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悪役令嬢に転生した、はずですが?  作者: れもん。
1章
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9 決闘と悪役令嬢

シェリアに戻ってきます。

 数日前のメルディアの『決闘』という言葉を思い出して、シェリアはため息をついた。意味がわからないからではない。心当たりがあるからだ。



「決闘といえば、あのイベントだよね……」



 シェリアのなにか知っているかのような呟きに、向かいの席で昼食を食べていたフィデルは顔をあげた。



「今度はどんなイベントなんだ?」



 その表情は心なしか疲れて見える。しかし、それもそのはず。あのあともメルディアは懲りることなく、フィデルに絡んでくるのだ。疲れない方がおかしい。


 そして、あのどれだけ塩対応をしても折れない謎の強さの理由は、『乙女ゲーム』のシナリオとやらを盲信しているからだという。途中にどんなことがあっても、自分はフィデルと結ばれて幸せになれると。


 そんな事実を知ってしまえば、ゲームに関する言葉に拒否反応を抱くのも当然である。



「えっと、フィデルに恋人ができそうなことに焦ったシェリアが、親同士のコネで半ば強引にフィデルとの縁談を進めるの。その状況に何かしなきゃ、と思ったヒロインが変に決闘の話を聞いて、この間の状況に……フィー?!」



 そこまで言って、シェリアはフィデルがむせているのに気づいた。大丈夫かと背中をさすると、片手を上げて答えられる。



「いや、ちょっとゲーム内のリアが積極的すぎて」


「そう?」



 確かに現実で考えればかなり積極的だが、悪役令嬢という役ではよくある話だろうとシェリアは首を傾げた。



「だけど、このイベントが起こるのはあと二年くらい先のはずなんだけど」



 今までのメルディアの行動から考えて、彼女にも前世のゲームの記憶があるのは間違いないだろう。そうでなければ、突然お茶だの決闘だのとはさすがに言い出さないはずである。



「なら、何で今ってことだよな?」



 シェリアはこくりと頷いた。


 予定より早くフィデルとシェリアが婚約してしまって焦った、などならわかるが、シェリアたちは婚約どころか付き合ってすらいない今の状況であのイベントを進めるのは少々無理がある。となれば、考えられる理由はひとつ。



「フィー、もしかして」



 シェリアの言葉に、なぜかフィデルが息を飲む。



「好きな人ができたんでしょ?」



 言い切ると、フィデルが再びむせた。シェリアはこれが答えだと確信して、やっぱり、と呟く。



「だからこの間もハーレムがどうとかって。それに、きっとメルディアさんも、私以外に新たなライバルが現れたのを感じて」



 (シェリアの中だけで)全てが繋がった。どうだといわんばかりのシェリアのどや顔に「違う!」とフィデルは叫ぶが、シェリアは聞いていない。



「フィー、安心して。相手がどれだけそういうのに憧れがあったとしても、フィーはイケメンだから大丈夫」



 シェリアはフィデルの好きな人とはどんな人だろう、と考えてみるが、フィデルの交友関係がわからないので、なんとも言えない。が、ふと不安になって尋ねた。



「もしかして、相手ってメルディアさん……?」


「だから、違うって」



 フィデルの否定にシェリアは胸を撫で下ろした。そして、彼の隣に立つ人への想像を膨らませてみる。





 そこにいるのが自分ではないということに少し切なくなってしまうのは、きっと幼馴染みとして寂しいだけだと自分に言い聞かせるのだった。

もどかしいくらい鈍感なシェリアですが、へたれなフィデルとあわせて暖かく見守ってあげてください笑

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