予選②
今日からは冬休みだ!
ふふふ。
リアルではボッチかまくら作るぞー!!
昨日は屋台を回ってすぐにヴィネと対人戦の練習をした。
身体中が痛いなぁ、そんな気がする。
ピロリん。
『本日の予選は午後1時からになっております。遅刻しないようお気をつけください。』
「今日は1時から予選かぁ。」
口からため息が漏れる。
「ほほう?1時からなら充分に対人戦の練習が出来るではないか。」
しまった…近くにヴィネがいたのを忘れていた。
「今日はもういいかなぁ。」
「1日の鍛錬を取り戻すには1週間必要だと聞いているぞ?なに、死ぬことはあるまい。ここには回復できる湖があるからな。」
ヴィネはスパルタだ。
ビシバシと私を叩き、地に伏せさせる。
くそぉ。
いつか勝ってやるんだからなぁ!
私は大太刀をヴィネに振るう。
ヴィネは木で作った特製の片手剣で簡単に凌ぐ。
「るし様、腰が引けてますよ。ほら、もっと集中して下さい!」
ギムレットもスパルタだ。
昨日の試合を見て大層興奮したとか。
指摘してくれるのは有難いのだが、上手くいかない。
センスないなぁ。
「るしー!頑張ってー!」
「気絶したら拳骨なっ!」
ジン…ありがと。
ウォッカ…最近私の扱いが雑になってきてないか?
っと、ヴィネが余所見してるや。
チャンスだな。
「せいっ!」
「甘いっ!!」
ヴィネに避けられ、さらには足を引っ掛けられて顔から盛大に転ぶ。
「うぶっ。」
もう涙目だ。
でも、ここで諦めたらプライドが廃る。
私は大太刀を握りしめて、再びヴィネに立ち向かっていくのだった。
これを1時前までやるのかと思うと、気が遠くなった。
『予選2日目の第10試合目だぁ!!そろそろ数が少なくなってきたかな?でもまだまだ減らすっ!!日本一はまだ遠いぞっ!!』
『さぁて、選手の皆様っ!!場内に上がってくださーい!!』
2回目の試合だ。
強い人たちが集まってきているのだろう。
ドキドキが止まらない。
大観衆の目が恐いよ…。
『全員上がったな?じゃあカウントを、開始する!』
きた…。
『5』
武器を握る手に汗が染み出す。
『4』
出来るだけ、隅に寄ろう。
『3』
見渡す限りにはあの魔術士はいないみたいだ。
『2』
心臓が早鐘を打つ。
『1』
覚悟を決めろっ!!
『go!!!』
「「「「ウォォォォォォォォォ!!!」」」」
ゴゴゴゴゴッ
突如として、遠くの方で地面からゴーレムが生えてきたのが見えた。
多分錬金術士の仕業だろう。
近づかないでおこう。
ドガァァンッ
拳1振りで数人のプレイヤーをノックアウトさせているのが見えた。
うっわぁ。
ご愁傷様です。
私もあれ食らったら一気に体力が削られそうだ。
「スティール・ラック!!」
ゴーレムに圧倒された、近くにいたプレイヤーの首を狩る。
どんなに防御力が高くとも、それは防具の力であることが多い。
その為、殆どの場合は首を目掛けて思いっきり振ると、一撃で倒せることが出来る。
だが、たまに、倒せないやつもいる。
それが、今私が相手をしているプレイヤーだ。
種族はヒューマン。
多分だけど、防御力に極振りしている。
全然刃が通らない。
こういう奴は場外に吹っ飛ばすべきなのだが、生憎私の攻撃力が足りない。
満月を使えば楽勝なのだが、予選で使う気は無い。
相手も私と同様で、敏捷力が低いのか、追ってくるスピードも遅い。
てことで、ここは戦略的撤退だ。
他のプレイヤーのところに行こう。
「おい、待て。逃げるのか?」
ここは普通に、
「逃げる。」
こんな奴の相手はしてられないのだ。
隅を移動しながら運を盗んでいく。
急に辺りが暗くなった。
周りのプレイヤー達が逃げていく。
はて、どうしたのやら、と上を見上げると、ゴーレムでした。
「ふぁっ!!」
全力で逃げましたとも。
えぇ、全力で。
後でヴィネに殺されるね。
トホホ。
逃げ遅れた数人のプレイヤーが薙ぎ倒されていく。
あー、恐ろし。
ふと前を見ると、防御極振り君の所まで戻ってきていた。
「やぁ、さっきぶり。」
「ゴーレムから逃げてきたのか、ダッセェ。」
なんだコイツ、憎たらしい。
「俺だったらあんな奴倒せるけどな。」
ほぅ、有言実行だな、はよ行け。
「アイツを倒すにはアンタの力が必要だ。」
「はぁっ!?」
コイツ、何を言い出すかと思えば、共闘だと?
怪しい。
「俺はアンタを殺さない。アンタも俺を殺さない。これでどうだ?」
ここはコイツの案に乗るしかないな。
あのゴーレム倒さないと、勝ち越せなさそうだし。
「…わかった。で、どうやって倒すんだ?」
コイツには隙を見せられないな。
背中を刺されそうだ。
「アンタ、騙されやすそうだよな…。まず、俺があのゴーレムの攻撃を受け止める。んで、俺が止めている間にアンタがゴーレムのコアを破壊する。」
「コア?」
「そうだ。あのゴーレムの胸元に、宝石が埋まっているのが見えるだろ?あれがコアだ。あれを破壊すると、ゴーレムは動かなくなる。分かったな?」
「ほーん。何で君がそれを知っているんだ?」
極振り君はニヤリと笑う。
「俺、初めての役職、錬金術士だったんだよね。」
なるほど。
なら納得できる。
「じゃ、鎧さん、行くぞっ!」
「わかったよ。行くよっ極振り君!」
2人は駆け出した。
今もてる全力疾走で。
ゴーレムの攻撃が迫ってくる。
ドゴンッ
それを極振り君が受け止めた。
「俺のことは放っておけ!後は任せたぞっ!!」
そのフラグ立ちそうな言葉言ってみたかったんでしょ?
ニヤニヤしてるよ。
「任せてっ!」
私は大太刀をコアの部分に突き刺す。
なかなか刃が通らない。
「まだかっ!?」
「まだっ!!」
「俺、他のプレイヤーにも攻撃されてて辛いんだけど。」
振り返ると、極振り君が魔法やら何やらを食らって、体力を少しずつ減らされているのが見えた。
「ぐあっ!!」
極振り君の悲鳴が上がる。
ありがとう。
「君の死は無駄にしないよ!」
「死んでねぇっ!!」
ありゃ、さいですか。
ガンッ
ガンッ
ガンッ
ピキッ
「もう少しで行けそう!」
「頼む!俺ちょっとやばいかも。」
極振り君の体力が半分を切っていた。
これは急いだ方が良さそうだ。
大太刀でコアを突く。
突く。
突く。
突く。
ピキキッ
「やめろぉぉぉぉ。」
ゴーレムの中から声が聞こえる。
ははーん、なるほど。
術者は中にいるってことか。
なら、
「せいっ!」
渾身の力で大太刀で突く。
ピキキキッ
パリンッ
ガラガラガラ
ゴーレムが崩れた。
中から中年で小太りのオッサンが。
「ひぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!」
容赦なし。
慈悲なし。
「そいっ!!」
首を狩る。
ふー、これでもう大丈夫だな。
他のプレイヤーを狩りに行こう。
「おい、助けろっ!!」
おっと、極振り君のこと忘れてた。
「ごめん、忘れてた。」
「おおいっ!?」
極振り君を襲っているのはおよそ3人。
内ひとりは魔術士か。
厄介だ。
まずは、剣士から。
私は大太刀を構えて剣士に突っ込んで行く。
まさか極振り君を助けるとは思っていなかったようで、動揺している。
「スティール・ラック!!」
剣で相手の剣を弾き、腹部に一撃。
【運盗み】が効いたようで、魔術士の魔法に自ら当たりにいった。
「おいっ!避けろっ!!」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「お前、何しやがった!!」
「いや、その人がフラフラして貴方の魔法に飛び込んでいっただけじゃないですかっ。」
これで1人は片付いた。
もう1人の方は極振り君が何とか頑張っているから、残るは魔術士のみだ。
大太刀を構えて魔術士に突撃する。
「やめろっ!降参だっ!!降参っ!」
こういう手の奴は後から、「嘘だよー」とか言って、背中を指してくる種の奴だ。
ここは確実に首を跳ねておかなくては。
「やめっ、やめっ!!ひぎゃぁっ!!」
首が飛んでいく。
私が1番痛みを感じさせずに殺す方法がこれだ。
仕方ない。
極振り君の方はどうかというと、かなりの僅差で勝ったようだ。
ポーションをゴクゴク飲んでいるのが見える。
周りを見ると、残り私を含めて6人になっていた。
うち2人はタイマンで戦っており、他の4人は遠目の観戦をキメている。
真剣勝負を害するような人はいないようで何よりだ。
『しゅーりょぉぉおう!!本日予選第三試合目、ご苦労様でしたっ!!いよいよ明日は本戦出場をかけた最後の戦いだぁ!!!』
『皆様っ!!明日のためにも英気を養っておいて下さいね!!それでは、本日11試合目は午後2時からになっております!!10分後、またお会いしましょう!!アデュー!』
帰ってから、ヴィネにコッテリと絞られました。




