだとは思うが、なぜか心地いい。



「リアはちゃんと、守るから」



 フィデルの言葉にこくんとシェリアはうなずいた。


 そして、婚約の儀(断罪イベント)が始まる────

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