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悪役令嬢に転生した、はずですが?  作者: れもん。
1章
26/142

21 宣戦布告?

 禁術騒動が落ち着いて一週間が経った頃。ようやくシェリアは回復し、心配性な父ジェラードからも外出許可が出た。つまり、学院への登校再開である。



「いってきます」



 シェリアが告げると、珍しく見送りに来ていたジェラードは眉間のシワを深くした。



「一人でいくのか?」


「えっと、フィーはいないけど、馬車で行くんだし一人ってわけでは……ひうっ!?」



 さーっと視線を父からそらしながら言っていたシェリアだが、後ろから誰かに抱き締められて奇声を発してしまった。



「誰がいないって?」



 その声は馴染みのあるもので安心するが、声の主から発せられている怒気が怖い。ギギギ、と錆び付いた音がしそうなくらい固い動作でシェリアは振り向いた。



「フ、フィー。なんで」


「なんでって今から学院に行くんだろ?いつも通りじゃないか」



 そうは言っても、悪役令嬢禁止事件からしつこいほど来ていたフィデルはパタリと来なくなり、今日会うのだって一週間ぶりだった。何よりこの姿勢のままだと、見送っているジェラードの視線が痛い。明らかにあちらからも怒気が出ている。



「フィー、離して」


「この姿勢は嫌か?」



 フィデルはシェリアを抱き締めたまま耳元で囁いた。フィデルにとっては遊びのつもりなのかもしれないが、いつもよりもスキンシップが多すぎる。おまけにティアの変な憶測まで思い出してしまって、シェリアは鼓動が速くなりすぎておかしくなりそうだった。



「嫌っていうか……」



 父から怒気を通り越して殺気が出ているからだが、そんなことはフィデルもわかっているはずだ。


 ついに自分の鼓動の速さについていけなくなったシェリアが目を回していると、フィデルはそのままの姿勢で言った。



「伯爵、リアはちゃんと学院に届けるので」



 ジェラードは何も言わないが、視線の温度が氷点下まで下がった気がした。しかし、フィデルは気にした風でもなく、シェリアを馬車にエスコートした。


 一週間前にも同じことをしていたはずなのになぜかいつもより恥ずかしい。



(いつもこんな感じだったっけ!?)



 心の中で叫びながらシェリアが乗り、後に続いてフィデルが乗ると、馬車の扉が閉じた。シェリアはようやく父の鋭い視線から逃れられて息をついた。



「フィー、なんであんなこと」


「宣戦布告。必要だろ?」



 フィデルは飄々と言ってのける。誰に宣戦布告なのかと思うが、あの様子なら恐らくジェラードにだろう。でもなんのための戦いなのかわからない。そもそもその宣戦布告は必要なのだろうか。


 しかし、最後に会ったときは気まずい別れ方をしてしまったがフィデルの怒りが続いていないようでシェリアは密かに安堵した。フィデルの態度が変わってしまったとかでもない。いや、謎にスキンシップが多くなった気はするが、怒りによるものではなさそうなのでいいだろう。



「ええっと、そのフィーはちゃんと学院に行ってるの?」



 沈黙が嫌だったシェリアはフィデルにそんな質問をしてみた。禁術をかけられた本人であるシェリアは暫くまともに歩くことができなかったが、フィデルはシェリアの意識が戻った翌日からルティルミス家に来ていた。ということは、体に大きな影響はなかったのだと思う。たぶん。



「まあな。そういえば、学院が始まってから二週間以上経つのにリアは五日くらいしか行けてないな」



 うぐ、とシェリアは言葉に詰まった。


 あれだけ憧れていた学院だが、風邪やらなんやらでフィデルの言葉通り五日しか通えていない。しかも禁術に関しては調査中の為公にできないとあって、結局ここ一週間の欠席も風邪のため、ということになった。虚弱すぎる、自分。


 そのままフィデルにからかわれ続けること十五分。やっと学院に着き、馬車を降りようとすると初日と同じような光景────つまり、大量の野次馬がいた。



「フィー、やっぱり帰りたい」



 差し出された手を取って馬車から降りる合間に小声でそう呟いた。しかしその計画とも呼べない計画はフィデルに一笑された。



「嫌なら俺の後ろに隠れとけばいいだろ」



 フィデルの言葉通りシェリアは後ろに隠れ、早足で野次馬たちの間を通りすぎた。好奇の視線。上がる黄色い悲鳴。何もかもがデジャブを感じるほど初日通り。ただひとつ違うのは、あのときさんざん絡んできたメルディアがいない、ということくらい。



「そういえばメルディアさんは」


「あいつは謹慎中らしい」



 前を歩くフィデルが苦々しげに答えた。謹慎中、ということは何かやらかしてしまったのだろうか。事情を知らないシェリアは、まさかその事情が自分に関するものだと思うはずもなく、なぜだろうと首をかしげていた。

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