10 恋かもしれない。
フィデル視点です。しばらく続きます!
「フィー、恋ってどんなの?」
シェリアに突然問いかけられて、フィデルはむせた。最近よくむせるな、とは自分でも思うが、全てシェリアが原因なのだから仕方がない。
「どうしたんだよ、突然」
「ちょっと、ね」
その含みのある言い方に、フィデルはまさか、と思う。まさか、シェリアが恋をしてしまったのではと。
しかし、それはないと考えを振り払うように頭を横に振った。振ったのだが。
「何だかその人の近くにいるとふわふわして、もっとそばにいたいって思って、離れるとすごく寂しいの」
そんな気持ちかと首を傾げるシェリアにフィデルは戦慄する。もしかすると、本当にそうかもしれない。
「ちなみに、誰といるとそうなるんだよ?」
「二人いるんだけど」
あっさり教えてくれそうなこともそうだが、それよりも二人もいることは問題じゃないだろうかと突っ込みたくなってしまった。
「一人目はマクレーン公爵家の」
好きかもしれないといったわりには名前が思い出せないのか、シェリアは考え込んでいるがフィデルには伝わった。と同時に簡単に遠ざけられそうな相手ではないことに、内心舌打ちする。
「リアとそんなに接点あったか?」
つい嫉妬から声が低くなったことにフィデルは焦るが、幸いシェリアは気づかなかったのか、んー?と首をひねった。
「この間ペンを拾ってもらったから?」
なぜか言葉の最後に疑問符をつけるシェリアにフィデルは脱力した。そんな子供のような理由の一目惚れに負けるなんて、もう嫉妬を通り越して悲しくなってくる。
「ちなみに二人目は」
頼むからこれ以上厄介な人物の名前は出さないでくれ、と祈りつつ聞くと、シェリアは小声で呟いた。
「……フィー」
まさかの名前にフィデルは目を丸くして、手を口に当てた。シェリアに赤くなった顔を見られるのが恥ずかしくて、あわてて顔を背ける。けれどシェリアは間接的に告白するような形になったのに気がついていないのか、不思議そうに首を傾げるだけだった。
「ねぇ、これって恋だと思う?」
冷静に考えれば、好きかもしれない本人に恋愛相談をしているというなんとも謎の深い画だが、シェリアとしては二人のうちの一人だからか、それとも幼馴染みとしての意識が強すぎてそこまで考えが回っていないのかじっと答えを待っていた。
「えーっと」
フィデルとしては、自分への想いは恋であってほしいが、もう一人の方は気のせいであってほしい。しかし、シェリアにそんなことが直接言えるわけもなく、視線をさまよわせた時だった。
「ああ、フィデルにシェリアさん」
噂をすれば。そうとしか言えない絶妙なタイミングで登場したのは、マクレーン公爵家の次男、グレンだった。
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