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だから、私は咬ませ犬がいい  作者: ニワトリのぼん
8/16

クラス分け

本日 二話目です。



 


「ボクはヤダ!離れない!ズルイよ、セルとアレクだけ一緒のクラスなんて!!」

「レイア…クラスが離れたって大丈夫よ。合同の授業なら一緒に勉強出来るし、食事の時もお菓子の時間も一緒に食べましょう、ね?」

「ヤダヤダヤダヤダ!!」

「エアリアル様、落ち着いてください」

「余に触れるな エルフの分際で!!!!!!セル!セルゥ!!ボクの手を離しちゃダメだ!一緒に居ておくれよ!!!」


 ボロボロと涙を流すレイアに私はただただ苦笑いを浮かべ、落ち着くまで手を握る事しか出来なかった。

 こうなったのは、数時間前に遡る。



 ――大きな問題もなく、私達 新入生は、『異世界大魔法学校』に無事、到着した。それから先生に、大広間や、グラウンド、広場に、教科ごとに分かれた各教室、と休む暇も無く案内される。

 島のような学園を見ただけで興奮したが、ゲームの背景で見た長い廊下、スチルの景色、主要キャラや攻略対象、雑誌で有名な先生に、シルが興味を示しそうな魔道具や読みたいと言っていた書物、様々なものが私のミーハー魂とブラコン魂を震えさせた。私はレイアの袖を掴んで、その興奮の波を抑えた。吐く息が、熱くなる。

 ああ、この景色をシルと見れたらどんなに幸せだったか!


 シルはきっと私の腕を掴んで、見たもの全て興味を示すだろう。アレは本で読んだ事ある、コレはこうやって使うって資料に載ってた、それは図鑑で見た事がある魔草生物だ、あの部屋はこの間雑誌で取り上げられていた、目を輝かせてシルは私に教えるのだ。

 私はそんな彼に「物知りなのね」と褒めて、頭を撫でる。彼は、子供扱いするな。と言って怒るだろう。


 まだシルと別れて、半日しか経っていないのに、私はシルをとても恋しく思った。ピアスに触れて目を閉じれば、レイアに腕を引かれて汽車に乗る直前のシルを思い出す。

「僕を忘れないで」

 そう言ってシルは、頰を擦り寄せて、耳に、ピアスにキスをした。恥ずかしがり屋のシルからされた、初めてのキスだった。

 私はその時、自然と涙が出た。頰に伝った事さえ気付かない、今までで、一番純粋な涙だった。その後の、レイアがまた面倒くさい事になったりもしたが…

 少しの余韻に浸りながら、目を開けると、心配そうにこちらを見ている、レイアとアレクがいた。その前にはアレクの友達とかいう人達と、メイ、ミネルバスがいる。

 周りの新入生と一緒に、大広間へ続く廊下をぞろぞろと歩く。


「セル、どうしたの?疲れちゃった?」

「違うわ、少しシルを思い出していて…」

「シル…」


 シルの名前を出した途端、墓穴を掘ったと後悔した。レイアはあからさまに不機嫌になるし、アレクはそのレイアの様子に何か勘付いて「男か…」と呟いた。貴方の空気を読めるところ、私は好きだったけど、今は大嫌いだわ。

 レイアの顔がますます険しくなった。

 私は話題を変える事にする。きっと、そんな事をしても、彼等の鉛のようなその感情は腹に収まったままだろう。だって、アシュ達と違って、彼等の心は繊細だもの。

 でもここは、私の呑気な顔に免じて、忘れたフリをしてもらおう。私の演技は、まだ彼等を騙せる事が出来るのだ。


「そういえば、クラス決めを水晶でするのよね」

「あぁ」

「成人男性の身長ぐらい大きな水晶だと聞いたわ!」

「そうだな、俺の祖母も水晶を集めるのが趣味だったが、そんなに大きな水晶は見た事もない」

「流石、異世界遺産ね。壊さないように、気を付けなきゃ」

「アレクは馬鹿力だから、壊しちゃうんじゃない?」

「アンタは感情を抑えきれないガキだから、緊張して水晶を凍らせるんだろうな」

「ハァ?」

「なんだ?」

「ふたりとも」


 レイアは、ううっと大きな瞳に涙を溜めて、私に抱き着いた。突然だったのでよろけると、隣のアレクが肩を掴んで支えてくれた。その前からボーイソプラノの悲鳴が聞こえる。


「シルが悪いんだ、ボクに意地悪なコトを言うからぁ」

「まあ……無意識に私は貴方を傷付けていたのね?ごめんなさいね。でも本当に分からないのよ。教えて、レイアはどうして悲しんでいるの?」

「シル…シルっていう黒髪…汽車に乗る前にいた奴…なんだよ、アイツ。セルのボーイフレンドなの?」

「え? あっ、シル? うふふっ」

「…………ボク、キミを笑わせるほど、面白い事を、言ったつもり、ないんだケド」

「ふふっ、 やだ、 やだ、 怒らないで レイア …え? だってシルでしょ? 私の弟のシルでしょ? うふふふっ、 そう、レイアってば、 弟に嫉妬していたのね」

「え? だってキスを……」

「ね! それは私も驚いたわ!彼ってば、いつもツンケンしてるのよ?その彼がお別れのキスをするなんて!ふふっ、シスコンっていうものね。私もブラコンだから、両思いだわ!」

「フ、フーン。そっか、弟ね」


 最初、とぼけてみたが駄目だったので、急遽、笑って誤魔化す、ファインプレーをした私、ナイスよ!ほら、レイアの機嫌は治ったわ!

 今まで、黙って支えてくれていたアレクにお礼を言って、私達は他の新入生と共に、大広間に入った。



 大広間には、先ほど居なかった在校生が座っており、私達は彼等の前を通って広間の右端から左端まで、三列になって立った。

 教師と、成人男性の高さがある椅子に座る校長先生が前に、私達と対面をするように並んでいる。

 私達と先生の間には段差があり、校長先生の前には、さっき話した巨大な水晶があった。校長先生が座っている椅子の模様が、水晶の中では歪になっている。

 それでも、面白いとは思わず、只々圧倒されるのは、その椅子も、水晶も歴史を感じ、神秘的なものだからだろう。


「入学おめでとう。きみたちは今まさに人生の分岐点に立っているだろう―――」


 校長が挨拶する。小さな身長でとても健気で可愛い。実は彼女も攻略対象である。隠れ、ですけど。

 黒髪のおかっぱ頭に幼女の体、着物を着ている。つまりロリババァである。完全にスタッフの趣味だ。ナイス!いい仕事をした!ドールのようなロリもいいが慎ましいロリも捨てがたいわよね!

 因みに性別も変えられてショタの時は白髪のおかっぱ頭だ。



「―――きみたちのこれからに期待している」

「それでは、クラス分けに移ります。名前を挙げられた者は前に出なさい」


 うわっ来た、新入生全員の心がまとまった。このクラス分けで自分の価値観が変わり、友達関係も変わる。運命がここで決まるのだ。

 私達は緊張して張り詰めている中、後ろの在校生はワクワクとこの状況を楽しんでいた。彼等はやっぱり、根っからの魔法使いだわ。



「アベル・ネイネルガ」


 魔女の教頭が、覇気のある声で名前を読み上げる。名前を呼ばれた新入生は、巨大な水晶の前に立った。


「ネイネルガ、水晶に触れなさい。優しく、優しく触れるだけで良いわよ」

「は、はい」


 赤毛の少年、ネイネルガが水晶に触れる。水晶はその大きなガラスの中にグルグルと煙を巻き起こし、次に白い鷲が襲いかかるように現れた。驚いた、ネイネルガが尻もちをつく。隣のレイアが笑った。


「アベル・ネイネルガ、ゼフィロディーシの席へ!」

「ふぁ、はいィ!」


 声が裏返ったネイネルガが、私達を横切った。中央よりの、左側が拍手と、盛り上がりを見せる。多分、あそこがゼフィロディーシの生徒の席なのだろう。

 見てみたいが、キョロキョロと見渡すのは女としてはしたなく感じ、グッと堪えた。意識して、背筋を伸ばす。

 性別のない妖精族のレイアは、隣で呑気に欠伸をしていた。何千年も生きている彼にとって、こんなの屁でもないらしい。流石、私が入学するからといって、気紛れにこの異世界大魔法学校に入っただけある。

 レイアの能天気さに、緊張がほぐれた私は、どんどん呼ばれていく新入生を見つめながら、ピアスに触れた。



 きっと、大丈夫。恐怖を抱かなくて大丈夫。きっと楽しい事がたくさんある。


「セルフィナ・レイヤー!」

「はーい」


 カツカツと、ヒールがなる。

私は、古く黄ばんだ羊皮紙を持つ魔女の隣に立った。彼女と視線が交じり合う。美しく、炎のような真紅の瞳は、全く熱を感じないものだった。


 私は一呼吸して、その大きな水晶に触れた。ひやりとした無機物のはずなのに、その水晶から、呼吸を感じて、思わずのどが引きつく。トクントクン 優しいその音は、正に心臓の音だ。

 グルグルと水晶の中の煙が渦巻く。


 入学準備で、異世界へ来た時に知り合った子達はそれぞれクラスが決まった。

 はっきりいって、知人の数が多すぎて、みんながどのクラスになったか覚えていない。

 だが、コンパートメントで一緒の、レイアとアレクは別々のクラスというのは分かっている。

 私はどちらかと一緒になるか、それとも三人、バラバラになるか。もしかしたら、不適合者と言われて、クラスにすら入れてもらえないのかもしれない。

 そんな不安を知らないレイアは、遠くから私の名を呼んだ。そのクラスも、レイアと一緒に私の名を呼ぶ。羞恥なんて感じない。感じれるはずがない。志望校の合格発表を待つ受験生のような心境の私には、そんな感情を持つ余裕なんて、あるはずがないのよ!


 20秒も経ってないのに、1時間ぐらい感じる。軽く唇を舐め、一度目を閉じと、ゆっくりと開けた。私は、その時、悲鳴を呑み込んだ自分を褒めてあげたい。

 目の前には黒く大きな鷹がいた。

 よく見ると、それ翼は黒い炎を纏っていた。どうやら、私が鷹だと思っていた鳥は、四色に変わるフェニックスだったようだ。フェニックスは水晶越しから甘えるように、私の手に頬ずりをした。


「ボレスヴォーリア!」


 透き通った声が広間に響く。私は思わず、魔女に振り返った。彼女は優しい目をして私を見ていた。



「お前もヴォーリアか」

「ええ、よろしくねアレク」

「あぁ」

「それと、口にクリームがついてるわよ」

「…さんきゅう」


 トントン、と右の頰に指さす。アレクはナプキンで左頰を拭い、耳を赤らめてお礼を言った。

 もし、もし、シルなら。私は自分の左頰に指さすだろう。口にクリームが付いてると指摘されたシルは、ハンカチを持っているのに、恥ずかしさを隠す為、袖口で、乱暴に自分の右の頰を拭う。

 それを見て 彼に、指を伸ばし可愛いほっぺに付いた生クリームを掬いあげる。赤面したセルに、私は笑みを噛んで言うのだ。

『あら…ごめんなさい、シル。貴方から見て左という意味だったのよ』




「レイヤー嬢、黒の英雄 ボレスヴォーリアへようこそ!」

「彼女にゴブレットを持たせろー!」

「中身はオレンジジュースでいいかしら?」

「ヴォーリアに、レイヤー嬢にカンパーイ!」

「カンパーイ!!!」


 アレクと一緒のクラスになった、四方のクラスの内の一つ、

北のボレスヴォーリア 通称『ヴォーリア』

勝ち気で欲張りな性格の生徒が集まる事で有名なクラスだ。


 初めの方で名前を呼ばれたアレクの両隣は、女の子がもう座っていて、私が入る隙間なんてない。なので、他に空いている席を探した。


 大広間の先から先まで届きそうなほど、長テーブルに、長い椅子。在校生達は自由に座っているから、新入生と上級生がごっちゃごちゃ。人の穴なんて、沢山空いている。

 むしろ、アレクの周りだけだよ、あんなに人口密度が高いのは。ゲームの主人公よりも先に様々な種族のハーレムを作り上げた友を見て、私は手で口元を隠し 小さく笑った。


「セルフィナちゃーん、こっちおいでー」

「男子騒ぎ過ぎだから!セルフィナちゃん、困ってるじゃん」

「ええー!ごめん レイヤー嬢!」

「彼女のゴブレットは、僕が預かるね」

「大丈夫かい、びっくりしただろ。僕たちも彼等の浮かれっぷりは、びっくりさ!」

「マイン、ほら退きなさい」


 笑うのを隠すために抑えていた口を、上級生は、気分が悪くなったからだと誤解をし、恭しく私の腰に手を当てて、席までエスコートしてくれた。ガタンと、何ヶ所かで乱暴な音が聞こえたが、気のせいという事にする。


「わかった、わかった。ずれるから、叩くな。追い出そうとするなんてヒドイなぁ……君、大丈夫かい?」

「あっ、ええ、なんとも」

「ほらほら座って。具合の方はどうだい?」

「いえ、いえ、具合が悪いわけではなく……ふふっ…私ったら、少し緊張して…でもお優しい先輩方で良かったです…」


 大丈夫か、と聞かれて都合良く嘘と誠を混ぜてしまうのは、魔女の性である。

 私の取って付けた言葉は、先輩達とってお気に召してくれたらしい。勢いよく抱き着かれた。


「か、可愛い!持ち帰っては駄目かい!」

「駄目に決まってるじゃない!」

「うぐぐっ」

「私がセルフィナちゃんを持ち帰るんだから!!!」

「二人とも落ち着け。可愛いのは分かるから、早くレイヤー嬢を座れさせてやれ」


 テーブルには、赤身のローストビーフに、それに合うヨークシャプディング。白魚とほうれん草のキッシュ、ミニトマトやパプリカ、スイーツオニオンなど色とりどりで、フレッシュなサラダがあり、いい匂いがするポタージュは私の空いた胃袋をくすぐった。この学校の食事は各クラスの長いテーブルに食べ物が置いてあり、それを自分達で取って食べるバイキン形式だ。

 ローストビーフ以外にも料理はあるが、それ等は見た事がないものばかりで、俗にいう、ゲテモノ料理だ。多分、他の種族で食べる一般料理なのだろう。幾つもの目玉が入った紫のゼリーは、流石に食べられそうにない。


「ここの料理は、全部美味いぜ」

「お前、そんなにぐいぐい話しかけられたら、彼女だって食べたい物も食べられないだろうが」

「は?俺は親切になぁ」

「お前は親切なんかじゃなくて、押し付けだ」

「い、頂いてもいいですか?」


そのキッシュが食べたいです。

 会話が長引きそうな先輩達に向かって上目遣いをする。悪いけどセルフィナ・レイヤーのキャラをフル活用させてもらうぜ!

 隣の先輩に言うと、その人は目を輝かせて、私の皿を取った。


「おうおう、いっぱい食べろ!俺が全部取ってやる!」

「セルフィナちゃん、他に何が食べたい?何なら隣のノトスノーアまで取りに行くわよ?」

「レイヤー嬢、ジュースのお代わりはどうだ?」

「皆様、ありがとうございます…素敵な先輩方に囲まれて…とても、光栄です」

「こちらこそ、生まれてきてくれてありがとう!!!」


 ほんとに優しい先輩達で、良かった。

それから、私の後にヴォーリア入りが決まった赤鬼のディーク君と 席に割り込んできたメイ、そして優しくて素敵な先輩達と一緒にディナーを楽しんだ。そう、私はさっきの緊張が嘘のように、とっても楽しんでしまったのだ。

 一人、ゼフィロディーシで固まるレイアを忘れて。









 ――そして今に至る。


 大広間で、クラス決めが終わった後、ヴォーリアの新入生達と話しながら、先輩達の後ろへ着いていった。大広間の扉を抜ける。すると、後ろから見知らぬエルフに攫われた。

 此方を見ていたアレクと目が合う。焦った顔をした彼は、私の名を呼んだ。でも、私はこのエルフに見覚えがあったので、彼を安心させるように笑う。それでもアレクは必死にこちらへ手を伸ばそうとしてくれたが、それも人混みのせいで見えなくなった。



 エルフちゃんは、その長い耳を下にさげて、何度も謝りながら私を横抱きにして、疾風の如く走る。彼が謝るので「大丈夫よ、気にしないで、でも目的地に着いたら説明をして頂戴ね」と言った。


 彼が止まった場所は学園の中庭。外はもう真っ暗であったが、満月と白金のレイアの姿だけは淡く光って、宙に浮いていた。


「レイア…」


 ごめん、すっかり忘れてたわ。

 それから私の声を聞いたレイアは、狩人の如く私を捕まえ、赤子のように縋った。

 ああ、可哀想な可愛いレイア。一体、誰が彼をこんなに傷付けたのだろう……はい、私です。


「私は、精霊王エアリアル様の守護を務める、レンと申します。彼方にいるエルフは、準守護者、他にもいますがその者たちは、影に仕える物…申し訳ありませんが、これ以上は口に出来ません…」

「余のレイアに話しかけるな、薄汚いエルフが!!!」

「あらまぁ」


 精霊王バージョンのレイアちゃんが、こんにちはをしているわ。エルフちゃんのライフはもう0よ。可哀想である。そうよね、エルフ族と妖精族って切っても切れない存在だものね。特に、レイアはそうよね。


「セル!!セルセルセル!!!ボクを見るんだ セル!!他のヤツを見てはダメだ!!!!」

「わかった わかったわ。だからお願いよ、レイア。貴方の素敵な笑顔を見せてちょうだい、ね?」

「ヤダ!!どうせ セルのお願いを聞いても、セルはボクのお願いを聞いてくれないんだろう!ボクから離れようとするなんて許さない!ゼッタイに、ボクは、キミを許さない!!!!!」

「ああ、そんな悲しい事を言わないで、レイア」


 う、うん?でも私に話す時は、ボクって言ってるし、体も、人間のままだし、もしかして、たいして怒ってないのかしら?


「じゃあ セルも、ゼフィロディーシに来てよ!!!!!」


 うーん、これは完璧に拗ねてるだけだなぁ。よし、優越感を擽るか。


「水晶が決めた事は絶対よ。お願いだから、我儘を言わないで。ほら、ギュってしてあげるから」

「……毎日?」

「えぇ、毎日よ。レイアが好きな時に、好きなだけギュってしてあげる」

「ダメ!足りない!チューしてくれなきゃダメ!」

「えぇ、ちゃんとおはようのキスも、おやすみのキスもするわ。いっぱい、いーっぱいするわ」

「んっ!」


 する と言った途端、レイアが唇を突き出した。私は笑いながら、そのタコのような口を摘む。レイアはビックリして目を開けた。

 私はそんなレイアを、微笑ましく思いながら、額に二回キスを落とす。「はわわっ」と小さく声を上げるレイアの頬を両手で包み、右の頰に、次は瞼にキスをした。

 キスをされる間、ずっと息を止めていたレイアは、顔が真っ赤だ。


「セルゥ…」

「これからの学園生活、頑張れそう?」

「うん、ガンバる、ガンバるからセル、もっとちょうだい」


 その後、満足したレイアは次に「仲直りに流し合いっこしよ」と言って、レイア専用のお風呂に移動させられた。

 緑に溢れ、天然の温泉があるここは、どうやら、学園の七不思議のひとつ。『精霊王の庭』と呼ばれる所らしい。そのまんまである。

 そういえば、ゲームの攻略板で異世界大魔法学校の七不思議とかいう掲示板があったな。ちゃんと、読んでおけばよかった。


 スッポンポーンといい脱ぎっぷりをするレイアが、私の服を脱がせようとした。

 待って、私 中庭から直接 連れて来られたから着替えも何も持っていないの!

 しかし、そんな心配事は杞憂に過ぎなかったらしい。ハイスペックエルフちゃんが、私の入浴セットを持って来てくれたのだ。き、君、ゼフィロディーシのクラスだよね!他クラスの寮に入るなんて罰則ものなんだよ!

……私は知らないふりをして、レイアと仲良くお風呂に入った。



その後、機嫌が直ったレイアと別れた私は、閻魔様のような表情をしたアレクに出迎えられる事になる。






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