防具を買おう
投稿遅くなってしまい、すみません。
ガチャ
「こんにちわー。」
「この声はるしさんか。来るのがちとばかしはやくはねぇか?5日も経ってねぇだろ。」
「ははは。…って何でダンデスさんがいるんですか!?ここ、防具屋さんですよ?」
そう、私は今、防具屋さんにいる。
初心者装備はボロボロだし、軍服に頼ってばかりでは行けないと思ったからもあるけど、昨日買い忘れた防具を買うためなのだ。
武器屋さんに来た訳では無いのに、何故かダンデスさんがいる。
なんでだろ。
「おいっ兄貴!人の店で勝手に接客すんな。それと、兄貴の店が繁盛しねぇからってちょくちょくこっちに遊びにこなくていいんだよ!」
奥からダンデスと瓜二つな人が出てきた。
ずんぐりむっくりだ。
「お客さん、いらっしゃい。兄貴、奥に戻ってろ。」
「はぁ、分かったよ。じゃ、るしさんまたな。てか、ジンはどこいったんだよ。今度合わせてくれよな!」
そう言って、ダンデスさんはすごすごと奥の方に戻っていった。
ジンはここにいるよー。
進化して可愛くなったから気が付かないのも当然か。
ダンデスさんとそっくりな人はもしかして兄弟なのかな?
仲悪そうだったけど…。
「あの…お2人は兄弟なのですか?」
「あぁ。俺が弟でさっきのやつが兄貴だ。アンタは兄貴の知り合いなのか?」
「はい。以前武器をダンデスさんに買ってもらいまして。私はるしって言います。」
「…そうだったのか。兄貴の武器を買ってくれてありがとな。俺はダンテス。兄貴はダンデスだから、よく間違えられるんだよ。」
ダンテスさんはダンデスさんのことを嫌ってはいないようだ。
それにしても、顔も体型も名前も似てるとは…。
さぞかし苦労なされてきたのでしょう。
「で、るしさん。アンタは何が欲しいんだ?」
そうだった。
2人とも似すぎてて、防具のことをすっかり忘れてた。
若年性認知症…老化が始まったのかな?
「えと、私とこの2人、ジンとウォッカの防具が欲しいんです。安いのをお願いします。ちなみに予算は金貨20枚で。」
ここで全財産の約5分の1を使うことにする。
痛い目にあったからね。
3人で相談した結果、少し値が張る防具を買うことにしたのだ。
「そこのチビさん2人も戦うのか?…無理すんなよ。防具に関してこれがいい、とか、これに拘っている、ということはあるか?」
「ないー。」
「んー、動きやすいのを頼む。」
「私も特にはないです。あっ…私、防御力0なので、0でも装備出来る防具をお願いします。」
「0か…。珍しいな。だけどよ、るしさん知ってるか?武器には筋力(STR)がいるが、防具には必要ないんだぜ?ちょっと待ってろ。」
「それは、初耳です。」
いそいそと奥に行くダンテスさん。
うん、ダンデスさんと歩き方も同じだ。
中身もいい人そうだ。
改めて店内を見渡す。
壁に飾られた鎧、マント、鎖帷子、籠手、グリーヴ、ヘルムなどがキラキラ輝いているように見える。
ダンデスさんと同じでちゃんと手入れしているんだな。
【鑑定】を使わなくても品質が高いってことがわかる。
ジンとウォッカも目をキラキラ輝かせて、鎧一式が飾ってある1角を眺めている。
目から星が出てきそうな輝きだ。
「2人とも、楽しそうだね。」
「うん。キラキラ眺めるの好きー。」
「俺も好きだ。一日中眺めてられるな。」
「待たせたな。」
防具を両手いっぱいに抱えたダンテスさんがヨロヨロと奥からやって来た。
ガチャッとカウンターの上に防具を並べる。
大きいのは私のだろう。
「るしさんに持ってきたのは風の鎧一式だ。これは装備者の防御力を上げると同時に、俊敏力も少し上がる優れものだ。」
ダンテスさんから渡された風の鎧は、基本白をベースに黄緑色の滑らかな線が美しい模様を描いている。
【鑑定】してみよう。
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種類 一式
名前 風の鎧
VIT 60
SPD 5
QUA A
……スピードバードの羽が使われており、鎧一式の中でも非常に軽いものとなっている。 ☆2
お値段…金貨7枚。
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軽い一式だけあって、お値段が貼っていますね。
「まぁ、軽いからな。仕方ねぇよ。」
…。
「るしさん、装備してみな。ここに鏡置いてあるしよ。」
なら、お言葉に甘えさせて貰おう。
ピロリん。
『風の鎧一式を装備しました。』
ダンテスさんが持ってきた大きな鏡に映る自分を見て、思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
顔をすべて覆うヘルムに、大きな鎧。
この装備にいつもと違う武器を使ったなら、顔割れもしないし、大会の時に研究されにくいだろう。
「この装備なら、顔割れしないぜ?」
…。
「顔に出てましたか。」
「おう。」
なんでこの兄弟は人の心を読むのが上手いのだ?
エッチ!
「次はジンだな。」
「あい。」
ジンはダンテスさんから鎖帷子と、グリーヴ、籠手を貰っていた。
「コレは…まぁ、着てみたらわかる。」
ニヤニヤしながら着てみろと促すダンテスさん。
ジンはよいしょよいしょと装備する。
「なんか、力が湧いてくる!」
「だろ?これらは力の鎖帷子、力のグリーヴ、力の篭手、力の胸当てっていうんだ。装備者の攻撃力を上げてくれる優れものだぜ?」
なるほど。
装備者の力を上げるのか…。
いいね!
一応【鑑定】しとこう。
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種類 鎖帷子
名前 力の鎖帷子
VIT 10
ATK 10
QUA A
……初心者が次なる段階に進む時に購入する防具。
装備すると攻撃力も上がるから優れものだ。☆2
お値段…金貨1枚と銀貨4枚。
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種類 グリーヴ
名前 力のグリーヴ
VIT 10
ATK 9
QUA A
…☆2
お値段…金貨1枚と銀貨4枚。
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種類 篭手
名前 力の篭手
VIT 12
ATK 8
QUA A
…☆2
お値段…金貨1枚と銀貨4枚。
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種類 胸あて
名前 力の胸当て
VIT 10
ATK 9
QUA A
…☆2
お値段…金貨1枚と銀貨4枚。
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いいものもらったね!
これで私とジン合わせて、金貨12枚と銀貨6枚。
うん、お金の方はまだ大丈夫そうだね。
「最後はウォッカだ。」
「おう。」
「ウォッカには、動きやすさを重視した防具だ。これも着てみたら、性能をより実感出来るぞ。」
ウォッカは、ジンと同様、鎖帷子、グリーヴ、籠手、胸当てを貰った。
「うおっ!軽いから動きやすいぞ!これはすげぇ!」
「そうか、なら俺も選んだかいがあったってもんだ。だが、気をつけろよ?動きやすい代わりに、少し防御力が低くなってるからな。」
「おう!任しとけ!」
ダンテスさんが、はしゃいでいるウォッカを見て、嬉しそうに目を細めている。
【鑑定】をかけてみよう。
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種類 鎖帷子
名前 羽の鎖帷子
VIT 6
SPD 10
QUA A
……羽妖精の力を借りて作られた装備。そのため、非常に軽いため、動きやすいのだが、代わりに防御力が低いので、注意が必要だ。初心者が次の段階に進む時に購入する防具。☆2
お値段…金貨1枚と銀貨3枚。
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種類 グリーヴ
名前 羽のグリーヴ
VIT 6
SPD 8
QUA A
…☆2
お値段…金貨1枚と銀貨3枚。
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種類 篭手
名前 羽の篭手
VIT 8
SPD 6
QUA A
…☆2
お値段…金貨1枚と銀貨3枚。
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種類 胸当て
名前 風の胸当て
VIT 7
SPD 5
QUA A
…☆2
お値段…金貨1枚と銀貨3枚。
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全部で金貨5枚と銀貨2枚。
3人の総額が金貨17枚と銀貨8枚。
ふぅ、予算内に収めることが出来てよかった。
ダンテスさんの選ぶ防具に間違いはなし!
「今日はありがとうございました。」
「いやいや、こっちこそ、買ってくれてありがとな。帰り際にでも、兄貴に顔出してやってくれ。」
「はい!」
ダンテスさんはポリポリと頬を掻きながら、奥に戻って行った。
いい人だったなぁ。
これで大会に向けての準備は整ったわけだ。
軍服は、ヤバいってなる時までは暫くの間、封印だ。
「帰ろっか。」
「いや、まだ準備は整ってないだろ?」
「うひゃぁっ!」
背後からいきなり声がかかったのでびっくりして変な声を出してしまった。
この悪質な現れ方は…。
「…この現れ方はダンデスさんの方ですね?心臓止まるかと思いました!!しかも、人の心を勝手に覗かないでください。てか、なんで大会があるって知ってるんですか?」
「よく俺ってわかったな。心の声はるしさんの顔に大きく書いてあるから仕方ねぇだろ?で、なんで大会があるって知ってるかというと、普通に街の掲示板に、アドラーの世界チャンピオンを決める大会があるって書いてある紙が貼ってあったからだよ。この街の皆全員知ってるぜ?」
そうだったのか…。
でも何で私がアドラーって分かったんだろ。
1回も言ってないのに。
「それはな、まぁ、なんだ?アドラーの雰囲気ってやつがるしさんから出てるんだよ。」
ジトっとした目をダンデスさんに向ける。
「あー。心を読むな、だろ?分かってるって。」
分かってるならそれで宜しい。
だけど、何の用だろう?
「それはな、るしさんも大会に出るだろ?だから、予備の剣が必要になるかと思ってね。」
「…予備の剣ですか。確かに必要ですね。」
もう突っ込まないでおこう。
疲れるだけだね。
それにしても、予備の剣…か。
自分の本来の武器も隠せるし、丁度大太刀も使いまくってボロボロになってたし一石二鳥だね。
「そうとなればまずは俺の店に行こう。すごそこだしな。」
すぐそこ?それはどういう…?
ダンデスさんは自分のズボンのポケットから鍵を取り出し、この店の鍵穴に差し込んだ。
ガチャ
「着いたぞ。」
「え?」
店の扉を開けると、そこは外ではなく、ダンデスさんのお店だった。
「えっ…えっ!?」
私の驚いた顔を見て満足そうな笑顔を浮かべるダンデスさん。
もしかして、空間を繋げることが出来る鍵なのかな?
「その通りだ。まぁ、この鍵だとせいぜい繋げてられるのは10分といったところかな。」
「おい!兄貴、勝手に店繋げてんじゃねぇ!お客さんが入ってこれねぇだろうが!俺の店の利益の害はほとんどが兄貴なんだよっ。」
「すまん。今日は勘弁してくれ。るしさん、実はな、この鍵で店を繋げると、外から人が入ってこれなくなるんだ。扉を開けても、中は空き地に見えてしまうようになってるんだ。これは俺が作ったんだぜ?」
凄いです…。
空間を繋げることが出来る鍵を作れるって、結構凄いことなんじゃないでしょうか?
「だろ?今日はどんな武器を買ってくんだ?」
「大太刀と、双剣と、大鎌をお願いします。あ…その、買って貰った武器を早々に壊してしまってすみません。」
この三つはすべて私のだ。
これらを使い分けて予選を勝ち残っていこうと思ってる。
「ん?あぁ、いいやい。そいつもアンタに使われて良かったと思ってるはずだぜ?おし、使い方の異なる武器3つだな。じゃあ、少し待っててくれ。」
この前来た時にはなかった武器が壁に飾ってあった。
他のよりは品質が悪そうなのだが、いい線をいっている武器だった。
「お、それはな、アルザスが打った武器なんだよ。」
いつの間にか帰ってきていたダンデスさん。
それよりも、アルザスがもうこんなにも打てるようになってたとは。
「だが、まだ品質はD+といったところだな。まぁ、そこそこいい線いってるから、飾ってやったんだよ。」
さいですか。
お弟子さん思いなんですね。
「奥から持ってきたのは、大太刀の「風切り」、双剣の「風双剣」、大鎌の「斬風」だ。この3つは☆2で、全てにSPDを10加算する効果が付いている。全部で金貨6枚だが、どうだ?」
SPDに10加算ですか。
0の私にとっては美味しい効果ですね。
是非ともお買い上げを。
「じゃあ、それでお願いします。」
「まいどっ。」
私はお金をカウンターにおいた。
「ひーふーみー……ん?金貨2枚多くないか?」
「ふっ、釣りはいらねーぜ。(前回買ってもらったお礼です。)」
ダンデスさんは察してくれたようで、それ以上は何も言わずにお会計をしてくれた。
武器の3つはアイテムボックスにしまっておく。
「今日はありがとうございました。また今度、武器が危なくなったら来ます。」
「おう、またのご利用、お待ちしてるぜ。」
扉を開けると、そこはギルドだった。
…。
もう少し違う場所にしてくれると、助かります。
今日は、マッドフラワーの討伐クエストを受けて、家に帰ろう。




