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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~  作者: ユーリアル


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MD2-071「道具に善悪はあるのか?-1」

会話がほとんど入らなかった……無念。



マリーの新たなる目標。


寒空の下で僕に語ってくれたそれは

ある意味単純で、全ての実現は非常に難しい物だ。


そう狭くない領土を治める貴族の問題だからね。


それでもそれを行いたいと決めた彼女を僕は助けようと思う。


僕達は依頼を終えた後、マリーの目的のための行動を開始した。


まずは情報収集。


集められた情報からは、現時点でオルファン領は

彼女の叔父が代理として就任している状況とのこと。


最初はもう継承周りが片付き、叔父が領主になっているかと思っていたのだけど、

実際には彼は代理の状態だった。


というのも、マリーが継承権を放棄しているとは決まっていないという判断らしいのだ。


貴族では子供が何人もいたり、縁戚関係がややこしい時に

本来の継承先以外が家を継ぐことは問題の元だというのが常識らしく、

特例を利用することで彼らは今の地位になんとかすべり込んだようだ。


今回でいえば直接の継承者であるマリーが行方不明であり、

男系、つまり結婚して外に出ていかない身内は自分達だけである、

という主張が緊急時の判断としてひとまずは通っていることになる。


マリーは何らかの事情により継承権を主張できない状況かもしれないので

期日まで待つこと、と決まっているらしい。


「でもそれも再来年ぐらいには正式に継承されると思います」


マリーはやや沈んだ声で手元のお茶に視線を落としながらつぶやく。


気の住むまで寝泊りしていってくれというありがたい申し出に乗り、

僕達はエルファーダ家の一室にお世話になっており、

今2人がいるのはその部屋の中だ。


「それだけ時間が空くと、もうその意志がない物とされるってこと?」


コクンとマリーが頷くのを見、僕も考えにふける。


マリーの言うように何年か立てば、権利の放棄、あるいは

どこかで死んでしまっている、とされるわけだ。


主に死亡扱いにされるということに驚きもしたけど、

本人達の気持ちは置いておいて、家の継承権を放棄する、

ということは基本的に貴族の世界ではありえないからだろうと思う。


僕的にはマリーが魔法使いの元に修行に出ていたことを

しっかり知っている人間がまとめて死んでしまっているということに

改めて驚いたのだけど……。


勿論、流行り病というのは恐ろしい物だとは聞いたことがあるけど、

マリーの故郷で病気が出たというのは去年、ついこの間のことだ。


そんなひどい病気がそこだけで済むものなのだろうか?


ひどく嫌な話なのだけど、普通に考えたら周囲にも病気が

ある程度広がっていると考える必要がある。


『獣やモンスターが病気を運ぶことがある……が、

 逆に言えば病気を運ぶ者が一切いないというのもおかしい話だ』


ご先祖様の言葉に僕も同意だ。


とはいえ、この問題は今考えても答えが出る物ではない。


マリーの継承権の話に戻すと、

彼女自身が名乗り出ることには問題が無く、

本人証明もまた、不可能ではないとの事


問題はその後だ。


「名乗り出て本人だとなったところで急にマリーが当主ってわけじゃないよね?」


言いながら僕が見るのは机の上に並べられた紙、そして2人の手に入れた騎士証。


この騎士証を使うとしても、それは継承権の確認や宣言にとどまってしまうだろう。


というのも、問題はありそうだけど既に領主代行の任について

かなりの時間が経過してしまっている。


ここで一方的に宣言しても何を今さら、という話にどうしてもなるのだ。


これは村から出ていった人の畑を代わりに耕していた人に

戻ってきたから畑を返せ、というような物だと僕でもわかる。


王都には審問官と呼ばれる貴族間、あるいはその貴族内部での

問題を管理、監督するための人間がいるらしく、

それを呼び出すことはできるとのこと。


それでも彼らがマリーの叔父から一方的に継承権を奪う、という権限があるわけではない。


簡単に言えば、彼女の方が優秀であることを示し、

今の叔父のままでは問題があることを証明しなければいけない。


なので今すぐ呼ぶということは難しい。


呼び寄せても問題があるという現状確認だけにとどまり、

解決のためにどう転がるかわからないからだ。


場合によってはやはり年上かつ男系ということでと

叔父の継承権を認める場合もありえそうとはエルファーダ家の面々の意見だ。


確かにマリーはまだ大人と呼ぶのは難しいからね。


当主はマリー、だけど後見人として叔父、というのが

一番ありえそうで嫌な組み合わせだ。


運営状況もまた、今のままではそう問題にはならなそうということもわかった。


領主自身が運営にあまり関わらず、部下に任せるというのは

大なり小なりあることだからだ。


中には商才があるがゆえに、領主自身が先頭を切ってる場所もあるそうだけど、

西方諸国に近いところだそうだから一般的ではない。


大体はある程度は部下としての代官が行っているそうだ。


オルファン領はその程度がほとんど丸投げなのが問題で、

自分の遊ぶ金だけは出させるようだ。


領内のダンジョンからのお宝も活動の権利を与える名目で

一部搾取しているのだとか。


最近ではそのせいで冒険者が減っているだとか、

わざと隠している冒険者もいるのだという話も日々街に出て

冒険者として話を集めているとわかってきたことだった。


確かに魔法の袋があればある程度は隠せるもんね。


「まずは恐らく来るであろう新年の挨拶と同時の

 スィルさんへの求婚への対処でしょうか……。

 エルファーダ家を吸収することをまだあきらめているとは思えません」


マリーは来るであろう相手の事をそう考えているようだけど、

僕はすこーしだけ違う。


きっと、彼女の従兄は継承問題が無くてもスィルさんをあきらめないだろうなということだ。


こんなことを考えるとまたマリーに怒られるかもしれないけど、

スィルさんは間違いなく魅力的な女性だ。


少なくとも表向きはおしとやかで、

貴族らしい教育を受けた淑女でもある。


仮にセリス君の事を知っていても、彼女を妻として迎えたい、と

言ってくる可能性は十分にありそうに思えた。


むしろ、セリス君が継ぐのであれば妻として迎えるのに問題が減った、

と考えていてもおかしくないと思うのだ。


この点に関してはセリス君たちの父親、

ゴルダさんはある要求をする予定らしい。


その要求とは、武勲の証明。


平和とは言い難く、最近も街道沿いで普段無い規模の

怪物の襲撃があったのは間違いない事実であり、

領主自ら剣を取ることも出てくるかもしれない。


兵士や部下、冒険者にまかせっきりでは領主としてふさわしいといえるだろうか?


自らいざという時には前線に立てるような強い男に

ぜひとも嫁がせたいという親のわがままとして通すようだ。


何故この要求が効力を発揮しそうかと言えば、

聞く限り、マリーの従兄はものすごく太っているらしい。


以前からそうだったらしいので、

贅沢し放題の今ではもっとすごいことになっているんじゃないか?


そんな体でまともに戦えるとは思えない。


一瞬、頭には太ったカエルが立派な服を着こんだ光景が浮かんだのだけど、

あまり外れていなさそうなのが怖いところだ。


………


……



数日後、僕はセリス君と歓談という名の作戦会議を行っていた。


体調が戻り、動けるようになったゴルダさんと

その奥さんであるセフィーリアさんが

これまでの遅れを取り戻すように領内の問題に取り組んでいるため、

セリス君自身はこうして細かい打ち合わせも顔を出す余裕が出来たのだ。


まあ、男2人で花は無いけども。


そう、マリーはここにはいない。


今日も、いつのまにか会話が弾んでおり、

スィルさんを交えて別の部屋で和気藹藹といったところ。


理由としてはセフィーリアさんがマリーを知っていたことだった。


なんでも小さい頃の社交界で出会ったことがあるらしい。


と言ってもマリーはまだ小さく、覚えていないだろう頃。


だからこそ進む話というのもあるようで、

ついつい話し込んでしまうのだとか。


僕としてはマリーが僕の事をどう思っているか、

とかそういったことを話のタネにしているらしいので恥ずかしいのだけど……ね。


打ち合わせの後はセリス君と一緒に、メリクさんの元で冒険者らしいポーションの勉強だ。


僕の場合、どういったものを何を原料にしているかは知っていても

その真ん中が抜けている状態で、セリス君は製品しか知らない状態。


こうして覚えておけば、いざというときに

薬草を直に使うより効力の高い物をその場で調合できるはずという考えだ。


そんな日々の中、面白いことがわかった。


街で買い物をしながらの話の際、商人たちから噂という形で

いくつかのオルファン領の話を聞けた。


ここ最近のオルファン領は、領内にある鉱山からの産出が滞っており、

王家に納めれていないのではないかとのこと。


買い入れにいっても在庫が無いからあまり出せないと言われたのだそうだ。


これまで産出が減ったという話は聞いたことが無く、

それでいて作業員が首になったとか、減らされたという話はないらしい。


王家へと移送される馬車もその数が普段の半分以下なのだそうだ。


今まで通りかそれ以上に人員が鉱山にいるはずなのに、

肝心の物が出てこない。


枯れ果てた、というには不自然だ。


ここから導き出される結論は1つ。


オルファン領ではマリーの叔父とその息子が鉱物とその利益を隠している。


何のためには……わからないけどね。


(ううーん、反乱……ってことじゃないといいけど……)


最悪の事態を頭に浮かべながら、僕は出来ることをするべく考えを切り替えていくのだった。



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