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悪役令嬢に転生した、はずですが?  作者: れもん。
1章
28/142

23 ゲームの知識!

 フィデルのひきつった笑みでシェリアは悟った。



(私、なにかやらかしたっぽい)



 そうは言ってもシェリアはフィデルの魔法を再現しただけだと思うのだ。多少速さに違いはあったが、個人差の範囲ということで。



「うん、確かに前世に魔法はなかったけど」


「にしては、魔法の習得が速すぎないか?」



 呆れたように言いながら、フィデルはシェリアの額に自分の額を重ねた。まるで熱を測っているようなしぐさだが、突然どうしたのだろうか。



「ち、ちょっとフィー?」



 シェリアは裏返らないように気を付けながら声をあげる。しかし異常にドキドキしているのはシェリアだけなのか、フィデルは冷静な様子で呟いた。



「魔力もそんなに減ってないし、ほんとにどうやったんだ?」



 どうやらこの動作はシェリアの魔力を測るためにやっていたらしい。心臓に悪すぎる。フィデルの顔が離れると、シェリアは密かに息をついた。



「どうってどういうこと?」


「まず魔法っていうのは、一度見たくらいで再現できるものじゃない。それにさっきの中級魔法はもっと魔力を使うはずなんだ。それこそ、リアが三、四発打ったら立ち上がれなくなるくらいに」



 そんな魔法を何食わぬ顔で教えていたのか、と思わなくもないが、シェリアから教えてくれと頼んだのだから突っ込むまい。突っ込んだら負けな気がする。



「なのにリアの魔力は大して減ってない」


「それは、私の魔力が多いってこと?」



 どちらかと言うとシェリアの魔力は少ない方だと思っていたが、違ったのだろうか。しかし、フィデルは首を横に振る。



「リアの魔力は確かに少ない方だ。俺の魔力を一万とすると、リアの魔力は千くらい。ちなみに大人の貴族の平均魔力量は、この基準で考えると三千くらいだな」



 そう説明されるとシェリアの魔力が平均よりも少ないこと、そしてフィデルが規格外なことがよくわかる。



「それで今教えた魔法の消費魔力が......今の説明でいくなら三百ぐらいかな。だけど、リアの魔力はその十分の一、三十くらいしか減ってないんだ。それに少しの差だが、正直俺の魔法よりも攻撃力が高かった」



 やっぱり、さっき自分のファイヤボール(面倒なのでそう呼ぶことにした)の方が速く見えたのは気のせいではないらしい。それはフィデルの反応からすると、かなり異常なことなんじゃないだろうか。シェリアは首をかしげた。



「なんでそうなるの?」


「こっちが聞きたい。魔法はイメージに左右される部分も大きいから、リアの前世が熟練の魔術師だった、とかならわからなくもないんだが」



 シェリアの前世はごくごく普通の日本人だったはずだ。つまり、そんなことは全くもってありえない。シェリアはふるふると首を横に振った。



「だよな。うーん、リアは魔法といえば何をイメージする?」



 難しい顔でフィデルに問われて、シェリアはついさっき想像したことを思い返した。



「ゲームかな」


「げーむ?ってあれか?あの歌劇みたいな」



 恐らくフィデルが想像しているのは、前世の記憶が戻ったときに説明した『乙女ゲーム』のことだろう。けれど、シェリアが魔法ときいてイメージしたのはそのゲームではない。



「そういうのじゃなくて、自分でキャラクターを操作してモンスターを倒すの」



 シェリアはなんとか頑張って説明するが、『電気』や『テレビ』のような前世の予備知識のないフィデルにはあまり伝わらなかったようで不思議そうな表情をしていた。



「リアの前世については相変わらずよくわからないが......とりあえず、そのゲームの魔法はすぐに思い描けるんだな?」



 シェリアはこくりと頷く。テレビもなにもないこの世界では馴染みのない『ゲーム』だが、シェリアの前世では毎日プレイするほどに身近なものだった。イメージするくらい朝飯前だ。



「リアの魔力消費が異常に少なかったのは、その前世の記憶でイメージがしっかり固定してたからだと思う。だけど、試験の時の中級魔法は多くても四発にしとけ」



 難しい顔でそう言うフィデルにシェリアは驚いた。もっと練習しろと言われこそすれ、止められるとは思わなかったからだ。



「相手の魔力が自分より多いか少ないかはだいたいの雰囲気でわかる。リアの魔力ならそう多くは打てないはずなのに、何発も打てることが知られたら厄介だ」



 よくわからないが、フィデルがそう言うならそうなのだろう。せっかくたくさんの魔法が使えることがわかったのに、禁止されてしまうのは少し残念な気もしたが、厄介事はごめんである。それでも、やっぱり物語に出てくるような魔法は気になるもので。



「もしかして、もしかしてだけど私も大魔法とか使えたりするのかな」


「使うなよ、死ぬぞ」



 そわそわとしながら聞くと、しっかり釘を刺されてしまった。

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