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運極さんが通る  作者: スウ
序章
4/127

幼虫現る

編集完了。2021.7.2

ステータス表記法が変わりました。5話以降まだ編集を行っていないので、ステータス表記が若干違いますが、ストーリーは変わりませんので、よろしくお願い致します

 東堂さんと別れ、飛ばされた場所は第一の街が見える広大な草原だった。

 草や土の匂いがする。

 興奮しながらあたりを見渡す。

 ふおおぉぉ。感動だよぉぉ。

 うわぁ! すごいすごい!!

 空が青い! 空気が美味しい! そして何より太陽が二つある! 夜になったら月も二つ出てくるのかな?

 スーハースーハー。


 ………。

 はい。すみません。はしゃぎすぎました。

 冷静になって、メニューを開き、東堂さんから貰った『闇の追憶』と初期装備を装備する。

 膝まであった長い髪の毛を緩く三つ編みにしてみました!

 腰に剣をぶら下げる。

 ずっしりくるこの剣重み、ニヤニヤが止まらない。むふふ。

 よしよし、とりあえず第一の街に向かうことにしよう。

 ここにいても何も始まらないだろうし。

 そう思って一歩踏み出そうとしたら、草をかき分ける音が聞こえた。

 さっそくモンスターと遭遇だ!

 警戒して草の分け目を凝視すると、そこには流線型のぽよぽよした物体がいた。

 こ、これはまさか……!


「スライム!」


 興奮した個体名を叫んじゃったけど……やばい。

 生で見ると想像していた五倍可愛い。ぷにぷにしたい。

 そんなことを考えていたら、スライムが何かを飛ばしてきた。避ける間もなくそれを受けてしまった私は、身に起こった現象に驚愕した。

 初心者装備が一部溶けた。……しかも、体力が削られてるっ!?

 まさか…酸性?

 この攻撃を受け続けると私、死んじゃう!!

 ヒィ。さっきまで可愛かったスライムちゃんが化け物に見えてきた。

 怖いけど、ここはまずファンタジーらしく【鑑定】いってみよう。

 

ーーーーーーーーーー


種族 スライム

Lv2

基本的に弱酸性で構成されている。たまに強酸を吐くやばい個体もいる。可愛いからって油断したら死に戻り確定です。


ーーーーーーーーーー


 え……怖。常時弱酸性? なんて恐ろしい子。

 などと戦慄していると真っ青な液体を吐きかけてきた。

 これって強酸じゃね? 草はおろか地面まで溶けてるんですけど!

 スライムちゃんの強酸性攻撃を避け、ガラ空きなボディを思いっきり蹴り飛ばす。

 ボールみたいにぽーんと飛んで行った。でもこれ、ダメージ入っていないんだろうなぁ。バウンドして戻ってきたスライムちゃんは、ぷるぷるボディを震わせまた酸を吐いてきた。

 ふっ、そんなトロイ攻撃私が食らうわけわか―


「―メッ!?」


 誰だこんなところに草結びしたやつ!

 うっっわ、ジュッって聞こえたよ今! 腹に風穴空いてる!?

 新品の耐久値皆無の服が溶けてボロボロだ。この野郎、顔は可愛いのにやることは可愛くないぞ。許すまじ。

 眩しい二つの太陽を見上げた私は、次に肌が露わになった防具を見て、再び視線をスライムに戻した。

 頭上には紫外線をガンガン放つ球体が二つにさらけ出されたお肌、と。


「紫外線はシミの元ォ!」


 怒りのドロップキックが炸裂した。またもやボールのように飛んでいくスライム。さっきよりも飛距離は伸びている。

 だが、何もなかったかのように帰ってきて酸性攻撃を放ってくる。モンスターって魔力切れはしないのかしら。そもそんな概念存在しなくて?

 攻撃を受ける、蹴る、躱す、蹴る、受ける……と繰り返すこと三順。気が付けば私の体力は残り2になっていた。

 まずい。街に着く前に息絶える。そう思った時だった。

 スライムの体が金色の粉に変わって消えていった。

 運に極振りしたお陰で筋力が0なのだけれど、多分あれだ。

 蹴った時にスライムが地面を数バウンドしてたし、その時にでもダメージ食らったのだと思う。


 あれ、そういえば剣使った方が早かったのでは?

 初戦闘の余韻に浸りつつ剣を振っていると、脳内に電子音が鳴り響いた。


『Lvが上がりました』


 おおう。スライムちゃんのお陰でLv上がりましたわ、ありがと。


『2ポイント獲得しました。任意のステータスに割り振ってください。』


 これはもちろん運に振ります。

 

『スキル【蹴り技】を習得しました。』


 ん? 蹴り技……さっきスライムを何回も蹴り飛ばしたからかなぁ。あはは。

 なんか申し訳ない。ぷにぷにしたかったけど、酸を飛ばすからね。本当に恐ろしい子だったよ。

 おや、スライムが消えた場所にドロップ品が。


・スライムジュエル……スライムから取れるジュエル。お肌に悪い。


 おー、ジュエル。初のドロップ品だ!

 アイテムボックスに仕舞っとこう。

 そういえば、何故かさっきの戦闘から違和感が半端ない。

 何なんだろう。んん? 感触っていうのかな。

 いつもと若干違うんだよね。


 メニューを開いて設定画面を開く。

 東堂さんがなんか言ってた気がしたんだけど……うーーん。

 痛覚設定の項目に目が止まった。

 あっ、多分これだわ。

 今0%になってるから、50%にあげてみよう。

 どうやって変えるんだろう。


『権限がありません』


 あら、あらあら。

 変えられないのね。なら何でこの項目があるのかって話なんだけど、そこのところは運営じゃないから分からんね。

 痛みが衝撃としてくるから違和感があったのかも。思い出せば腹に風穴空いても全く痛くなかったし。痛いのは嫌だからこの措置はありがたいけど、いつもと感覚が違うのは慣れないなぁ。


「ふんふふーん」


 気をとりなおして、第一の街に向かうとしよう。

 陽気に当てられ、音痴と定評のある鼻歌を歌いながら道なりに進む。

 途中、パーティーを組んでモンスターを討伐している人達が見えた。非常に楽しそうである。

 ソロだと限界があるから、いずれは固定の人達とパーティーを組めたらなぁと思う。

 こんな運に極振りした私とパーティーを組んでくれる人なんているのだろうか。

 急に心配になってきた。俗に言う地雷ステータスだもん。

 ……当分は独り身な気がする。


 寂しさ胸を締め付けられていると、再び脳内アナウンスが鳴った。

 これは慣れない。心臓に悪い!


『スキル【挑発】を取得しました』


 ん? 挑発?

 挑発行動なんてとってないんですけど。まさか私の鼻歌がそう判定されてしまったのだろうか。全くもって失敬な!


【挑発】……モンスターを呼び寄せることができる。 (Lvが上がることによって呼び寄せる効率が上がる)


 ほへぇ。これがあればLv上げの効率はあがるね。ありがたやー。

 まぁ、今は使いたくないスキルですけれども。

 今モンスターと遭遇したら死んじゃいますもん。弱酸2発であの世へ旅立てますな。

 と、いうわけで。【挑発】スキルはしばらくお蔵入り決定となりました!

 わーぱちぱち。

 新たなスキル獲得に一切の喜びを感じることなく、まっすぐに街を目指す。

 腰に下げられている剣に手を置いて姿勢よく歩いていると、唐突に流行りのアニソンが脳内再生された。


「君は月明かり~ふんふふん~」


 歌詞は覚えていないので、鼻歌もミックスさせる。記憶が所々虫食い状態になってるから、フィーリングで歌ってる。たしかこんな雰囲気だったような気がするのだけれども。


『スキル【挑発】の効果により、モンスターが呼び寄せられました』


 うそでしょ。

 私の歌すら挑発行為に当たると? そんな馬鹿な!

 とととにかくこの場から離れなければ。スライム共がやってくる!

 後ろを見て、何もいないことを確認。そのまま走り去ろうとして、


「んぶっ!?」


 何か弾力のあるものにぶつかった。

 嫌な予感がして、絶対に見てはいけないと思って、なのに顔が上がった。

 上がってしまった。

 心と体が矛盾するなんて多々あることだ。でも、今回ばかりは見るべきではなかった。


「ようchu……?」


 瞬間、全身に鳥肌が走った。

 来ないでぇぇぇぇぇ。ひぎゃあああああぁぁぁぁ。しぬっしぬっアッアッアッ無理無理無理!


 私は虫が大嫌いだ。

 だけどそんな私は、幼少期は幼虫に直に触れることができたし、蝶々になるまで献身的に虫籠で育ててた。今思い出すとゾッとする話だけど、手の上に乗せたり腕の上で這わせたりして遊んでた。何やってんだ私って感じだ。

 おおぅ、ゾワゾワするぜ。

 想像してご覧、自分の掌で5センチくらいの幼虫が這っている姿を。

 ……やめよう、鳥肌が止まらなくなっちゃう。


 そんな昔の幼虫を思い出させる奴が身の前にいる。

 あの緑色のブニブニとした脂肪、2メートルはあるであろう体躯、クリクリな瞳、小さなおちょぼ口、そして、おしりから生える1メートルほどのピンと立った細い尻尾。

 ああぁぁぁ、見ているだけでゾワゾワするぅぅぅぅぅ。

 2メートルだよ? ブニブニだよ? 緑色だよ? しかも、尻尾モドキがゆらゆら動いてるよ?

 キャ〇ピーをでっかくした感じのやつだよ?

 アニメじゃないんだよ、リアルに持ってくるんだよ?

 無理無理無理無理! 相手にするのは馬鹿! 触りたくない!

 視界に入れるだけで生理的嫌悪が……!

 へっ? 奴が口を大きく開けたよ? 何をするというの……?


「プギャアアアアアア」


 なんか叫んだァァァ。

 えっえっ!? なになに?? ま……まさかっ……!


 茂みをかき分ける音が聞こえて、草むらから既視感のある尻尾が立った。

 もう泣きたい。


「ひっ……嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! なんで仲間呼ぶのぉぉ!!? 私は筋力0よーーー!!」


 来ないで来ないで来ないでぇぇ。

 チワワのように震える私の願いも虚しく、ブルブルと醜い体躯を揺らしながら近づいてくる。

 奴らとの距離残り1メートルとなった。

 いやぁぁぁぁどうにでもなれぇぇぇ!




 どこかで戦闘の終了を告げるアナウンスが鳴った気がした。


『スキル【無心】を習得しました』


 はっ……。私はいったい何をしていたんだ。残りの体力は1だし、それにいつの間にか【無心】なんてスキルをゲットしてるし。


【無心】…心を無にして精神力を上げる。精神+10。


 周りを見渡すと壮絶な戦いの後と、青い血が散乱していた。

 私が握っている剣も青い血がこびり付いている。

 なんだろう。

 なんの血だろうね〜。ネチョネチョしてる~気持ち悪いね~。

 あっ、ドロップ品が2つ落ちてる。


・幼虫糸……まだ成体になっていない幼虫が体の中で精製した糸。


 手早くアイテムボックスにしまう。

 いやぁ〜5分前の記憶がすっぽり抜けているよ。

 いったい何があったんだろうね。はははは。


 ぶよぶよ……つぶらな瞳……ウッ頭が!

 さ、さて、気を取り直して第一の街に行こう!



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