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運極さんが通る  作者: スウ
闇オークション編
81/127

魔眼



 ピロリん。

『ログインしました』


 5日ぶりのログイン!!

 楽しみでもあったが、それと同時に不安もあった。

 …自分の身体が穴に落ちて、埋められているんじゃないかと、そう思ったからだ。

 だが、その心配は無用なようだ。

 瞼を閉じていても分かるこの光。

 地中にいないということは確実だ。

 誰が助けてくれたのだろうか。

 …ベリトか?

 いや、あの嫌味な奴が助けてくれるはずはなかろう!

 きっと私が落ちていくのを鼻で笑って見ていたに違いない。

 ケチなやつだ。


 目を開くとそこは透き通った場所だった。

 海底からは木の太い根っこが。

 …海底?


「ごぽぽ?」


 ん?

 ごぽぽ?

 先程から妙に体が動かしづらい。

 水が口に入り込んできた。

 水?

 ここは、海か何かの中なのか!?

 このままじゃ、溺死してしまう!!


「ごぽぽ…ぼ…ぉ」


 焦りすぎて盛大に水を吸い込んでしまう。

 鼻がツーンとした。

 これは溺死…。

 何でログインして早々溺死なんだぁぁあ!!!

 バタバタと足や腕を動かし水面を目指すが、かなり遠い。

 空気がなくなってきたその時、不意に腕を何かに掴まれた。


 ザバッ

「ゲホッゲホッ」


 私の腕を引っ張り上げてくれたのは…ベリトだった。

 ニヤニヤと笑みを浮かべ、宙ぶらりんな私を見て、馬鹿にするように鼻を鳴らした。


「ふんっ。家畜如きが我に助けてもらおうなどと数億年早いわ。…それにしても家畜、貴様は随分と泳ぐのが下手よなぁ。まるで溺れたカエルのようだったぞ?実に滑稽だった!!」

「ごほっ…ベリトッ!…取り敢えず、引っ張り上げてくれたことに関しては感謝する。だけど、私は家畜じゃないぞ!!そして、そろそろ下ろして欲しい」

「家畜風情が吼えるではない。…敬語は使わぬのか?この大悪魔様に対して少しばかり不敬であろう?」

「五月蝿いわ!ハゲっ!!」

「む?ハゲ?ハゲとは何だ?…分からぬ。分からぬが、貴様、その言葉は馬鹿にする言葉であろう?我を馬鹿にするとは万死に値する。貴様なぞ引き上げるべきではなかったな」

「ふんっ!私だって好きで溺れてたわけじゃないんですぅ!!あと、ベリトに引っ張り上げて欲しいなんて頼んでないし!!」


 ベリトはその言葉を無表情で受け止め、そのまま自身の椅子に座ってくつろぎ始めた。

 …ちょっと言いすぎたかな。

 2回も助けてくれたんだし、あの言い方は不味かったかも?

 自分が言われて嫌なことは人に言うな、だったよね。

 ここは私が悪い。

 潔く謝ろう。


「ベリト…ごめん。あの、ホントに助けてくれてありがと。助かった。…さっきはごめんなさい」

「…」


 返事が返ってこない。

 これは相当怒ってらっしゃる。

 私には目もくれず、本のページをめくっている。

 暫く続く沈黙がキツイ。

 私は耐えきれず、部屋を出ようとするが、扉が開かない。

 押しても引いても開かない。

 …密室?

 流石に蹴り飛ばすわけにも行かないため、扉を背に座り込む。

 どうしよう。

 沈黙が辛いというのにプラスして密室だと!?

 私を殺しにかかっているのではないだろうか?

 体育座りのまま芝生の上を転がる。


「プッ…ハハハハハハッ。家畜、貴様は一体何をやっているのだ?家畜のやる事一つ一つが理解出来ぬものよなぁ」

「だって!ベリトが喋ってくれないから」

「我が貴様のような家畜に喋りかける必要など皆無であろうが。ん?そういえばだ、家畜。貴様、小瓶を忘れていないか?もうボケてきたのではなかろうな?」

「…あ」


 忘れてたぁ。

 いそいそと小瓶をポケットから出し、栓をとる。

 すると、小瓶の中から風が吹き出した。


「ファッ!?」


 強風で目が乾き、涙が出てくる。

 このままではドライアイになってしまう!!

 ギュッと目を瞑り、風が収まるのを待つ。


「るし!久しぶりじゃのぉ!」


 懐かしい声…数日前に聞いた明るい声が耳に届いた。


「バレンシア!!」


 目の前に現れた赤い髪の女の人に抱きつく。


「うしししししっ!そんなに妾と会えたのが嬉しいのか!!…妾もるしと会えて嬉しいぞ!!」


 ベリトにはないこの安心感。

 はぁ、生き返る。

 そう言えば、バレンシアのステータスを見たことがなかったなぁ。

【鑑定】しよう。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 種族 レイス:竜 ☆4

 名前 バレンシア

 Lv 11

 HP 550/550 MP 450/450

 パッシブスキル

 ・王の威圧

 アクティブスキル

 ・鑑定

 ・竜術

 ・透化

 ・実体化


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ☆4なのにこのスキル達は凄いですね。

 幽霊になっても、生きてた頃のスキルはそのままなのだろうか。


「バレンシア、生きてた時のスキルはそのまま引き継がれている感じ?」

「いや、妾のスキルがこんなに少ないわけなかろうて。生きてた頃は数え切れんほどあったわい」


 …さいですか。

 流石竜、やりますな。


「おい、現存せぬもの如きが我の家畜に長々と触れるではない」


 直後にフワリと体が浮いた。

 抜け出せぬ!


「ぐぬぬ!妾だって好きで死んだ訳では無いんじゃぞ!!」

「戯け。貴様が忍んで遊んでいたから死んだのであろう?」

「うぐっ……その通りじゃ」

「さて、45柱に貴様が起きたことを伝えに行かねばなるまい?」

「え…待って!待て待て!まさかこの体勢で!?」

「ふんっ!当たり前であろう?」

「下ろしてぇ!!」


 ベリトの腕から逃れようにもガッチリホールドされており、びくともしない。

 ベリトが扉の前に出ると、ひとりでに扉の鍵が開いた音が聞こえた。


「そこの屍、扉を開けよ」

「うぬぬっ!…だが、お前さんはるしを抱えておるのじゃ、仕方あるまい」

「バレンシア!助けて!」

「すまぬ、るし。妾がお前さんを助けようとしても、助ける前に殺されるのが見えとるのだ」

「よく分かっておるではないか屍。さぁ、行くか」







 歩く度に揺れる景色を見て、私は気付いた。

 ここはユニオンハウスだということに。

 だとしたら、このままの格好で進まれるとメンバー達とバッタリ鉢合わせしてしまうかもしれない。

 その相手がもしもカインだったら、ここ何日かはずっと馬鹿にされ続けるだろう。

 そうなったら最悪だ。


「べ、ベリト様〜?下ろしていただけないでしょうか?」

「何を言うか。黙って我が腕の中にいろ」


 そうこうしているうちにリビングが見えてきた。

 あぁ、終わる。

 恥ずかしすぎて死ぬぅ!!

 顔を赤い甲冑に埋める。


「るし様!!!」

「るしー!!だいじょーぶ??」

「るし、俺、俺はァァ!!…ぐずっ…」

「るし、無事だったか。よかった…」

「きゅ!」


 聞こえるのは家族達の声。

 あれ?メンバー達は?


「ふんっ!家畜になりそこなった奴らには貴様のことなぞ話しておらん」

「他の皆はー旅?ソロ?狩り?って言ってたよー」

「あの方達は一人旅を好んでいるそうなので、ここに帰ってくるのもたまに、らしいです。るし様、ご無事で何よりです!!…28柱、るし様を(わたくし)に渡しなさい」

「何故我が精霊風情の言うことなど聞かねばならんのだ?」


 バチバチとベリトとギムレットの間に火花が散る。

 この2人は、絶対に仲良くなれないだろう。


「ん?るし、(おまえ)の後ろにいるレイスは誰だ?」


 あ、そうだった。

 皆に紹介しなくちゃね。

 なんたって、今日から家族に加わるのだから。


「彼女の名前はバレンシア。もとはある国の王様だったんだって!!皆、新しい家族だよ!仲良くしてね?」

「バレンシアおねーちゃん?よろしくー。僕はジンー!!」

「妾はバレンシアじゃ。よろしくのぅ、ジン。」


 早速2人は仲良くなれたようだ。

 私もそろそろここから降りなくてはね。


「ベリト、降りたい。あと、ベリトの甲冑は硬いから痛い…」

「む?なら後で変えるとしよう。我も貴様を抱くのに疲れた。貴様…太ったのではないか?」

「失敬な!!」


 ベリトの腕から逃れ、地面に足をつける。

 皆には迷惑かけたなぁ。

 何せ5日間もログインしなかったのだ。

 心配しただろう。

 …心配してなかったかもしれないけど。

 でも、だからこそ、皆に言わなければいけないことがある。

 帰ってきた時に必ずいう言葉を。


「皆、ただいま」

「「「「…っ!!」」」」


 ギムレットはバッと口を抑え、ジンは後ろを向き、ウォッカは嗚咽を漏らして座り込み、ベルモットはクッションの下に潜り、ヴィネは私を抱きしめた。


「「「「おかえり」」」」


 正直言って、皆がここまで悲しむとは思っていなかった。

 それほどに危険な状態だったのだろう。

 申し訳ないことをした。


「るじぃー!!俺、俺、心配じたよお」


 ウォッカが鼻水を垂らして抱きついてきた。

 そのまま顔を軍服に擦り付ける。

 …抱きついてくれるのは嬉しい。

 それは嬉しいんだけども、鼻水を軍服に擦り付けて欲しくはないなぁ。

 顔を離したら、鼻水の線と軍服が繋がっているんでしょ?

 まぁ、後で【生活魔法(クリーン)】掛けとけばいっか。


「ごめんね。心配かけた」


 ポンポンと頭を撫でる。

 それをギムレットとジン、ベルモットが、モノ欲しげに見ていた。


「ギムレット、ジン、ベルモットもおいで。」

「はい!!」

「…うん!」


 2人と1匹の頭も撫でる。

 大の大人が子供に頭を撫でられてるって何か不思議な感じだ。








 しばらくたち、急にヴィネが私に見せたいものがあると言って、私の腕を引いて外に出た。

 確か外は草原だったはず…。




 目の前に広がる光景に目を剥いた。

 5日前には、そこに草原があった。

 だが、今はそれがない。

 変わりにあるのは綺麗に並ぶ家々。

 舗装された地面。

 夕日に照らされ、幻想的だとさえ見えるその光景。

 …。

 言葉が出ない。


「どうだ?驚いただろう?我1人で作ったのだ!元来我は家を建てたりするのが得意でな」

「…驚いた…。…え?…す、凄い」

「だろう?我も作ったかいがあったというものだ」


 凄い。

 全てが凄い。

 家の作りはリアルのそれと似ている。


「住みやすさを追求したからこうなったのだ」


 …ヴィネ、君は凄いよ。

 でもね、


「誰が住むの?」

「…」


 何も考えずに建てたらしい。

 折角建てたのに誰も住まないというのは勿体ない。

 上空からも見たところ、土地の端50m以外に家や、巨大な畑など、色々なものが敷き詰められていた。

 張り切っていたことだけは伺え知れる。

 崩せとは言えないし…。

 こうなると、街の住民が必要になる訳なんだよね。

 住民…か。


「るしー、あそこの街の人はどうー?虫に家を壊された人とかいっぱいいるはずだよー?」


 それは名案だ。

 だけど、帝国の人とが混ざってるかもしれないんだよね。

 ホイホイと入れるわけには行かない。

 それに、彼らの街は彼処。

 帰る場所があるのなら、わざわざここに連れてくる必要は無いだろう。


「なら、旅の最中に家を探してる人とかを連れてくればいいんじゃね?」

「それいい!」

「お、ならば奴隷市場を襲って奴隷を住まわせても良いかもしれぬな」

「!?いや、それはちょっと…。一応考えとく」


 というわけで、住民のことに関してはどうにかなりそうだ。

 暫くは無人な日々が続くのだろう。

 …お化けが住みついたらやだな。


「るし様!!ご飯の用意が出来ましたので、家にお戻りください!今日は宴です!!」

「「「おっしゃあ!」」」

「ありがとー!」


 3人が拳を振り上げたのは何故だろ。

 ギムレットの料理はいつでも美味しいはずなのに。

 お腹すいてたのかな?







 満腹なお腹を抑え、自室に戻りベッドに横たわる。

 はぁ、このフカフカな感触が堪らんよ。

 食べてすぐに寝ると牛になるというが、牛になってもいいほど眠たい。


 ピロリん。

『身体と魔眼が完全に融合したことにより、スキル【魔眼:蝿】を習得しました。』


 突如鳴ったアナウンスに、落ちそうになった頭が覚醒する。

 なぬ!?

【魔眼:蝿】とな!?

 あれかな?目がおかしくなったヤツ…。

 ベッドから飛び降り、鏡覗く。

 …と、右目が変わった自分がいた。


「厨二ってるけど、かっこいい!!」


【魔眼:蝿】の効果はなんだろうか?知っておかないと、ヤバイ気がする。

【鑑定】しておこう。



【魔眼:蝿】…10秒以上見つめた相手の身体からモスキーバエトを生成する。魔眼は真実しか映さない。



「ちょっ!!」


 なんやこのスキル!

 エグすぎるだろ!!

 しかも、パッシブスキルでoffに出来ないとか。

 私にボッチになれと言っているようなものじゃないか!!


「どうしよう…」


 このままじゃ、部屋から出られないよ。

 …出たら皆を傷付けてしまう。

 うーん、皆と一緒にいられないなんて、辛いなぁ。

 こんなスキルをゲットしてしまうなんて……なんて不運なのだ。


「ふむ、どうした?家畜。そんな不細工な顔をして」


 私しか居ないはずの部屋からベリトの声が聞こえた。

 振り向くと、不敵な笑みを浮かべた大悪魔がいた。


「ベリト!?入っちゃダメ!」

「何故に?我がどこへ行こうとも我の勝手であろうに。ん?さては貴様、魔眼が覚醒したのか?」

「そうなの!!だから、部屋に入っちゃダメ!!」


 ベリトを見ないように両手で目を覆う。


「どれ?見せてみろ」


 解かれまいと力を入れるが、容易に両手を下げられた。


「ふっ。いい目ではないか。だが、その効力はちと厄介だ。…ふむ。そういえば、アレがあったな」


 ゴソゴソとアイテムボックスから取り出したのは眼帯。

 それを器用に右目につける。


「これならば問題あるまい?その眼帯はな、あらゆるものを封印する力を持っている。故に、貴様のその目も封印されたという訳だ。これで良かろう?」

「……っ!ありがと…」

「我は疲れた。ではな、家畜」


 そう言って、ベリトはベッドに倒れ込んだ。

 声をかけるまもなく、緩やかな寝息が聞こえてくる。

 …そこ、私のベッド何ですけど。

 どかそうにも、眼帯をくれた恩がある訳だし、手を出すことが出来ない。

 仕方ない。

 ベリトの邪魔にならないよう、ベッドの隅に蹲る。

 これなら何も言われまい。


 さて、明日は何をしようか。

 そう思いながら、重い瞼を閉じた。

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