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運極さんが通る  作者: スウ
世界ランキング闘技大会編
38/127

本戦

 



 午前8時。

 ギムレットはお昼ご飯の支度。

 ジンはまだ夢の中。

 ヴィネはギムレットのお手伝い。

 ウォッカは…。


 クイクイと服を引っ張られて後ろを振り向くと、下を俯いているウォッカがいた。

「どうしたの?」

 返事は帰ってこない。

 珍しいことだ。

 再度問いかけてみる。

「どうしたの?」

 2度目の問いかけにバッと顔を上げたウォッカ。

「が…」

「が?」

「頑張れよな。…俺はまだ弱いから、るしを助けてあげられない。役に立つことも出来ない。だから、だから俺も頑張ってるしの役に立てるようになるから、せめてるしも大会で優勝してこい。俺…応援してるから。」

 消え入りそうな声だった。

 こんなウォッカ、見たことが無い。

 何があったのだろう。

「あのさ、昨日るし、泣いてたじゃん?」

 見てたのか…。

 恥ずかしいぃ!

「俺さ、弱いから…相手がヴィネだからって、助けに行かなかったんだ。俺、その時のこと凄く後悔してる。るしを守るって決めてたのに、全然守れてないから。」

 そうだったのか。

 ウォッカも色々と悩みを抱えているんだね。

「俺、強くなるから。強く…るしを守れるようになるからっ!」

 私も何か言おうとしたちょうどその時、


「ご飯ですよー!皆、食卓についてー!」


 チラリとウォッカを見ると、我先にと食卓の方に駆け出していた。

 その後ろ姿に私は励まされた。

「ありがと。」









『さぁさぁさぁ!!とうとう始まるぜ!第一試合!1回戦目の熱い戦いを繰り広げてくれるヤツらはコイツらだっ!!』



 石畳の上に登る。

 相棒(パートナー)と顔を見合わせ頷き合う。



『カウント行くわよー!』


『5』


『4』


『3』


『2』


『1』


『go!!!』



「行くよっ!カインっ!!」

「おう!任しとけっ!」





 30分前。


 はやく会場に着きすぎた。

 周りに人がチラホラいるけど、まだ少ないほうだろう。

 運営曰く、会場に着くと、自分の相棒(パートナー)がわかるらしい。

 私の相棒(パートナー)は誰だろう。

 ワクワクドキドキするね。



 不意に私の手からビームが出た。

 慌ててビームの先を見ると、見慣れた人が。

「ん?これなんだ?って、るしじゃねぇか!」

「カイン!昨日ぶりだね。」

 ビームのようなチューブのようなものが、私とカインの手を繋いでいた。

「これ何か知ってるか?」

「知らないよ。」

 周りの人も、チューブで繋がれて2人1組になっている。

 これはもしかして、

「カインが私の相棒(パートナー)ってこと?」

「そうなりそうだな。るし、今回も宜しくな!」

「うん。」

 ガシッと手を握り合う。

 カインは、あっ、となにか思い出したような素振りを見せ…。

「俺、昨日作戦考えてきたんだが…。」

 私に良い作戦を教えてくれた。







 私は相手の剣を受け流して、足をかけようとする。

 だが、その隙にもう1人が攻撃を仕掛けてくる。

 さすが、ここまで勝ち残った力があるプレイヤーだ。

 初めて組んだ相手とでも、ここまで上手く連携してくるとは。

 油断のすきも無い。


『おおっと!初めての連携なのに、拙くないっ!!あの2人、やるな。』


『ですね。かなりの技術を持ち合わせていたのでしょう。ラッキーでしたね。』


「るし、作戦通りになっ!」

「うん!任せてっ!」

 カインは5m程後ろで反撃の機会を伺っている。

 作戦はこうだ。

 私が2人の注意を完全に引き付け、かつ、カインの方に気づかれないよう移動させる。

 その後は、カインがなんとかやると言う。

 とても1日かけて考え抜いた作戦とは思えないほど確実性がない作戦だが、私が人のことを言えないのはわかっている。


「アタック・アップ!!」

「スピード・アップ!!」

 相手の攻撃力とスピードがグンと上がる。

 鎧の継ぎ目と継ぎ目の間を切って、(ダメージ)がどんどん入ってくる。

「…っ!!スティール・ラック!」

 大太刀を大きく振りかぶり、相手を後退させる。

 体力が半分を切るかどうかまで削られた。

 強い。


『るし選手、体力が残り少ないけど大丈夫か?カイン選手が後ろにいるのはなんの意図が…。』


『さぁ、ですが、このままいくと、るし選手が死ぬのは確定ですね!!』


 実況!

 カインの事を敵に漏らさないでっ!

 思わぬ盲点をつかれてしまった。

 これで相手もカインが何かをするために後ろに下がっていることに気づいただろう。

 ということは、警戒も強まったはずだ。

 上手く機転を聞かせて戦いたいが、防ぐのでいっぱいいっぱいだ。

 ここは、奥義その1、ジンの力を借りよう。

 意地を張って使わないという手は私にはありませんからね。

「ここだぁっ!!」

「一人狩ればもうこっちのもんだ!」

 スキルを使ったのか、赤いオーラを纏った武器が迫り来る。

 ここだな。

 アイテムボックスからふた振りの双剣を取り出して、攻撃を防いだ。

「なっ…!」

 その動揺を逃さずに相手の頭に双剣を振り落とす。


 ガンッ

「ぐぁっ…。」

 水精霊の双剣は攻撃力が高いため、相手のヘルム上からの攻撃でも大ダメージだ。

 相手は脳震盪を起こしたようで隅の方でフラフラしている。

 トドメを指したいところだが、もう1人、ピンピンしている奴がいる。

「カインッ!そっちのフラフラしてるのよろしく!」

「おう!任しとけ!」

 当初の作戦とは違うが、作戦は無視するためにあるっていうじゃん?

 所詮は作戦。

 どうってことない。

「背負い投げっ!」

 カインさん、柔道やってたんですね。

 フラフラさんは、そのまま場外に投げ飛ばされた。


『お〜っとぉ!!カイン選手の背負い投げが炸裂ー!ナリガ選手場外〜!!これは予想外の展開だ!』


『あのるし選手の双剣…カッコイイですねぇ。』


 残るは1人。

「くっそぉ、何なんだよ!その剣は!!」

「ん?あ、そこ濡れてるよ。」

 取り乱していた相手は、足場を確認せずに向かってきたため、水精霊の双剣から滴り落ちた水に滑って派手に転んだ。

「今だよっ!カインっ。」

「おう、いい感じだなっ!!」

 カインは転んだやつに向かって高く大きくジャンプし、ちょうど真上に来たところで、

「ヘビー・メタルっ!!」


 ズドォォン!!


 まさに圧殺。

「うっわ、痛そう。」

 鉄の塊大が、転んだ人の鎧ごと内蔵をペシャンコにしていた。


「るし!最後は上手くいったな!」

「うん、お疲れ様!」

 作戦の仕上げはあんな怖いことするんだね。



『試合しゅーりょぉぉー!!1回戦の勝者はるし&カインペア!圧殺とは怖いことやるよな!』


『お疲れ様でしたぁぁ!!いやぁ、いい戦いでした。今日はあなた達のペアはもう試合がありませんので、この後の試合を観戦してもよし、羽を休めてもよし、作戦をたてるのもよしです。明日の試合に備えて下さい!!』




 ジンとウォッカ、ギムレット、ヴィネに先に帰ってもらい、今日はカインと2人で試合観戦することにした。


「なぁ、あの武器なんだよ。」

 ポツリとカインから言葉が漏れる。

「運の力。」

「そうか…ありがとな。」

「うん。…他にも色々と隠してるんだ。まだ使わなくていい?」

「…いいよ。お前のだしな。お前のタイミングで使え。でもな、使わなくて負けたら、俺はお前を許せねぇわ。…お、試合が始まるぞ。しっかりと見て技術盗もうぜ。次の相手もしかするとそいつらかもしれないからな。」

「おう。」



『さてさて!本日2回戦の始まり始まりぃ!!まだまだ熱くなるぜぇ!!』


『カウント行くよー!!』


 見たところ、剣士2人組VS魔術士2人組という構造だ。

 接近を許したら魔術士の負け。

 逆に接近出来なかったら、剣士の負けといったところだろう。

「るし、どっち勝つと思う?」

「ん…魔術士?かな。」


『go!!!』







 …試合はあっけなく終わった。

 接近を許してしまった魔術士に攻撃を加えようとする剣士。

 だが、魔術士だと踏んでいた2人のうち1人が、隠し持っていた短剣で、勝てると思い込んでいた剣士の首を撥ねた。

 そして、残り1人になった剣士に向けて、2人の魔法が炸裂し、終了した。

「こんな戦い方もあるんだな。」

「…うん。武器を変えても、役職は変えなくていいみたいだし、勝ったあの人達は、見た目で相手を騙して勝利まで持っていったんだよね。だから、本当はなんの役職についているかは本人しか分からない。」

「……俺たち、明日も勝てるのかな。」

「うん、勝つよ。勝ってみせる。」



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