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悪役令嬢に転生した、はずですが?  作者: れもん。
1章
43/142

37 私も

「ふ、フィー、どういうこと?なんで私───ちゃんと声が出て?」



 目を覚ますなりシェリアは飛び起きてそう叫んだ。混乱してはいるがいつも通りなシェリアに、フィデルはとりあえずほっとする。



「リア、よかった。無事で」



 フィデルは思わずそう漏らしてシェリアを抱きしめた。


 ここはレヴィン邸の客間の一室。シェリアがずっと泊まっていた部屋だ。あのあと、すっかり魔力を使い果たして動けなかったフィデルとシェリアは、フィデルが残してきた書き置きにより、ジェラードとアマディスに発見された。意識を失ったシェリアと、彼女を抱えたまま座り込むフィデルを見つけたときの二人の安堵の表情といったら忘れられない。そしてルティルミス伯爵とレヴィン公爵という国内でも三本の指に入るほど魔力の強い二人の転移魔法によって、レヴィン邸に帰ってきたわけだが───。



「フィー?」



 シェリアはどうしたのかと不思議そうな顔でフィデルを覗きこんだ。



「わ、私の禁術はもう解けたの?どうしてあのときキスなんか」



 聞きかけたのに恥ずかしかったのかシェリアは赤くなってうつむいてしまった。このままでは落ち着いて話も出来ないと思ったフィデルはシェリアを解放してやる。



「あそこまで完成しかけた術を壊すには、あれが一番よかったんだ」



 シェリアは首を傾げた。



「た、ただキスしただけじゃなかったの?」


「リアに直接魔法をかけるためにしたんだ」



 直接魔法をかけるという言葉の意味がわからないのかシェリアは更に首をひねった。それはそうだ。魔法を杖を介さずに直接かけることができるのは、自分自身だけ。それが常識なのに、フィデルの言っていることはその常識とは違う。



「今はわからなくてもいいから」



 フィデルは苦笑しながらそう言った。



「それより、リア。今日こそちゃんと聞かせてもらうぞ」



 何を、という主語がなくてもシェリアにはちゃんと伝わったらしい。背筋が伸びて、視線を逸らされた。



「だめ。フィーには、教えられない」



 シェリアは、震えた声で拒絶する。まるでフィデルに伝えることで、世界が終わってしまうかのように、怯えた表情で。



「リア、それじゃ俺はリアを助けられないだろ」


「助けなくていいの。フィーが助けるのは、私じゃない」



 怯えているのに、どこか諦めた表情でシェリアはそう告げた。けれど、フィデルは納得できない。助けなくていい?助けるのは、シェリアじゃない?なら、誰を。シェリアに聞いたら、きっとヒロインだと言うのだろう。でも。だけど。



「俺はリアがなんと言おうと、ヒロイン(メルディア)じゃなくて、リアを助ける」



 どうして、と声こそ出ていなかったが、シェリアの口がそう動いた。あり得ないとでも言うように。だが、フィデルからすればシェリアとメルディアを天秤にかけ、メルディアを選ぶ。そんな自分の方があり得ない。



「なんで、だって、私は、悪役」


「ここはリアの知ってるゲームの世界かもしれないけど、今リアがいるのは現実だろ?リアは悪役なんかじゃない。『シェリア・リナ・ルティルミス』だ」



 フィデルが言うと、シェリアは小さなこどものようにぶるぶると首を横に振った。



「違っ、私は悪役令嬢じゃないと、フィーの隣には、いられない」



 シェリアが必死に紡いだ言葉にフィデルは拍子抜けしたような気がした。シェリアが頑なに『悪役令嬢』を続ける理由は、そんなに簡単なことだったのかと。なら、彼女は『禁術の封印』なんて理由がなくても、受け入れてくれるだろうか。



「期間限定の隣より、ずっと一緒にいられる方がいいと思わないか?」



 フィデルの言葉に驚いたようにシェリアは目を見開いた。幼い頃から泣き虫な彼女の瞳には、薄い膜が張っている。



「リア。あんな理由なんてなくても、俺と婚約して、結婚してくれるか?」



 フィデルの問いにシェリアの瞳から一滴、雫が流れ落ちた。本当にいいのかと問いかけるようにその目が揺れている。



「フィー、例えば。例えばだけど、どんな力が働いたとしても───天と地がひっくり返ったとしても、フィーは」



 続きを紡いだ声はかすれていたが、『私の味方でいてくれる?』と言ったように見えた。なぜそんな馬鹿なことを聞くのか、と思った。けれど、それだけ彼女の中で『シナリオ』が絶対的で、怖いのだろう。それでも。なにが琴線に触れたのかはわからないが、それでもシェリアが誰が作ったのかもわからない『シナリオ』よりも、なんの強制力もないフィデルの『言葉』を信じてくれると言うのなら。



「当たり前だろ。世界中が敵になっても、俺はリアの味方だ」


「そっか。じゃあ、私も」



 ん?とフィデルは聞き返した。何が私も、なのだろう。フィデルの味方でいてくれるということだろうか。



「私も、その、フィーと結婚、したい」



 シェリアは顔を赤くしてうつむく。この話は二度目のはずだし、まだ婚約の儀を終えていないから正式に『婚約者』と呼べないだけで、事実上は数日前からそういう関係だったはずだ。なのに、シェリアの顔が前回よりも赤く見えたのは。そして、フィデルまで赤くなってしまうのは、きっと気のせいじゃない。

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