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妄想の帝国 健康管理社会

妄想の帝国 その11 健康管理社会 忖度しすぎで健康悪化?サンサンミュージックの場合

作者: 天城冴

来年度もCM、テレビ出演のため、政府、権力への忖度発言をカウントするサンサンミュージックの芸人ズルヤマとマネージャー。何日も徹夜続きで健康を害しつつ、それでもパソコン画面をにらみながらなんとか政府より発言を探す二人を秘かに観察するオバサン。その正体とは…

増大する一方の医療費削減のため政府はある決定を行った。

“健康絶対促進法”の設立である。健康維持のため、あらゆる不健康な行動、食生活や生活習慣などを禁止するという法案である。個人の権利を侵害するとして反対もあったが

“政府に健康にしてもらえるんだからいいじゃん”

“自分の不摂生で病気になるやつのために医療費を払いたくない”

などの法案賛成の意見が多数あり、法案は可決された。

そして、不健康行動を取り締まる“健康警察”が設置された。

健康警察の活動は次第に拡大し、不健康を生じる組織、企業までが、取り締まりの対象となり、それに伴い違反者の裁判、収容、更生を担う健康検察や健康管理収容所などの組織が作られていった。やがて国民の理解や支持を得てゆき健康絶対促進法関連の組織は次第に権限を増していくことになった。



三月も半ばに近づきニホンの学校、会社、官公庁、あらゆる組織が新年度に向けてバタバタしだしだしたころ、ここサンサンミュージックでもとある年度末調査が行われていた。

「えーと、これもカウントされる?」

と尋ねるズルヤマにマネージャーは液晶画面を見ながら答えた。

「多分、大丈夫だとおもいますけど。あまり露骨だと炎上どころか訴えられますからね。リベラル派に法的措置や署名活動をやられると逆効果ですよ」

「ええ!政府の言う通りっていってるだけだよ、国防とかもどんどんやれとか、水道なんて外国の会社に任せてオッケーとか」

はあ、とこっそりため息をつくマネージャー。

(所詮勢いとちょっとばかり顔がいいだけで売れた芸人だしな、ズルヤマは。こんな奴につけられた俺もついてないよ)

「あまり過激なのは政府のほうでクレームが付きますよ。最近はファクトチェックが盛んですから」

(って、こいつやヤブコやらジジハラの発言って思い込みやら怪しげなサイトからの無断引用が多いから、いっそ何も言わせないほうがいいんだけど)

「だけどさ、オレも言いたいことあるし。それに何か言わないとさ、その、出してもらえないじゃん、番組とかCMに」

と不安そうにいうズルヤマ。その言葉に不承不承にうなずくマネージャー。

(そうなんだよな、知識もないし、目立つ芸もないズルヤマのような奴らが生き残るには権力に媚びるしかないんだよなあ)

「だからさ“政府はすごいです”とか“ニホンスゴイ”って言った数をさ、カウントしてるんだろ。そいうことしないとさ、使ってもらえないし、稼げないんだよね」

「まあ、ジジハラさんのように体当たり旅行とか、デデ夫人のように元ハイソな生活を語るとかできませんし」

「ラクゴ家のダンダンさんだっけ、あの人みたいに二代目じゃないしさ」

「親が芸能関係の人は強いですよね。高級官僚の息子さんとかも彼らのほうが忖度されてますし」

「オレ、そういうのないからさ。なんとかイッショウケンメイ考えてるんだよ。でも本とか長いのは読めないし、なかなか思いつかないから、ネットでいろいろみて言ってるんだけど駄目かなあ」

とモジモジしながらいうズルヤマ。そこそこの身長と体格を持ち二児の父であるのに、その様子はまるでイタズラがバレたときの幼稚園児のようだ。

(ああ、まったく。そういう“助けてセンセーオーラ”をだすからバカでも見捨てられないんじゃないか、くそ)

「わかりましたよ、じゃ、これとこのツィートもってことで、社長にいってみましょう」

「やった。ビビさんとかスゴイ炎上したからさ、この間、アレぐらいやらないと駄目かもって。ちょっと胃が痛くなって」

「あの人は権力にすり寄らないと本国に返されちゃうかもってもって心配してるんでしょう。芸も知識もロクにないですから、出演させる理由って言ったらスポンサーやら政府ウケぐらいしかありませんよ。ただ逆に名誉棄損で訴えられ、海外からも叩かれそうなんで、本当はかなり不味いかもしれませんけど」

「でもウチの社長はいいっていったんだよね」

「まあ、そうですけど」

(そのおかげでわが社自体が危うくなるかもしれないんだけどな。だいだい、この忖度カウント調査もバレたら相当バッシングうけそうだし。俺も具合が悪くなりそうだわ)

と、マネージャーは思わず腹の部分に手をあてた。そこへ

「あー、すみませーん、掃除よろしいですかああ」

清掃員の女性が入ってきた。

「ああ、ごめん、ちょっとまだ」

とズルヤマがマネージャーの代わりに答える。

「え、ズルヤマさんもいたんですか、朝から大変ですね」

「いや、オレたち、ずっといたけど。え、もう日付変わってんの?」

「もうずっと前ですよ、私、始発で朝日見ながら来たんで」

とのほほんと答える清掃員の女性。

「し、しまった、子供の卒業式の準備がー」

「わ、私も、でもコレ社長に提出しないとー」

ズルヤマとマネージャーは慌て気味だが帰る気配はない。

「あーお二人とも帰らないんですかー」

「いやオレ、次の番組の打ち合わせが。また替えの服をもってきてもらわないと」

「いや私も社の会議がー。とりあえず保存してー」

と急いで支度する二人。清掃員の女性は

「それじゃ、もう少ししてからまた掃除にきますねー」

と言って部屋をでた。



「いやー、あれじゃ、頭もオカシクなるわ。だいたい昨日も一昨日もほとんどおんなじこと言ってるんだから、ズルヤマとマネージャー。あの二人だけじゃなくてサンサンミュージックは全員そんな感じ」

と、お茶請けのクッキーにぱくつきながらしゃべっている女性は清掃員の女性こと、健康警察特別潜入捜査班のムカイ・トメコである。トメコの向かいでポットから紅茶を注いでいるのは健康検察特別検事ヨウジョウ・ダイジである。

「芸能界における不健康ぶり、健康管理関連法だけでなく労働基準法などの基本的な法も破り放題の状態であるということは前々からわかっていましたが」

「今はそれだけじゃないよ、権力への忖度発言を強要してんだからね。あのズルヤマって子もそうだけどさ、ヤブコにしろ、ジジハラにしろ、思い付きでモノいっちゃう子になんか言わせようとするからだよ。芸で売っていりゃいいのに」

「欧米ではコメディアンや俳優がコメントをするのは当たり前のことのようですがね。ただ彼らはよく勉強し、本も読む。ズルヤマさんは読書が苦手らしいが、それでも時間があれば、良書を探して読むこともできると思いますが」

「まあ子供向けのイイ本もたくさんあるから、そういうのでもいいんだよね、私もよく読んでるよ。でもさ、あんな生活してたら読めないどころか、子供にだって会えないよ」

「そうですね。忖度カウントなんて、心身ともに不健康です」

「ただでさえ、大変な生活してるのにさ、権力への忖度発言を考えなきゃなんないなんて、ホント頭が変になってもしょうがないよ」

「その人たちをテレビなどで観るほうにも悪影響がでそうですな。関係者と視聴者双方の健康を害するということで健康警察関連の事案に該当ということになりますか」

と微笑みながらカップを置くヨウジョウ。ムカイは紅茶をすすりながら

「だけど、わが健康警察もずいぶん守備範囲がひろくなったよね。本当は労働関係のお役所とか医療関係とか本場の警察がやるべきこともはいりそうだし」

「縦割り行政などでなかなか踏み込めなかった部分もありますしね。それに彼ら、特に現場の人は結構こちらに協力的です。内心悔しい思いをしながら見逃さざるを得なかった案件をこちらに回してくれるということもあるんですよ」

「ああ、あのレイプ魔坊やとか医学部入試不正ってやつ。ネットでも評判らしいね。孫とかも“健康警察ってすごい”って言ってるよ。私が所属してることはいってないけど」

「お孫さんにも褒められましたか、それはうれしいですね。ただトメコさん、当分秘密にしておいてくださいよ。トメコさんにはまだまだして活躍いただかないと」

「そうだね、不健康の元は多いよね。だいたい芸能関係だって事務所だけじゃないしさ」

「そう自殺者をだしてもパワハラ、セクハラを改めず、権力にすりよる大広告会社などもありますしねえ。彼らのつくるCMをみると精神的に退化しそうですからな、これはニホン人の精神にも悪い」

「あー、あの偉そーな社員が多いとこが次ね。ま、掃除のオバちゃんなんか八つ当たりされそうで嫌だけど、ガツンと懲らしめてやれると思えば、やりがいもあるわ」

「その調子で次も頼みますよ」

となおもクッキーを食べ続けるトメコのカップにヨウジョウは紅茶を注ぎながら言った。


ちょっと強引な展開ですが、ストレスは心身ともに不健康の元ということで。

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― 新着の感想 ―
[一言] そもそも医療費が上昇するのは器具が高度化するのと高齢化が原因では?不健康な人たちのせいだというためにはその人たちが大部分を占めているというデータが必要になると思いますが、このデータは知る権利…
[一言] ブラックな働き方のせいで不健康になってる人が、日本では多そうですね…
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