ギムレットの料理
今日は日曜、学校がないからログインしっぱなしだぜ!
そして、サービス開始から1週間目の日だ。
ピロリん。
『運営からのメールが2件あります。』
『ギルドからのメールが1件あります。』
ん?
待て待て…
お…おちついて、運営さんからのメールから開こう。
『サービス開始から1週間が経過しましたので、今からちょうど1週間後、世界ランキング闘技大会を行います。
世界ランキング闘技大会とは、文字どおり、世界各国の人達と戦い、競う大会で、ソロ戦となっております。
今回の大会は全員参加となっておりますが、出場できない場合は運営へとお問い合わせください。
尚、1〜10位に見事入賞した人には、称号と金の宝箱、その他の豪華報酬が譲渡されます。
この大会では、100位からの対戦が、リアルでも生放送で報道される予定なので、是非是非頑張ってください。
大会日付
12月10日 太陽の日(日曜日)
開始日は大会二日前にお知らせいたします。
今回の参加者は全世界累計約3億人となっております。
サービス開始からまだ1週間ほどしか経ってはいないのに、これだけの人々がプレイなさっている事に、我々運営は涙を抑えきれません。
最後に、貴方が輝ける場所がある。
それは本当のことなのだと、リアルでも実感出来る日が近づいてきていることをお忘れなきように。』
……。
暫く呆然としてしまった。
まさか、まさかの世界ランキング闘技大会。
リアルでも生放送される…。
『Live Online』はそんなにすごいところまで行ったのか…。
これは、気合を入れ直して頑張るしかない。
ソロ戦ということは、ジンとウォッカを連れてはいけないということだね…。
大会当日には武器貸してもらおう。
なんとしても100位以内に入ってみせる!!
うぉぉぉぉぉ!燃えてきたァ。
この調子で2件目を見ようじゃないか!
『現在の全プレイヤーのLvの推移↓
Lv7 100人
Lv6 1500人
Lv5 9850人
:
:
:
。 』
…。
私、いつの間にかトッププレイヤーの仲間入りしてた。
そんなに、激しくは行ってなかったと思うんだけど。
最後にギルドからのメール。
何も悪いことは…したけど、警告とかかなぁ。
『ギルド総討伐数1位~50位↓
1位 ウクレル
2位 るし
3位 ジンドレ
:
:
:
:
。』
おー2位だ。
確かにゴブリンとグリーンワームたくさん倒したもんね。
この結果になるのも頷けるよ。
メールを全部見終わったことだし、昨日予定していた装備チェックに入ろう。
◈黒龍の軍服 一式 『装備しますか?』
装備する、をポチッと押す。
瞬間に初心者装備が漆黒の軍服に変わった。
ギムレットがサササッと鏡を用意してきた。
…どうやって…とは聞かないでおこう。
黒竜の軍服は漆黒に、染まっており、あちらこちらに金の装飾が施されている。
軍帽も着いてる!あ、王冠は自動的にアイテムボックスに収納されたみたい。
軍帽…かっこいい。
さらに、着心地が良い。
【鑑定】してみよう。
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種類 一式
名前 黒龍の軍服
ATK 300
VIT(DEF) 300
STR 350
SPD 300
DEX 350
MND 300
INT 300
LUK 350
パッシブスキル
・王の威圧 (自分よりMNDが低い者を常に怯ませる。)
・状態異常無効化 (どんな状態異常に陥っても無効化する)
・生命の増幅 (HP、MPの限界が増える。)
・生命の自動回復 (HP、MPが1秒間に20ずつ回復する。)
……最強と言われる黒龍の素材をふんだんに使ってあるため、自身の性能が底上げされている。
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序盤からでも最後まで使えるチート装備、やって来ましたね。これでステータスが0のやつがなくなったよ。よかったよかった。
これに大太刀を装備して、完成だね。
ブラッディ・ローズはウォッカにプレゼントします。
流石に手ぶらという訳には行かないからね。
1週間後に世界ランキング闘技大会があるということで、Lv上げを行いたいと思います。
今日の目標は、全員Lvを一つは上げる、という事だ。
成長期に入りそうなのはウォッカだね。
さぁ、楽しい狩りの時間だよー!
おっと、狩りに行く前にジンから双剣を貸してもらおう。
家から出て空を飛びながから、モンスターを探す。
「Ga!」
「Gehi!」
ゴブリンという種族は目がいいのかな?
すぐに徘徊しているモンスターを探し出してくれる…。
あそこにいるのはスライムの集団だ。
ざっと10体ほどかな。
さぁ、殲滅戦だ、手早く倒すとしよう。
ピロリん。
『スキル【双剣術】を習得しました。』
『“ウォッカ”のLvが上がりました。』
『“ウォッカ”がスキル【大鎌術】を取得しました。』
お、スキル取得!
ウォッカのLvも上がったね、成長期に入ったねぇ。
それにしても、◈黒龍の軍服 一式が高性能過ぎるッ!!
スライムがまるで空気を切っているかのようにスパスパ切れるよ。
…この防具は強敵が現れた時、闘技大会の時に着よう。
それまでは、少しの間だけど封印だ。
シュイン
『初心者装備を装備しました。』
いやぁ、初心者装備は肌に馴染むね。
愛着が湧いて捨てるに捨てきれないよ。
おし、このまま狩りを続行だ!
空を飛んで、モンスターを探す。
奇襲せずに、目の前に降り立って正々堂々(?)と戦いを挑む。
また空を飛んで周りにいるモンスターを探す。
正面から戦いを挑む。
それを何度も繰り返した。
3時間後、スライムの酸とグリーンワームのベトベトな返り血を浴び続け…。
ピロリん。
『“ウォッカ”のLvが上がりました。』
これで、ウォッカのLvは5だ。
キリがいいし、ここで一旦我が家に帰ろうと思う。
ベトベトしながらの戦闘はさすがにきつい。
精神的にも体力的にもだ。
ベトベトしている2人を手にかけて、家のお風呂(湖)に入ろう!!
さっぱりしたいよ。
「ギムレットただいまーー!」
バシャン。
そのままお風呂(湖)にダイブしました。
一回やってみたかったんです。
銭湯でやると、怒られるので…ホント、すいません。
水面から顔を出すと、目の前にギムレット。
「お帰りなさいませ、るし様。」
「えと…何でギムレットも入ってるの?」
「ふふふ。」
「……。」
察しろ…という顔でこっちを見ないでよ。
正直怖いッス。
察することは出来ないのだよ、なぜなら、私はKY(空気読めない人)だからね。
…ギムレットさんが怖いので、今回は空気を読んで頷いておく。
それにしても、なんか寒くなってきたや。
服も綺麗になったし、上がろ。
湖って、確か水温が丁度いいように設定されてたはずなんだけど…。
ギムレットの用意したソファに座ってると、何かがフヨフヨ飛んでいるのが視界に入った。
「ぎ…ギムレット…ゆ…ゆゆ幽霊が……。」
いそいで湖に入ったから気が付かなかったけど、まわりにフヨフヨと半透明な水色の物体が浮いている。
一見、スライムのように見えるのだが、浮いているとなれば違うのだろう。
蜃気楼みたいにユラユラ揺れているから……お…お化けなんじゃないのだろうか。
「アレらは私の配下にいる妖精の雛のような子達です。この子達は スピリット と言いまして、この家を住みやすくなるように手伝ってもらっているのです。今はるし様が帰っていらっしゃったので、休憩させているところです。」
どうやって、スピリット達を呼んだのか、を言わないのが実にギムレットらしい。
妖しく微笑んでいるよ。
詮索はしないでおこうね。
こわいこわい。
フヨフヨとスピリット達が私の周りに集まってきた。
「可愛いなぁ。」
ツンツンとつつくと、フヨフヨが離れていく。
急に背中がゾクリとした。
周りに集まっていたフヨフヨは慌てた様子で散っていく。
ゆっくりと体を後ろに向ける。
殺気の正体はギムレットでした。
いつの間に湖から上がったのさ。
顔が般若のように変形してるよ?
「ぎ…ギムレットも可愛いなぁ。家に帰ってくるとBGMが聞こえて耳が幸せだなぁ。」
と言うと、蕩けるような笑顔で地面から花を咲かせていた。
チョロいな。
でも、笑顔だけで地面から花を咲かせるっていうのは凄いことだと思う。
くわばら くわばら。
「ちょうどお昼ですし、お昼ご飯を食べましょう。」
また世界樹の果実ですか?
いや、それはちょっと…気が引けるというか。
「安心してくださいませ。今回は少し勉強をしてきましたので、ヤキソバというものを創ります。」
「焼きそばっ!? ジュルり。」
ジンとウォッカもヤキソバという言葉に大きく反応する。
「Gehi!!」
「Ga!!」
「ふふふ。」
ギムレットは何処からか取り出したピンクのフリフリエプロンを着てBGMを歌いながら、これまた何処からか取り出したフライパンを空中で振っている。
火…ついてるの?
ジュゥゥゥゥ
あ…ついてるみたい。
どうやって空中で振っているフライパンに火を通して焼きそばを作っているのだろうか?
てか、まず焼きそばの素材をどこから持ってきたの?
「もしかしてなんだけどさ、ギムレットはアイテムボックスを持ってるの?」
「はい!アイテムボックスって便利ですよね。いろんなものを創って入れてるんです!」
なるほど。
つくって…ということは、多分ギムレットは【創造】みたいなスキルを持っているんじゃないだろうか。
そういうスキルがあるならば是非私も欲しい!!
香ばしい焼きそばの匂いが漂ってきた。
うん、匂いは間違いなく、焼きそばだね。
匂いは…ね?
「いい匂いだね。」
「ありがとうございます。もう少しで完成ですので、少々お待ちください。」
ギムレットはアイテムボックスから取り出したであろう何か赤いものを焼きそばに振りかけていた。
辛そうですね。
すごく辛そうです。
けど、代わりにいい匂いがさらに増したね。
「出来上がりました!残さず食べてくださいね?るし様。」
「うん。ありがと。」
私とジン、ウォッカ、スピリット達の分、自分の分を皿に盛り付け、フォークと一緒に配る。
このお皿とフォークも創ったのだろうか?
便利なスキルだね。
「いただきます。」
「「GehiGa!!」」
ジンとウォッカは私の真似をして、合唱したあと、我先にと赤い焼きそばを口に入れる。
……。
2人はフリーズした。
「ジン!?ウォッカ!?」
「あらあらどうしました?ジン、ウォッカ?」
ポロポロと涙を流し始めた。
「えっ…えっ!?」
「泣くほど美味しいのですか?それは嬉しい限りです。」
……。
そうなの?
私も食べるべきだよね。
震える手でフォークを握り、赤い焼きそばをクルクルと巻き、恐る恐る口に入れる。
……ツツ!?
瞬間に口内を火で炙られるかのような刺激が襲ってきた。
何回も何回も口を抉るかのような鋭い衝撃。
永遠とも思えるかのような一瞬が過ぎ去ったあと、普通の優しく、懐かしい焼きそばの味が口内を満たした。
涙は出なかったけど、この赤い焼きそばは危ないわ。
食べ物のアメとムチだね。
恐ろしい。
2人は初めての焼きそばだったから泣いたのかな?
あの地獄のような刺激が、焼きそばを口に入れる度に襲ってくるのだと思うと、味覚がおかしくなるし、震えが止まらなくなるよ。
「ぎ…ギムレット?みんなの分の赤いのをとってくれないかな?さすがに…このままだとキツイよ。」
「…分かりました。それでるし様が全て食べて下さるのならば。」
ギムレットはパチンと指を鳴らし、焼きそばから赤いものを取り除いた。
しゅん とした顔でこっちを向いている。
「ごめんね。ギムレット。せっかく用意してくれたものだったのに。でも、こったの方がギムレットの味を感じられて、すごく美味しいよ?」
「そうですか?ふふふ。なら、よかったです!」
赤いのを無くすと本当に美味しい。
これなら屋台にも出せるかもね。
「「Ga!!」」
おかわり!とお皿をギムレットに出す、ジンとウォッカ。
「ふふふ。いっぱい食べてくださいね。」
ギムレットも嬉しそうだ。
仲が深まることはいい事だね。
さて、ご飯を食べ終えたことだし、お昼の狩りに行きますか。




