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運極さんが通る  作者: スウ
世界ランキング闘技大会編
32/127

大会当日

今話から大会に入ります!

 


 大会の開会式は昼の午後1時から。

 それまでは家で精神統一だ。

 って言っても、精神統一なんて、やり方がそもそも分からない。

 私はおもむろにヴィネを撫でた。

 ヴィネがなんでここにいるのかというと…



 昨日、家に帰ってからギムレットに魔術書(グリモワール)のことを話した。

 これは使ってもいいものなのか、と。

 すると、ギムレットは、軽い調子で、

「いいんじゃないですか?」

 と、一言いった。

「え、いいの?」

「はい。ヴィネは来るべき時に戦闘に出す以外ずっと本の中にいるんですよね。」

「うん。」

「でしたら、本の中は寂しいでしょうし、今召喚してみてはどうでしょうか?」

「い…今!?…まぁ、ギムレットが良いって言うならいいけど。」

 言われるままに、ヴィネを召喚した。




 という訳だ。

 ギムレットはヴィネと昔からの知り合いだったようで、仲良くしている。

 どう知り合ったのか、その経緯を今度聞いてみようと思う。

 ヴィネを召喚する際、MPを2分の1持ってかれた。

 悪魔…恐るべし。

 私はヴィネのお腹に抱きつく。

「ヴィネは温かいなぁ。」

「だねー。」

「ヴィネ、今度俺を乗せてくれっ!」

「はぁ、(おまえ)ら、敬語はどこにいったのだ。」

「…仲間に敬語、要らない。」

「「それな!」」

「はぁ。」

 ジンとウォッカもヴィネにすっかり懐いたようで、良かった。

 そう思いながら、私は湖の周辺を囲っている外壁を見る。

 いつの間にここまで出来てしまったのだろうか。

 掲示板では、新たなイベントかっ!?とか色々騒がれてるけど、実際ここは私達の拠点なんだよね。

 他にも、あの軍服はたくさんの情報を隠している、マジありえねぇ、死ねや、PKすっぞゴラァなど、色々な心無い言葉が私のメンタルを破壊して、残りのライフ0になっております。

 幸いにも、ジンとウォッカは進化してゴブリンじゃなくなったから、あんまり私だと気づかれなくなったし、何より、新しい防具のヘルムのお陰で顔が見られないのが大きい。

 ありがたや。

 心のケアは大事だよね。



「ジンとウォッカはどうするの?大会の見物は2人じゃ危ないと思うの。2人から武器借りるから、丸腰になっちゃうんだよね。」

「僕、それでも見に行きたいー!」

「俺も。るしの勇姿を見に行きたい。」

 2人の気持ちは嬉しいんだけど、やっぱり保護者がいないとなぁ。

「なら、我が共に行こう。」

「あら、(わたくし)もいきます。」

「ええっ!?いや、まず、ヴィネは大きいライオンでしょ?目立っちゃうよっ。」

「るし、安心しろ。ちゃんと我は人化出来るぞ?」

「ならいいや。…いいのか?…ギムレットはここの管理どうするの?」

「ふふふ。管理なら、スピリット達に任せます。もし何かあっても、すぐここに戻ってこられるよう弄っておきますので。」

 …。

 弄るって…。

 流石、水精霊王。



 今回、大会の応援に来てくれるのはジンとウォッカ、ヴィネにギムレットだ。

 スピリット達は家でお留守番。

「ごめんね。家の防衛頼んだよ。」

 スピリット達はふよふよと近付いてくる。

 可愛いなぁ。

「るし様、ギムレットの元に戻ってきてください。」

「はい。」

 素直に従ってギムレットの元に行く。

 どうやら、着ていく服を創るらしい。


 1着目

 蒼色のワンピース。

 胸が強調されてますね。

 動く度にポヨンポヨン聞こえます。

 私はキャラ設定の際、胸の設定をし忘れていたので、つるぺったんです。


 2着目

 爽やかな白のTシャツに水色のスピリットのシルエットが入っている服と、水色のミニスカート。

 可愛いですね。

 これもポヨンポヨン言ってますね。

 グラビア行きますか?


 3着目

 黒いスーツ。

 秘書みたいでいいと思います。


 この3着の中からどれがいいか選んでほしいみたいだ。

 私から見たらどれもいいと思うのだが、迂闊に「全部似合うよ」なんていうと、不機嫌になる…これが女というものだ。

 だから、本人が着て1番嬉しそうにしていた服を選ぶべし。

「2着目の服が1番似合ってると思うな。」

「そうですか!早速着替えてきます!」

 ギムレットは嬉しそうに2着目の服を抱えながら、試着室に入っていった。

 いつの間に試着室創ったのやら。



「るし。我も人化を披露するから、見てくれ。」

「お…おう。」

 ヴィネの人化か…。

 気になるな。


 ‎「سنكون أولئك الذين أجبروا على الناس الخام(我は人あらざるものなり)」


 何かを唱えた瞬間、ヴィネを黒いモヤが包む。


 そして、出てきたのはライオンではなく、人に見える悪魔だった。

 濡れているかのような黒髪。

 キリッとした赤色(ルビー)の目。

 褐色な肌。

 端正な顔立ち。

 黒いスーツ。

「かっこいい。」

(おまえ)わかってるじゃないか。」

 満足気なヴィネは頬が緩むのを抑えられないようだ。

 そこにギムレットがヴィネ用の服を持ってきた。

「ヴィネ。これを着なさい。貴方が昔着ていたものを真似して創ってみたの。」

 ヴィネは昔どんな服を着ていたのだろうか。



 2分後。

 着替えたヴィネが姿を表した。

「ファラオじゃんっ!!」

 ヴィネはファラオのような服装をしていたのだ。

 頭に乗っている金ピカは重そうだ。

「我はソロモンの壺から出てきたあと、暇だからファラオをやっていたのだ。しかし、この服装で現代(いま)を歩くにはちと厳しいな。ギムレット、申し訳ないのだが、違う服を用意してもらってはいけないだろうか。」

「わかってるわよ。ちょっと昔を思い出しただけ。」

「ギムレットって何歳なの?」

 これは気になる。

 ファラオがいた時代は結構昔だったはずだ。

 この世界のファラオはいつの時代かはわからないけど。

「るし様。女性には聞いてもいいことと悪いことがありましてよ?」

 ギムレットさんの笑顔が恐いです。

 女性に歳を聞くのはルール違反でした。

 申し訳ありませんでした!



 ヴィネの服は最終的にこうなった。

 基本黒のTシャツに白いライオンのシルエットが入っている服に、黒の長ズボン。

 うん、ヴィネとは気が合いそうだ。


 ジンとウォッカから武器を借りて、アイテムボックスに仕舞う。

 そして、風の鎧を装備して、ダンデスさんから買った大太刀を帯剣して、準備完了だ。

「ここを出たら別行動だね。」

「るしー。寂しーよー。」

「べ…別に俺は寂しくなんてねーぞ?」

「この(わっぱ)共は我に任せろ。」

「るし様。応援しております。」

「じゃあ、時間になったし、行ってくる。」

「「「「いってらっしゃい。」」」」

 私は4人に見送られて家を出た。







「さぁ!遂に始まった世界ランキング闘技大会っ!一位になるのは誰だっ!そこの君だっ!今大会の司会を務めますは心優しき運営の田中と!」

「心優しき長谷川です!何か自分で言うのは恥ずかしいですねー!」


「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」


「おー、歓声が凄いなあっ。今回の日本の大会参加者は敢えて言うなら、日本って、こんなに人口が多かったっけ?って思うほどだ!こんなに沢山のプレイヤーが参加してくれるなんて、俺は嬉しいッ!さあ、ルール説明を始めるぞぉ!今大会は予選、本戦、世界戦に別れているっ。本戦で勝ち抜いた上位五名が世界戦にいけるぞぉっ!ちなみに本戦までは日本最強を決める大会だと思ってもらってかまわないっ!」


「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」


「予選は3回行われるっ!一つの会場で1000人もの人達が戦い、生き残った5名が次に進めるわっ!人が多すぎる?大丈夫!なんたって、こんなに広いのよ?たかが1000人くらい、容易に収まるわ!あ、後は、アイテムボックスは使用可能よ!どんな手を使ってでも勝ちに行くその姿勢は評価できるからね!負け判定が下される人は体力が0になった人よっ!その人は強制的に場外に出されて、試合続行は不可になるけど、死んでもデスペナにはならないわっ!また、試合が終わる度に、生き残っている人には全回復をかけるから心配は、無用よー!!予選は明日からだから、精神統一でも何でもして、羽を休めてらっしゃい!!」


「予選カードは今から運営メールで配るぞっ!!長谷川も言っていたが、俺からも言わせてくれっ!明日を勝ち残るにはまず、羽を休めることも必要だ!君達が活躍できるのを僕達は見ているよっ!君達が輝くのは今だッ!以上ッ!大会を楽しんでくれー!!」


「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」



 こうして、開会式は終わりを告げた。


 ピロリん。

『運営からのメッセージがあります。』

 ドキドキする。

 メッセージの欄をタップしてメッセージを開く。


『明日のるし様の予選は午前10時からになっております。遅刻なさらぬようお気をつけください。』


 10時からか、多分1番最初の試合なんじゃないかと思う。

 はぁー、緊張する。

 今日は屋台によってそのまま帰ろう。

 きっと皆も屋台によって帰るだろうし。



 大会当日の広場は屋台と人で敷き詰められていた。

 さながらの東京の電車の中のようである。

 人混みを何とか避けながら屋台を覗いていると、仮面を売っている店があった。

 キャラクターの仮面を売っているような屋台じゃなくて、仮面舞踏会とかで付けるような仮面だ。

 ここでよく、呪いの仮面とかがあって、取れなくなるっていうやつが置いてあるよね。

【鑑定】入れとこ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名前 呪いの仮面

 状態 呪い

 QUA B

 ……呪われている仮面。装着すると、外れなくなる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あったぁぁぁ。

 怖いわッ!

 まさか一つ目から呪い付きだったとは。

 恐ろしい。

 取り敢えず、全部【鑑定】しておこう。



 結果、呪い付きは3個あった。

 私はもちろん呪い付きは買わない。

 チャレンジャーじゃないからね。

「おじさん、この白い仮面下さい。」

「まいどっ!」

 私が購入したのは目が隠れるような仮面だ。

 さすがに顔全部が隠れてしまうと、不審者っぽいからね。

 ジンとウォッカにもたこ焼きとクレープを買っていってあげよう。

 ギムレットはなんだろ…。

 香水かな?

 ヴィネは、唐揚げにしとこ。

 ライオンだし、肉食だろうから。




 その日、皆で屋台で買った食べ物や、ギムレット特製の料理を沢山たべて、沢山喋った。

 皆が寝静まった後、私は1人この世界に別れを告げる。

 だって、私はこの世界の人ではないから。


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