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悪役令嬢に転生した、はずですが?  作者: れもん。
1章
33/142

28 異変

「......ア、リア!あれだけ俺から離れるなって言ったのに」



 突然聞こえてきたフィデルの声にはっとシェリアは現実に引き戻された。顔をあげるとフィデルが自分の肩をつかんで揺さぶっていた。



「フィー?」



 少しぼうっとしたままシェリアはフィデルの名前を呼ぶ。いつの間に、とか聞きたいことはたくさんあるのに、くらくらして言葉が上手く出てこない。そんなシェリアの異変に気づいたらしいフィデルは、数日前に中級魔法の練習をしたときのようにシェリアの額に自分の額を重ねた。



「リア、ずいぶん魔力が減ってる......いや、違うな。荒れてるのか、これは?」



 フィデルは難しい顔で呟く。



「今の短い間に何かあったのか?見てた限りでは、おかしなところはなかったけど」



 体調は?と聞かれて、口を開くのも億劫だったシェリアはフィデルにもたれかかった。自分からフィデルに甘えることはめったにないシェリアのその行為にフィデルは一瞬目を見開く。しかし、それを答えと見なしたらしいフィデルは、シェリアの手をつかんで歩き出した。



「もうちょっとだけ我慢してろ。会場(ここ)を抜けるくらいまで」



 シェリアは揺れる視界に耐えながら頷いて、フィデルに引っ張られるままに歩いた。だんだん出口の扉が近づいてくる。そしてフィデルが傍目には優雅に、しかし普段の彼を知っている人から見れば少し乱暴に扉を開けて外に出た。会場の外の廊下の冷たい空気を浴びた瞬間、シェリアはへたりと座り込む。



「魔力の使いすぎだ。もう少し減っていたら命に関わるくらいだぞ。この間の中級魔法でも大して減ってなかったのに何をしたんだ?大魔法でも使ったのか?」



 フィデルが座り込んでしまったシェリアを抱き上げながら言った。霞む視界に映るその顔は、なぜか泣きそうに見える。けれど、シェリアは首を横に振ることしかできなかった。本当は、彼女の声のことを伝えたかったけれど、上手く声が出せない。代わりに、小さく口を動かす。



「フィー、ごめん」


「夜会のことか?そんなことより、リアの方が大事に決まってるだろ」



 違う、『そんなこと』ではないのに。大事なフィデルの誕生日なのに。悪役令嬢な自分は、それ以上の価値がある存在でもないのに。


 そう伝えようとしていると、フィデルと彼に抱き上げられている自分の周りが白く光り出す。「フィーは転移魔法も使えたんだ」なんてぼうっと思っているうちにフィデルは詠唱を終え、次の瞬間にはある部屋の前に立っていた。



「なにも片付いてないけど、ベッドくらいはあるから」



 その言葉で、シェリアはこの部屋がフィデルのものであることを知った。考えてみればレヴィン邸に来たことは幾度となくあるが、フィデルの部屋に来たことはない。シェリアは上手く回らない思考で、そんなことを考えた。


 フィデルの部屋はかなり広く、メイドたちがいつも掃除しているのか、本人が言うほどは散らかっていない。机や本棚が置いてあるその部屋を通り抜け、フィデルは部屋の奥にあった扉を開けた。そこにあったのは寝室で、大きなベッドが置いてある。フィデルは抱き上げているシェリアをそのベッドにそっと降ろした。そして上からシェリアに布団をかける。



「今は使用人たちもみんな夜会の方に行ってるからドレスのままで寝にくいと思うけど、とりあえず寝てろ。寝てたら少しは魔力も回復すると思うから」


「フィーは、夜会に」



 シェリアはなんとか口を動かしてそう伝える。気を抜けば意識を失ってしまいそうだったが、これだけは伝えておきたかった。せっかくの夜会をシェリアなんかがメチャクチャにしてはいけない。せめて、主役であるフィデルには戻ってもらわないと。しかしフィデルは険しい顔で怒鳴った。



「いいから寝ろ!どう考えても会場を出たときより悪化してるだろ、このまま起きてたら死ぬぞ!」


「だけ、ど」



 シェリアがまだ言おうとすると、フィデルは無言でシェリアに杖を向ける。何が始まるのだろう。またいつもの水滴の魔法で怒られるのだろうか。しかし、フィデルの使った魔法は違った。



「かの者に安らぎを与えろ」



 フィデルは早口でそう唱えた。シェリアの聞いたことのない呪文だが、呪文を唱えたということは上級以上の魔法だろう。けれど、何も起こらない。シェリアは失敗したのかと思ったが、フィデルに焦る様子もない。結局なんの魔法だったのかと思ったとき、突然抗えないほどの眠気が襲ってきた。それでシェリアは、フィデルが使ったのは眠りの魔法だったのだと気づく。



「おやすみ、リア」



 消え行く意識の中でフィー、と呟いたつもりだが、もう声も出なかった。



「大丈夫だ、そばにいるから」



 そうじゃなくて夜会に戻ってほしいのに、フィデルのその言葉に安心してしまう自分もいて、混乱しているうちにシェリアは意識を保てなくなって目を閉じた。



「大丈夫」



 シェリアの手を握ってそう言う、フィデルの声を聞きながら。

-補足-

魔法は基本杖が必要ですが、自分にかけるものは杖がなくても使えます。今回の転移魔法もフィデルが自分自身にかけたものなので、杖なしで使っています。わかりにくくてごめんなさい!

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