元”統自”のモト・ト―ジ
西暦19XX年。日本へとある外国家からのミサイル攻撃が開始された。
憲法九条によって日本は遺憾を示すのみだった。が・・・・・・。
法を破ったのはそれから半年も経たない頃だった。
空自、陸自、海自の幕僚長ら、内閣府による審議、
立法権の強行的な行使によって全ての自衛隊の武力を結集させた。
それが、統合自衛隊ーーー
”統自”である。
まず、海上戦が勃発した。外国家によるミサイルに対し、
日本側は新造したイージス護衛艦「なか」による迎撃と反撃。
この戦いが、後三年に渡る”日反交戦”の幕開けだった・・・。
「・・・・・・ってのは昔の話だ」
「俺が戦ってたなんてのも今やジュブナイル、おとぎ話さ」
煙草に火を付けながら目の前の少女に話すの頬のこけた男は
すかした笑いを見せた。その表情に少女は眉をひそめる。
小さな事務所、ここは巷で少しばかり名前の知れつつある
言わば万屋、「なんでも屋 モト」。
ここを経営するのは元統合自衛隊自衛官、モト・ト―ジである。
モト・ト―ジ、頬のこけた彼はふーっと息を吐いた。
「ト―ジ、昔の武勇伝なんかどうでも良いの。今は私が
満足にご飯を食べられる位の働きをしたらどう?」
少女が着用している黒いパーカーに煙が漂う。それを払いながら少女は言う。
それに対しト―ジはうへー、と独特な溜め息を吐く。
「レイ、もうちっと優しい言い方無いのかよ?俺だって”元”一等海佐サン
なんだぞ?」
ト―ジが煙草の灰を受け皿へ払い落すと少女、レイをたしなめる。
しかしレイはしかめっ面のままである。
「煙草なんて勿体無い物を買ってぐうたらしてる癖に何を言うのだか」
「し、仕事が来ねえんだからしゃあねえだろ!?好きでぐうたら
してるんじゃないんだっつーの!」
と、ト―ジが甚だしい言い訳に興じていると、事務所の
インターホンが鳴る。
こじんまりとしていて殺風景な空間にチャイムは良く響く。
それに俊敏に反応したト―ジがすぐさま煙草を消し、ドアを開く。
「はいはーい!こっちらなんでも屋モトでございまーす!
今日はどの様なごいら・・・・・・いで・・・・・・」
ト―ジが硬直した先に佇むのはこの雑居ビルの管理人、
最上階に住む通称”ひねくれ”。ミサト・サクラ、52歳である。
「モト・ト―ジ、今すぐ家賃を払いなさい・・・45万よ?
さもなくば・・・・・・」
ミサトが拳を構える。それに対しト―ジは焦りながら机の引き出しを
漁る。
「あはは、ごめんミサトさん。お金無いや」
言語道断!!その言葉と共にミサトの拳がト―ジめがけて飛ぶ。
その瞬間、ト―ジは腹筋に力を入れたものの、腹部を殴打され、
壁際まで跳躍する。
「ギャラクティカ、マグナム・・・!」
その見事なパンチにレイが感嘆の声を上げる。
元とは言え、自衛官だったト―ジさえもミサトの拳には叶わない。
その事実にショックを受けるのはト―ジ、しかいない。
「・・・・・・あのぅ」
散らかった事務所に静寂が走る。
小さく声を上げたのは、若い女性。しかもト―ジのタイプの
可愛いお姉さん。
この突然の来客にト―ジは飛び起き、彼女の元へ駆け寄る。
「こちらなんでも屋モト!!承るは私モト・ト―ジ!!
さぁお嬢さん、依頼はなんでしょう!?」