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我が家の愛神は酒神☆カンパリーナ先生 ~翻訳を任されましたが意味不明です~  作者: 酒神☆カンパリーナ/訳:神沢あつし
【第一章】鹿の街で呑む
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7・銃声

 正直、抵抗しても今の妾のステータスじゃと魔力以外一般人と変わらぬからのぉ、仕方ない大人しく両手を上げて従う意思を示す。

 あーあ《法令遵守・失効期間29日》が終わった頃には戻れるのかのぉ懲役何年とか勘弁して欲しいが考えても仕方ない、煮るなと焼くなとして貰おうか。


「理解ったのじゃ、何処へでも連れて行くが良かろう。しっかしこっちに着いてから本当にトラブルだらけじゃのぉ、ガンツはこのメイドさんを呼びに行っておったのか?」


 ガンツは質問に答えず妾と目線も合さない。

 木枠の手錠を架けられ体全体を覆うフード付きの外套を被せられた。

 その様子を確認したガンベルトメイドさん改め犬のおまわりさんは回転式拳銃をホルスターへ戻して踵を返すと保安官事務所を出て表へ出て行った。


「リーナ行こうか」


 妾の背中を軽く押してくる、先に進めと言う事だろう、十手は何故か回収されなかったが大人しく保安官事務所を出る。


 犬のおまわりさん、妾、ガンツの順で大通りを連行されておるとヒソヒソと話しながらチラチラ見てくる、話の内容はあれは誰だやらリーナじゃないかとか、逮捕された人物の話しじゃった、チラチラひそひそを止めていただきたいのじゃ。


 一角に固まって食堂で一緒にのんだ連中が心配そうに見つめておる、食堂の主人なんて妾達の前に飛び出そうとし仲間に止められておった。

 食堂の主人よ釈放されたら今度は共に呑もうぞこの前は調理場で忙しく働いておったしの。

 食堂の人達に軽く目礼してから顔を上げるとガンツの手が妾の頭を外套の上から軽く叩いてきた。

 戒めるようで慰める様な、幼子を宥めるような軽さと優しさじゃった。


 鹿の街の端に在る駅舎は巨大なレンガと鉄の倉庫の様な建物じゃった。

 運搬用そりを牽く馬が忙しなく出入りしておるし街中とは違う活気がある。

 近日中に鉄道が来るのかのぉと自分の置かれてる状況も忘れ観光気分で駅を通過し線路脇を歩くこと数分。


 今まで気が付かなかったが、この街の周り妾達が進む先には荒野の中に大きく口を開いた全てを飲み込むような深い深い峡谷。

 落ちれば死を予感させるほどの深さを持って妾の前に広がっている。

 観光で来たらさぞ感動した事じゃろう。

 峡谷の縁へと伸びる線路の先は少し空に向かって緩やかなカーブを描き助走のない空への、死へのジャンプ台を思わせる。


 工事途中なのか橋が落ちたのかは妾には知る由もない。


 数歩前を歩く犬のおまわりさんが歩みを止め妾へと振り返るとスカートの両脇を摘み片足を半歩引きながら優雅にそして頭を下げて会釈した。


「リーナ様、お疲れ様でした目的地に間もなく到着致します。今回のリーナ様の旅はこの先を終点とさせていただき、新たな旅へと我々がご案内させていただきます、この道の先へと」


「まっまさか、妾にこの線路の先に命綱もなく、行けと?」


 どう考えても死ぬでしょ?死んじゃうでしょ?。

 《法令遵守・失効期間29日》の執行期間中の死亡って【超天空の座(ちょうてんくうのざ)】へ戻るのかな?。


「左様でございます、我が主の命令で御座いましたが手荒な真似をした無礼お許し下さい、それもあと少しのことで御座いますリーナ様、準備は宜しいでしょうか」


 犬のおまわりさんはガンベルトから回転式拳銃を抜いて反対の手のひらで撃鉄を引き起こし両手で握りなおした。


「っ……」


 目線で動きを追っていた妾は目を閉じた、結局どうなるのじゃろう、死ぬのかの?戻るだけなのかの?答えてパー子!!!。

 心の中の絶叫に想像のパー子が顎先に人差し指を当てて首をかしげる。

 解かんないのかよ!。

 解る訳ないよね、妾の妄想のパー子じゃし、今度会ったら覚えてろ旋毛グリグリの刑じゃ。

 あーやっぱり飲酒運転なんかするんじゃなかったなと思ったら情けなくて力が抜けてしまった。


 両膝を地面に付いて頭を垂れる、謀らずも神に祈るような姿勢になる。

 銃声が峡谷へと響きやまびこがこだまして逝く。


 背中にひどい痛みがあった。

 目を閉じたまま意識を背中へと集中する、もう一度、さらにもう一発。計3発。

 背中が熱い、ひどく熱い。

 金属を押し付けられような異様な感じ。

 初めて撃たれたのとほぼ同じ場所を3発。

 弾が貫通して背中へ抜ける時に内蔵撒き散らしたのか、背中から叩きつけられた様な衝撃があった。

 激痛で眉根を寄せる、銃声を近くて聴いたからか耳が痛い耳鳴りもひどい。

 耳鳴りの奥に峡谷に吹く風の音に混じって風を切る音が聞こえてくる。

 徐々に徐々に風を切る音がどんどん近づいてくる、蒸気が吹きし出す音に続いて警笛の音がして驚いて目を開ける。


 最初に目に入ったのは、強い風圧の中で上空に向かって銃を掲げて仁王立ちの犬のおまわりさんの姿。

 次に気がついたのは、妾の横で背中に手を置いてるガンツ。

 声を繰り返しかけてる様じゃが耳がおかしいのか言葉は聞こえてこない。

 心配そうに此方を見てるガンツの瞳と唇の動きでリーナ、リーナと呼んでるのは解る。

 ガンツの義手の掌が背中に置かれて熱が伝わっていた。

 手の温かみに安堵しているとすっと掌の感触が引いた、と思ったら叩いてきた。


「痛い、いったぁあああああいぃぃぃ!!てか妾、いきてる?!うぉおおおおお、生きてるって素晴らしいぃいぃ?」


 生きてる喜びを叫んでみたが不安になり慌てて胸やら背中を目と手で確認してみる。

 何処にも傷はなかった。

 お主が原因か!背中の痛みの原因はガンツ!お主かぁあああああぁあああああぁぁ。


「リーナ…リーナ…」


 耳鳴りが収まり、声が聞こえてくるようにてガンツへ返事をするとガンツ視線は峡谷へ向いておった。

 ガンツの視線に誘われるように向けた先には。

 犬のおまわりさんの後ろは大峡谷、その大峡谷に…。


 巨大な蒸気機関車が逆さまで空に浮いていた。

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