表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ほろ酔い

作者: Lino

 夕方に入ったいつもの居酒屋は、空いていた。

 馴染みのこともあり、8人掛けのテーブル席を2人で占領したところで、咎める人はいなかった。


 シロガネさんは、「ははははは」を笑って、グビグビ、ビールを飲んだ。

 私も同じように「ははははは」と笑って、ジョッキを傾けた。ビールはよく冷えていて美味しい。

 「だからさー、コロッケにはソースが合うんだって」

 シロガネさんは、たわいもないことを話ながら、またビールをグビグビ飲んだ。

 名前のとおり、色が白いシロガネさんだが、今日は少し頬が赤い。

 すでに酔っているのかもしれないし、今日は日差しが強かったから、日焼けしたのかもしれない。

今日のシロガネさんは、薄い水色のワンピースを着ていた。裾には薄い黄色の花柄がプリントされていて、彼女が足を組みなおす度に、裾の花がふわりと揺れた。きちんと化粧もして、よそゆきのシロガネさんだ。

 そんなよそゆきのシロガネさんは、また「ははははは」と笑って、鯵の南蛮漬けを口にほおり込み「美味しい、美味しい」とビールをグビグビやった。


 シロガネさんは、恋をしていた。

 相手は、取引先の人で、SEだかATMだかそんなことをやっている人だ。


 「週末、デートに誘われた」職場の昼休憩の時に、シロガネさんは少し口を尖らせながら、ぼそりと言った。

 少し口を尖らせるのは、シロガネさんが喜んでいる時のクセだ。

 「そっか、いいじゃない。行ってみれば?」私は、それに気づかないふりをして、返した。

 「ふぅーん」シロガネさんは、なんだかよくわからない返事をした。

 

 よそゆきのシロガネさんは、待ち合わせの場所に少し緊張しながら行ったことだろう。

 だけど、彼は来なかった。

 ただ、それだけのことだ。

 

 「シロガネさん、このタコの唐あげも美味しいよ」

 私は、タコの唐あげをムシャムシャ食べて、グビグビをビールを飲み、「はははは」と笑った。

 タコの唐あげは何もおかしくないが、私たちは「美味しい、美味しい」と言いながら、「はははは」と笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ