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運極さんが通る  作者: スウ
序章
3/127

スキル設定をしよう。

編集完了。2021.7.1

「スキル設定ですか?」

「はい。スキル設定と言っても、スキル取得みたいな感じですね。チュートリアルの時限定で、幅広いスキルの中から5つ取得することができます。この時以外にスキルを取得するためには、ギルドでクエストを受けてクリアし、その報酬としてスキルの書を貰うか、自らが行動しその行動によって新しいスキルを手に入れるか、です。」


 見本だと言って、何もないところからスキルの書を取り出した。パッと見、巻物だ。

 紐を解いて中身を広げると、見たことのない文字が。ミミズが這った後みたい。


「全てのプレイヤーにスキル専用ポイント150Pをお配りしてあります。任意でスキルを5つ取ることができますが、5より多くは取ることができませんので、ご了承ください」


 東堂さんから視線を外し、また画面を見る。

 いっぱいあって迷う。

 私は優柔不断だからなぁ……出来れば運が上がるようなスキルがほしい。不運はもうコリゴリだから、せめてゲームの中だけでも……。

 むむむ……。

 【火魔法】? いいねえ

 【水魔法】? いいねぇ

 【木魔法】? いいねぇ

 ………。

 だぁぁぁっ決まらん。

 ふむむむむむむ。

 はっ。

 そうだ! こういう時は頼れる大人に聞こう、東堂さんに聞こう。スキルに関して詳しいだろうし。


「私の場合どんなスキルがいいでしょうか?」

「そうですね。るし様どのステータスを重視して上げたいですか?」

「運ですね!」

「一応聞きますが、これからも運しか上げないなんてことはないですよね?」

「はは」

「……はぁ、でしたら、運に極振りする予定だそうなので、【運の底上げ】【運盗み】が良いと思います。あと【鑑定】スキルはこの世界を楽しむために必須なスキルですよ。とっておいて損はないでしょう。スキルの説明は私よりスキルをタップした方が分かりやすいですよ」

「分かりました! ありがとうございます」


 東堂さんのオススメを二つとってあとの三つは自分が気になるものにした。

 そして、これが私が取ったスキル達である。

 


【鑑定】 P10

【運の底上げ】 P20

【剣術】 P10

【時空魔法】 P80

運盗み(スティール・ラック)】 P30


 この五つの中で唯一のパッシブスキルは【運の底上げ】だ。

 

【運の底上げ】……運+10。

 

 ふふふ、この調子で運を上げていこう!

 ん?パッシブスキルって何なんだって?

 それはね、常時発動するスキルのことだよ。

 もちろんON/OFF可能 だ。


 次はアクティブスキル

 アクティブスキルとは任意のタイミングで発動させることができるスキルのことだ。


【鑑定】……見たいものの情報を知ることが出来る。(Lvに応じて情報量が変わる)

【剣術】……剣の技術が上がる。(Lvに応じて派生スキルが増えていく)

【時空魔法】……時間と空間を操ることが出来る魔法。 (Lvに応じて派生スキルが増える)


運盗み(スティール・ラック)】……戦闘時、触れた相手の運を盗み、自分に加算する。相手の運をマイナスにすることも可能。また、戦闘が終了すると解除される。


 と、まぁこんな感じになりました。

 東堂さんもいいんじゃないかって言ってくれたし、いいんじゃないでしょうか。

 ちなみに【飛行(フライ)】と【暗闇(シャットアウト)】、【神域拡張】っていうスキルもゲットしました。これは種族スキルというらしい。


飛行フライ】……空を飛べる。 (Lvに応じて滞空時間が伸びる)

暗闇(シャットアウト)】……相手の視界を奪う。(Lvに応じて視界を奪える時間が増える)


 この2つはアクティブスキル。空を飛べるのはとても楽しみだ。想像するだけでなぜだかお尻がぞわぞわしてきた。

 あと、視界を奪えるなんて卑怯な技……大好きです!


【神域拡張】……自分の周囲、半径5m以内の領域を浄化する。(自身よりLvの高い相手には無効。領域の色は自在に変えることができる) 現在の色……基本色


 種族ごとに貰えるスキルは最高で5つらしく、堕天使の場合は3つ。

 他に、ドワーフなら【筋力底上げ】や、【筋力の塊】など、筋力値を重視したスキルが2つ貰えるそう。

 話は戻すけど、【神域拡張】やばい。

 パッシブスキルだし、色変えれるし……厨二病まっしぐらである。

 状態異常=不浄だと定義されるなら、モンスターの状態異常攻撃とか効かなそうだな。

 テンションアゲアゲだよ。

 ん?

 何? 自分も状態異常攻撃を相手に使えないんじゃないのかって?

 ……。

 そ、そそんな分けないじゃんか、使えるはずだよ多分。

 これは、実験して見ないとわからないと思います、はい。


「るし様。次の説明に参りたいのですが、宜しいでしょうか?」

「はい。大丈夫です。」

「では説明させて頂きます。プレイヤーの皆様には、最初に我々運営から初期装備が渡されます。その初期装備の中に当然武器も入っているわけなのですが、武器といっても色々な武器がありますよね」


 東堂さんが水平に手を動かすと、武器のホログラムが順に現れた。


「例えば剣や槍、斧、弓などです。どの武器を使うかは人それぞれなので、るし様に自分の使いたい武器を選んで頂きたいと思います」

「初心者にオススメなのは……」

「剣ですね。この中であれば一番癖がなく使いやすいと思います」

「じゃあ剣で」

「はい。ちなみに素手でもいけるんですけど、どうですか?」

「どうですかって……どうして……あっ! おのれ、筋力値が0なのを小馬鹿にしおって!」

「はは」


 よくわかりましたね、と毒を吐いたことを微塵も隠そうとしない東堂さん。

 いっそのこと清々しいまである。


「ああそうだ。今回チュートリアルにて防具として配られる初心者装備はある意味防具ではありません。いうなれば、普通の服、ですね。耐久上昇することはないので、そのところお気を付けください」


 そうだったのかぁ。

 初心者用装備……防御力は0……皆無なんだね。そうなると、依然として私の耐久値は紙装甲同然という訳だ。

 ま、服があるだけ有難いと思おうかな。全裸で放り出されるわけでもないんだし。


「さて、最後に。この世界では、自分の体力が0になると自動的に第一の街に飛ばされます。蘇生魔法やエリクサーなどの蘇生薬はこの世界にはございませんので問答無用で第一の街に飛ばされます。また死亡時のペナルティとして、1時間の間ステータスが半分になります」


 なるほど、意外とペナルティが軽くてよかった。

 所持金が減ったり、アイテムが減ったりすることを覚悟してたけど、本当に良かったよ。

 ……そのことについてあえて触れていないだけかもしれないけど。東堂さんならありえるし。


「最も注意すべきは、この世界にはPK(プレイヤーキラー)が存在している事です。PKとは、プレイヤーキラーと呼ばれるヒールプレイヤーで、プレイヤーを殺すことによって多くの経験値が貰えるため、率先してプレイヤーを狙ってきます。ある意味モンスターより怖い存在ですね。PKはマーカーが赤になっているので会ったら逃げることをお勧めします。通常のプレイヤーは緑のマーカーになっており、NPCのマーカーは白、我々運営は黒となっております。プレイヤー同士助け合って楽しんで貰えたら幸いです。以上の事を注意して、この世界を楽しんでください」


 東堂さんの最後の説明を聞いて 楽しいチュートリアルに終わりが近づいてきたのを感じた。

 結構楽しかったな。初対面にしては珍しいぐらいの面白い掛け合いができた。

 東堂さんのコミュ力に引っ張られてできたことで、これに気が付かなかったら自分も陽キャになったと錯覚しちゃってた。おのれコミュ力お化けめ。


「東堂さん、ありがとうございました。とてもわかり易かったです! 所々失礼ポイントが発行されましたが、東堂さんが私の担当で良かったです」

「……っ」


 感謝の思いを伝えると、東堂さんが顔を伏せた。気に障るようなことは言ってないはずなんだけど……。


「どうしたんです?」

「いえ、そういう言葉をプレイヤー様からもらったことがなくて、つい嬉しくて……。皆様早くプレイしたいからと私を無視されたり罵倒されたり勝手に進行したりと……よよよ」


 なんだ……東堂さんも苦労してるんだ。

 せっかくのイケメンなんだから運営業でストレス溜めて後頭部、禿げさせないようにね。

既に十円禿げあったら気を付けてね。

 東堂さんの震える背中に憐れみの手を置くと、わっと泣き出した。ガチ泣きである。


「……これでチュートリアルは終わりです。ずびっ、ご清聴ありがどうございまじだ。ずびっ、るじ様。ずびびっ」

「はい!」


 いつの間にか現れていた半透明の扉を背にした東堂さんは鼻水をちーんとかむ。クシャクシャに丸めたティッシュをポケットに仕舞うとバッと顔を上げ、笑顔で両手を広げた。


「ようこそ! 『Live Online』へ! あなたが輝く場所がここにある。いってらっしゃいませ、るし様!」


 東堂さんの言葉に、胸が躍る。

 早く、早く、早く新しい世界に行きたいっ!

 まだ見ぬ世界へ手をかけたいっ!


「行ってきます!東堂さん!」


 重奏音と共に開かれた扉。

 視界が光で覆われ、次の瞬間には広大な景色が私を待っていた。



*****



小さな背中が光に完全に飲み込まれ、同時に、扉は金粉を残して消滅した。


「決して、自分を見失わないように。応援していますよ」


そう小さく言葉をこぼした東堂は、踵を返す。

指を鳴らして辺り一帯の景色を暗転させ、運営室に戻っていった。


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