ガチャ無双
ピロリん。
『運営からのメールが1件あります』
世界ランキングモードのことだね?待ってたよ!
『世界ランキングモードが追加されました。
・世界ランキングモードとは?
…いつでもどこでも了承した相手と戦う事が出来、勝利した場合、相手と順位を交換できる。但し、自分よりも低い順位の者に勝った場合は交換できない。勿論経験値は入ってくる。また、クエストやモンスターを討伐などをやる事によって、順位が上がるかもだぞ!
これで下克上は可能になった!!さぁ、進め!!貴方の手には無限の可能性がある!!
メンテナンスが終了しましたので、プレイヤーの皆様にはガチャチケット5枚を配布します』
ガチャチケット…有り難や。確か、これを合わせて105枚となったかな。
そろそろ回そうか。
メニューを開き、ガチャのボタンを押す。
プレイヤー装備ガチャとテイムモンスター用の防具ガチャの二つがあった。
プレイヤー装備ガチャの方は特に欲しいものが無かったので、今回は辞めておく。また新しいガチャが来たら引いてやるからな。待っててくれ。
品薄のプレイヤー装備ガチャと比べ、テイムモンスター用防具ガチャの方は結構いいものが揃っていた。というのも、テイムモンスターはプレイヤーよりも少ないから残っているのだろう。しかも、ガチャ率が低い。
テイムモンスター用防具ガチャ 出現装備一覧
☆7
期間限定!! 紫九尾一式 残り1
期間限定!! 蒼九尾一式 残り1
0.0001%
☆6
岩竜の頭 残り1
岩竜の篭手 残り8
岩竜のグリーヴ 残り5
岩竜のマント 残り10
岩竜メイル 残り3
0.005%
☆5
劣竜の頭 残り50
劣竜の篭手 残り48
劣竜のグリーヴ 残り35
劣竜のマント 残り29
劣竜のメイル 残り42
…etc
0.06%
☆4
ピックアップ!! 妖精の靴
ピックアップ!! 妖精の涙
…etc
20%
☆3
鉄の胸当て
鉄の鎖帷子
鉄のヘルム
鉄のグリーヴ
灰色のローブ
…etc
約80%
☆7は、な、ななんと1着限定!!取ったもん勝ちだぁぁあ!!
簡単なことだ。積めば報われる。そう思わないかね?プレイヤーの諸君。by運営
運営さん?私らプレイヤーを殺しにかかっているんじゃないでしょうか。☆7、☆6の確率がおかしなことになってますね。
…お、期間限定の奴はちょうど今日から出たようだ。
このガチャはリアルではなく、この世界の運の高さによって左右されると巷で聞いた。
ということは、だ。…勝ったも同然じゃないか。
ちなみになのだが、このガチャは通常金貨10枚で回せるようだ。結構お高めですね。
さて、有り余るガチャチケをぶん回しましょう。なに、爆死なんて真似はしないさ。
準備はいいかい?運営よ!今、期間限定を奪取してやんよ!
「ポチッとな」
神様お願いです!来てください!お願いします。お願いします。お願いします。何でもしますから!!神よぉぉぉぉ!!!神なんて信じないって言ってすみません!あれ嘘です!だからカモン!改心しますからぁ!!
ガチャの演出の音が消え、薄らと目を開けると、ガチャ画面に10個の玉+もう1個の玉が並んでいた。
ワンタッチすれば、玉の中身が顕になる。くっ…指先が震えるぜ。だが、ここまで来たんだ。もう後戻りは出来ねぇ。覚悟を決めるんだ、私!
「ていっ!」
素早く画面をタッチする。
玉の中身が徐々に開いていく。
1個目 紫九尾一式
うほぉぉぉぉ!キタキタキタキタ!!もう死ねちゃうよ!嬉しいいいい!まさかの1個目から当たりとか私は天才ですか?神よ!ありがとぉぉぉ!!
2個目 劣竜の頭
3個目 劣竜の篭手
4個目 劣竜のグリーヴ
5個目 劣竜のマント
6個目 劣竜のメイル
7個目 鉄のヘルム
8個目 灰色のローブ
9個目 鉄のヘルム
10個目 蒼九尾一式
11個目 灰色ローブ
勝った。
スクショをしてユニオンメンバーに自慢しよう。
無言の笑みを浮かべてソファーに座っている私を見て、ヴィネは苦笑いを浮かべていた。
「汝、大丈夫か?」
「あぁ。幸せだ」
その言葉にヴィネは首を傾げながらもギムレットに作ってもらったであろうコーヒーを啜った。
優越感に浸り続けること30分弱。
ようやく思考も働き出し、九尾装備を誰につけるか本格的に悩み出した。
バレンシアにはサイズ的に合わなさそうだ。
問題は、テキーラ、ジン、ウォッカのこの3人なんだよね。うーん。迷う。この和服は誰につけても似合いそうだし。…ここは装備のステータスを見てみよう。
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種類 一式
名前 紫九尾一式
ATK 250
VIT(DEF) 200
STR 250
SPD 380
DEX 390
MND 400
INT 370
LUK 300
パッシブスキル
・王の威圧
・MP自動回復(MPが1秒間に20ずつ回復する)
・宝石変換(自身が触れたものは任意で宝石と化す)
・状態異常無効化
・紫蒼(パーティーに蒼九尾が居る時、ステータスが大幅に加算される)
アクティブスキル
・幻影(光を反射させ、姿を背景と同化する)
…幻獣、紫九尾の素材をふんだんに使った至高の一品。宝石を無限に生み出す最高の九尾。 ☆7
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種類 一式
名前 蒼九尾一式
ATK 250
VIT(DEF) 200
STR 250
SPD 400
DEX 350
MND 400
INT 350
LUK 300
パッシブスキル
・王の威圧
・MP自動回復
・宝石変換
・状態異常無効化
・紫蒼
アクティブスキル
・幻想(自身よりも下位のものを召喚出来る。Lvによって、呼び出せるモンスターの数が増える)
…幻獣、蒼九尾の素材をふんだんに使った至高の一品。宝石を無限に生み出す最高の九尾。 ☆7
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◈黒龍の軍服もそうだけど、今ゲットしたこの二つも相当やばい。特に【宝石変換】がやばい。このスキルさえあれば働かなくても生きていける。
まぁ、働かない…Lvを上げに行かないっていう選択肢は私にはないけどね!
考えた結果、ジンとウォッカにあげることにした。2人はいつも一緒にいるし、兄弟みたいな感じだから。
そうとなれば、早速2人に着てもらおう!
「ジン!ウォッカー!かもーん!!」
「何ー?」
「呼んだか?」
呼べば数秒で駆けつけてきてくれるこの子達は天使だね。うん。そうに違いない。
「2人に着て欲しいものがあるんだけど…いいかな?」
「いいよー!」
「それくらいなら構わないぜ」
装備を渡すと、2人は着替えるために物陰に隠れた。
…思春期なのかなぁ。
「もういいかーい」
「まだだよー」
「もういいかーい」
「まだだっつの!って、るし!!なんで見てんだよ!」
「いいじゃないか!減るものはないよ?」
「減る!ガリガリ減るよ!」
「そっか」
「分かったならあっち行け!」
「ウォッカのイケズ!」
ウォッカが脱ぎたての服を投げつけてきた。それに隠れて篭手も。服だけだと思って両手を伸ばしたのが間違いだった。間をすり抜けて硬い金属の篭手がおでこにぶつかった。
「〜ぃ!」
痛すぎてゴロゴロと床を転がる。そっとおでこに手をやるが、たんこぶは出来ていないようだ。だが、じんじんするよ。
「るしー着替えたよー!」
「え!まじ!?」
ガバッと頭を上げるが、
ゴンッ
「ぅぐぁぁぁ……」
テーブルの角に頭ぶつけたぁぁあ。
い、痛い!痛いよぉ。
ここの世界では運がいいはずなのにっ!なんて不運な…。まさかっ!さっき引いたガチャで運を使い切った的な?くっ…。仕方ない。あれほどのガチャ運だったんだ。こうなるのも少しは予期するべきだった。
「るし、汝は少し休んだ方がいいんじゃないか?先も変に笑っておったし」
「う、ううん。大丈夫」
もう、ヴィネは心配性だなぁ。
「るし、着たぞ?」
ウォッカは◈蒼九尾一式を、ジンは◈紫九尾一式を装備した。その髪色と装備が上手い具合にマッチしていており、可愛さが倍増していた。。狐の仮面を付ければ9本の尻尾が生えるという機能には驚かされた。足元には宝石が散らばっている。
「可愛い!すごーく可愛い!あ、2人とも宝石交換スキルはoffにしておいてね。じゃないと床が宝石に塗れちゃうから」
「「はーい!」」
ゆらゆらと揺れる尻尾が魅力的だ。
さぞかしモフモフしているのだろう。モフモフ。…モフモフ。
気づけば手が尻尾に伸びていた。
「ふぁい!?」
「るしー擽ったいよー」
ウォッカが悲鳴を上げるが気にせずにモフモフする。はぁ、たまらんなぁ。このモフモフ、上質な毛ざわり、花の匂いと太陽の匂いがたまりません!!
ゴンッ
「〜っ!!」
久しぶりにウォッカの拳が入った。脳細胞がぁっ!頭が割れそうなほど痛い。手加減してくれたのか、今回は体力が5分の1しか減らなかった。…ん?軍服を装備しているのに5分の1も減った。◈蒼九尾一式のお陰で攻撃力が上がっている。これは…本気だ。
「るし?分かってるよな?」
「うん。…フラァッシュ!!」
「ぐわぁぁぁぁ目がぁ!目がぁぁ!!」
ここで引く私ではないのだよ!!
ウォッカの尻尾を堪能し、飛んできた拳を避ける。
ふっ、私は学習したのさ!そう易々と攻撃を受けんよ!
「ちょっとくらいいいじゃんかぁ!!ウォッカのケチっ」
「るしぃぃ!!ファントム!!」
ウォッカの両サイドに白い狐が現れた。
「コンコン。お呼びかな?御主人?」
「ココんだコン。お呼びかな?御主人?」
「おう。呼び出してそうそう悪いが、あの軍服を捕まえてくれ」
「「了解だコン」」
2匹の白狐が私の周りをクルクルと回る。
「む?麻痺が効かないぞ?」
「そうだね。じゃあ、アレで」
突如身体が金縛りにあったように動かなくなった。声も出ない。指先すら動かない。
このままではウォッカに捕まってしまう!!
「るし?お巫山戯は大概にしろっつったよなぁ?」
「ひっ…お許しをっ」
「許さんわ!馬鹿っ!」
ガッ
勢いよく振り降ろされた拳は私の脳天を貫くことなく、頭上何ミリかのところで止まっていた。
「おい。それをやったら家畜がどうなるかわかってやっておるのか?貴様の方こそ巫山戯るのは大概にしろ、鬼」
ウォッカの攻撃を止めたのはベリトだった。ベリトの威圧を受け、ウォッカは小さくなる。
「ご、ごめんな」
ポカンとウォッカを見つめていると、ベリトがデコピンを食らわせてきた。
…痛い。
額を抑えてベリトを睨むと、逆に睨み返された。
「家畜、貴様も巫山戯過ぎた。よって、彼奴に言うことがあるのではないか?うん?」
…その通りだ。私も巫山戯すぎたと思います。
「ウォッカ、ごめんね。その、嫌な思いさせてごめん」
「ばっ!俺もやりすぎたって言ってんだろ?るしが謝ることじゃねぇよ。もし俺があのまま るしを殴っていたら……」
「いたら?」
「頭が潰れておっただろうな。新しく手に入れた力ほど危ういものはない。45柱、貴様も見ていたのなら止めぬか」
「いや、28柱が止めるという未来が見えていたからな」
ジンは、るしとウォッカがひしりと抱き合い、ベリトとヴィネがオーラを放ちながら討論しているのを見て、今日も平和だとそう思った。
ふと、自分の横に佇んでいる2匹の狐に気付いた。さっきウォッカが召喚していた従魔だ。
「ねーねー君達はなんていう名前なのー?」
「コン?僕はゆきしろっていう」
「コンコン。僕はハクっていう」
御主人と似ている容姿の小鬼を見て、2匹はせせら笑う。明らかに自分達よりも格下。取るに足らない存在にわざわざ答えてやったことによって、自分達の存在が孤高と化したように感じ、その地位に酔った。だが、その酔いは取るに足らないと思っていた者が発した言葉によって覚まされた。
「へぇー。ゆきしろとハクって言うんだー。…あのさ、次るしを傷付けたら、殺すよ?」
小柄であるジンから2匹に向けて殺気が放たれる。ニコニコと幼さを残した笑顔を崩さずに。
「「っ!」」
「まぁ、傷付けたら、だからね。そんなに構えないでー仲良くしよー?」
殺気は刹那に放たれた為、ベリト達は気づかなかったが、この一瞬で2匹は本能的にジンが上だということを悟った。
能ある鷹は爪を隠す。
隠れて爪を研ぎ、いつか喉笛を咬み切らんと機を窺っている。




