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運極さんが通る  作者: スウ
闇オークション編
103/127

Cランク昇格試験とゲイ・ボルグ君



 確か今日はCランク昇格試験の日だ。チラシによると今日の10時までにギルドカウンターに申請を出しておかなくてはいけないらしい、がそれは勿論5日前に済ませてあるので問題は無い。

 あ、テイムモンスターであるジン達は置いてきた。テイムモンスターの参加は原則禁止らしいからね。


 徐々にプレイヤーや、NPCが集まり出した。ギルド内はもうぎゅうぎゅう詰めである。だが、ぎゅうぎゅう詰めな中で1箇所だけポツンと穴が空いている場所がある。

 そう、何を隠そう私の周りだ。まるで腫れ物を扱うかのように避けられているのは気のせいだろうか。気のせいに違いない。気にしたら負けだ。



 ギルドカウンターから大柄な男がやって来た。きっとあの人がギルドマスターだろう。そんなオーラがビンビンしてるからね。


「皆、よく集まったな。私はこのギルドのマスター、マキシムだ。覚えといてくれると助かる」


 名前と体格のギャップがない。素晴らしいと思います。


「ここに集まってもらったのは皆も分かっていると思うが、Cランク昇格試験を行うためである。今回、皆がCランクに昇格するための条件は、1人オーク30体の討伐だ。奴らはゴブリン並に繁殖力が高い。オマケに強いと来た。しかも最近はこの帝国周辺にも姿を現し、物資の強奪を行って我らが帝国に不利益をもたらせている。1体見たら30体はいると思え。ボヤボヤしてるとこっちが殺られる。だから、見つけたらすぐに殺せ。仲間を呼ばれるかもしれないからな。おっと、この試験で大事なことを言うのを忘れていたよ。2人1組で60体のオークを相手にしろ。決して3人では駄目だ。かと言って1人でもダメだ。パーティーを組む基本はまず2人から、と言うだろ?討伐前に必ずここの受付で申請をしてから行ってくれ。申請していないパーティーでオークを狩った場合は失格となる。討伐期限は2日だ。分かったな?」

「「「おぉ!!」」」


 え、パーティー組むの?コミュ障の私にはキツいです。ほら、私を避けて段々とパーティーが出来上がりつつある。

 悲しげに他のパーティーを見ていると、肩にポンと手が置かれた。


「るし!僕とパーティー組もう!」


 ボッチの私に声を掛けてくれたのはヴェティだった。まさかヴェティもまだDランクだとは思わなかったよ。Aランクとか先に行っているのかと思ってた。仲間がいてくれるだけで私は元気百倍だから、ヴェティがDランクに留まっていてくれて嬉しいな。


「うん。こちらこそ!ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

「それなんか違う気がするけど…こっちこそ宜しく!」


 受付に申請した後、オーク狩りに出かけた。

 帝国の外には来た時と同じく「ゾンビ」が徘徊している。そこに混じって、「オーク」と思われるモンスターも徘徊していた。その数、「ゾンビ」の倍は軽くある。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「Gobbb!!!」


 こちらが手を出さなければ「オーク」は「ゾンビ」を襲い、喰らい始める。…共食いだ。もしや、【捕食者】というスキルがあるのでは?

【鑑定】さんの出番だ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 種族 オーク ☆4

 Lv 19

 HP 550/550 MP400/400

 パッシブスキル

 ・飢餓

 ・捕食者

 アクティブスキル

 ・土魔法(土属性の魔法)

 ・身体強化

 ・剣術

 ・俊敏力上(スピードアップ)

 ・筋力上(ステアアップ)


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ありましたね【捕食者】。

 食べれば食べるだけ強くなるという嫌なスキルです。


「じゃあ、僕のアレで一気に片付けようか?」

「いや、近くに他のプレイヤーもいるし、コツコツ行ったほうがいいかも」

「それもそうだね。下手にPKしたらマーカーが赤になっちゃうし」


 という訳で、各自武器を構える。


「ディフェンスアウト、エンチェントポイズン」


 ヴェティは己の杖に毒を付与している。「オーク」をそれで殴るんだな…。杖は殴る道具じゃないと思うんだけど。ま、プレイスタイルは人それぞれだって言うから何も言わないけど。それでも気になる。


「さ、行くよ!どっちが先に30体倒すか勝負ね!」

「勝つのは私だがな」

「僕だよ!」


「オーク」を「ゾンビ」ごと満月(みちづき)で斬る。「ゾンビ」は【神域拡張】と今の攻撃によって金色の粉に変わるが、「オーク」はそう上手くは消えてくれないらしい。私の殺気を感じたのか、刃の進行方向に飛び、傷を浅くしたようだ。随分身軽な「オーク」だ。油断は出来ないな。


「Gobooooo!!」


 いきなり怒鳴ったかと思うと、「オーク」が太い手を地面につけた。すると、地面の土が「オーク」の手の平に集まり、一つの剣と化した。

 多分【土魔法】だろう。そういう使い方もあるのなら、是非とも取得したいものだ。

俊敏力上(スピードアップ)】を使ったのか、一気に間合いを詰めてきた。


 ギリギリッ

「んな!?」


 土で作られた剣ならば容易に満月(みちづき)で折れると踏んでいたが、折れるどころか刃毀れ一つしない。

【土魔法】はそのLvでここまでの強度を誇ることは出来るのだろうか。満月(みちづき)に耐えれる程に強化出来るのか?

 剣を受け流し、「オーク」に足をかける。バランスを崩した「オーク」に満月(みちづき)を振り下ろそうとするが、【土魔法】によって作られた盾に行く手を阻まれた。


「チッ。そぉい!」


 再度 満月(みちづき)を振り下ろすが、盾はビクともしない。やはりこれは【無敵】か【鋼鉄】、【防御力上】など、どれかしらのスキルを【土魔法】で作った盾に付与しているに違いない。だが、【鑑定】した際にそんなスキルは見当たらなかった。


「Gobbbb!!」


 立ち上がった「オーク」は、盾と剣を構え、突進してきた。

 もう1度【鑑定】をしたいところだが、目の前の「オーク」から目が離せない。


「シャットアウト!」


 敵である私の姿が認知出来なくなった「オーク」は、ヒクヒクと鼻を動かし、とその場をさまよう。

 奴の視界が塞がれているうちに距離をとり、【鑑定】を使う。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 種族 ハイオーク:伍長 ☆5

 Lv 20

 HP 550/550 MP400/400

 パッシブスキル

 ・飢餓

 ・猛食者(食べれば食べるだけ強く、そして、食べた者のスキルを奪う)

 ・威圧

 アクティブスキル

 ・土魔法(土属性の魔法)

 ・身体強化

 ・剣術

 ・俊敏力上(スピードアップ)

 ・筋力上(ステアアップ)

 ・無敵付与(無敵状態を付与することが出来る)


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 …存在進化してるよ。

【威圧】【無敵付与】【猛食者】が増えている。

 あれ?スキル【捕食者】なかったっけ?まさか、スキルも進化したんじゃ…。もしそうだったら私のスキルも進化するってことだよね?ふっ、楽しみだぜ。


「ごっ!?」


 腹に鈍い痛みが走り、身体が空を舞った。視界を自分が元居た位置に走らせると、そこにはあの「オーク」がいた。

 空中で大勢を整え、着地する。

 あの「オーク」は【暗闇(シャットアウト)】によって視界が塞がれているはずだ。解けたということはありえない。…早すぎる。


「Gobbboooo!!!」


「オーク」は鼻をひくつかせ、私がいる方にのしのしと近づいてきた。【暗闇(シャットアウト)】は、視界を塞ぐが、嗅覚は塞がない。奴は匂いを辿って私に攻撃を入れて来たんだ。これは間違いない。視界が暗くなってからは時折鼻で息を大きく吸っているのを何度か捉えたから。


【鑑定】も終わったことだし、そろそろ止めだ。

【残月】を使い、攻撃を放つ。

 が、それは新しく作られた土の防具によって防がれた。

 むぅ…此奴、なかなか強い。流石【無敵】だ。

 だが、その強さは神槍(ゲイ・ボルグ)の前では発揮出来まい!

 アイテムボックスから神槍(ゲイ・ボルグ)を取り出し、「オーク」に向かって投げる。勿論、【猛毒付与】もしておきました。


「Gob!?boooo………」


 我らが神槍(ゲイ・ボルグ)に貫けないものなぞありません。

 降りそそぐ兵器に「オーク」は盾を構えるが、なす術なく貫かれ、ゆっくりと金色の粉へと変わっていった。


 ピロリん。

『スキル【大槍術】を習得しました』


 お、やっと来ましたな。神槍(ゲイ・ボルグ)はちょこちょこしか使わなかったからね。積み重なったやつがここに来て覚醒した感じだね。

 これであと29体。

 神槍(ゲイ・ボルグ)必須案件だね。


「宜しくね、ゲイ・ボルグ」

((おう。任しときぃ、主))

「うん!………うん?」


 今、声が聞こえた気がするんだけども、気のせいかな?…お化け?


「誰かいますか?」

((誰もおらんと思うんやけど、警戒は大事やぞ?))

「うん。………うん?」


 あ、疲れてるのかな。


((それは大変や。主、休みを取ることは人にとっては必要なことやで。勿論、武器もメンテナンスに出さなければいけないんやけどな))

「もしかして、ゲイ・ボルグ?」

((せや。やっと言葉を交わせるようになったなぁ))


 私、神槍(ゲイ・ボルグ)と喋ってるの?…ほほぅ。そうなんだ。凄い。口がないのにどうやって喋っているのかとても気になるところだ。


((テレパシーと同じだと思ってくれてええで?))


 …君、心を読んでるね?何か複雑な気分だ。きっとゲイ・ボルグ君は知能武器(インテリウェポン)ってやつだね。喋るし、知能ありそうだし、変な喋り方だし。

 穴が開きそうなほど、神槍(ゲイ・ボルグ)を見つめる。

 目は何処に付いているんだ。


((…そこは気にせんでええんや。主、オーク討伐を続けなくてええの?))


 あ、そうだった。早くしないとヴェティに負けちゃう!

 慌ててゲイ・ボルグ君を近くを通った「オーク」に向かって投げつける。


((投げる時に一声欲しいんやけどなぁ…。せやないと、心の臓がキュッと来るわぁ))


 いや、心臓はないでしょうに。でも、投げる時は一声かけなくちゃいけないね。今度から気を付けるよ。


((分かってくれたらええんよ。流石主やな))


 お、またまた「オーク」がいる!

 口を動かす前に身体が動いていた。

 ゲイ・ボルグ君が30本に分かれて飛んでいく。


「あ!投げたよ!」

((遅いわ!))


 ピロリん。

『フレンド“ヴェティヴィエルズ”さんからメールが1件届いています』


 もう終わったとか?まっさかぁ…そんなことないでしょ。


『おーい、こっちは終わったよ?門のところで待ってるからねー!僕の勝ちだね。ふっふっふっ!』


 は、早すぎるよっ!私はまだ3体しか倒してないのに。くっ…急がなければっ!!


((主、彼処に10体ほど固まっておるで?))

「ほんまや!」


 おっと、つい口調が移ってしまったようだ。気をつけなければ。


((主、はよせんと、盗られるんとちゃう?))


 せやな。ほな行こか!……あっ。


((ニヤリ))


 駄目だ。調子狂うなぁ。

 ゲイ・ボルグ君を拾い、「オーク」の集団に向かって走り出す。土煙を上げて走ってくる私に気がついたのか、次々と【土魔法】で武器を作り出したのが見えた。


((あんなチンケなもんでワイらを止められるわけないわ!!))

「そこのオーク!!首を出せぇ!!」

「「Gobbboooo!!!!!」」

 










「あ!るし、遅かったね」

「うん、最初に出会ったオークが進化しちゃってさ。ホント焦ったよ…」


 ギルドの受付に行き、ギルドカードを出す。


「はい、確かに、オーク討伐30体。るし様、これにてCランク昇格試験を合格と致します。おめでとうございます!」


 受付嬢さんが、銅褐色のギルドカードを渡してくれた。あまり色の違いが分からないが、Cランクの次はBランクの銀色だ。くぅ〜かっこいい!!


「今日は久しぶりにユニオンハウスに顔を出すことにするよ。ギムレットのご飯、楽しみだなぁ」

「じゃあ、二人の合格祝いに豪華なものを頼もう!」

「それいいな。あ、るしが頼んでくれると助かるな。ギムレットは…なんて言うか苦手だから。作り笑顔っていうのかな?あれがどうも苦手でさ」


 ギムレットの作り笑顔…?はっ、まさかっ!疲れているのに働いているとか?それは大変だ。休んで頂かないと。


「るし、僕は今からストーリークエスト進めに行くから、ここで一旦お別れだ。ご飯はいつもの時間でいい?」

「うん。ヴェティ、お務め頑張ってきてね」

「おう!なんか違う気がするけど頑張ってくる!」


 忙しそうにギルドを出ていったヴェティ。

 アルザスもストーリークエストがどうのこうのと言ってたけど、帝国のはひと味違うのがしれない。


 ところで、ゲイ・ボルグ君をアイテムボックスに仕舞っても大丈夫なのか心配になったそこの貴方。大丈夫です。ゲイ・ボルグ君は、生命体ではなく、無機質な武器なので、ご安心を。ただ、仕舞うと【テレパシー】が通じなくなるから少し寂しい気がするのは、ここだけの秘密である。

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