ヒロインの憂鬱
視点が変わります。本文の内容には大きく関係してきますが、シェリアが関わっていない部分なので番号はつけないでおこうと思います。
「まさか、決闘を断るなんて」
閑散とした廊下にメルディアの独り言が響く。
シェリアが決闘を断った。その事実はメルディアの計画に大きな影響を与えた。常識的に考えれば、あんなわけのわからない理由で申し込まれた決闘を断るのなんて当たり前だが、メルディアにはシェリアが了承するという確信があったのだ。
「『シェリア』の性格からすれば、この決闘は喜んで引き受けてもらえると思いましたのに。いえ、それを抜きにしても、あのイベントを再現したはずでしたのに!」
ぎり、とメルディアは歯ぎしりした。メルディアの確信の理由。それは前世の乙女ゲームの知識である。
『君との恋を。』のフィデルルートでは、悪役令嬢のシェリアにフィデルを奪われそうになったヒロインが決闘を申し込むイベントがある。
そういうイベントは、悪役令嬢からヒロインに嫌がらせの一貫として行われる、というのが普通だが、さすがはご都合主義ゲームというべきか。君恋では、ヒロインの攻略対象に対する愛を示すイベントとして組み込まれていたのである。
「他に、シェリアをなんとかする方法は……」
メルディアは考え込んだ。フィデルルートにしろ、逆ハールートにしろ、彼女をフィデルから引き離さなければならない。
「お困りですか?」
背後からかけられた声にメルディアは驚いて振り返った。彼女はまだ気づかない。現実とゲームのシナリオが、少しずつ、ずれていることに。




