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我が家の愛神は酒神☆カンパリーナ先生 ~翻訳を任されましたが意味不明です~  作者: 酒神☆カンパリーナ/訳:神沢あつし
【第一章】鹿の街で呑む
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6・犬のおまわりさん

「ふぅむ…、やはりか…」


 微酔い状態で協会を訪れ天使に問い合わせても解らないそうじゃ、上司に確認いたしますので連絡をお待ちくださいじゃと。

 無責任にも程があるじゃろ?やはり天使は公務員じゃったな。

 上司ってパー子だし…悪口では無いぞ?自己判断ではなく報告連絡相談をするのは良い職務に忠実なだけであるからして問題無しじゃ…。


 諦め顔でため息をついて協会から出るとガンツに呼び止めらた。


「リーナ、ちっとばかし聴き取りしたい事が有る、それにリーナが置かれている立場も伝えておかないといかんし付いて来な」


「ん?何じゃ?妾に聴き取りとは穏やかじゃないのぉ?ガンツ、それに置かれてる立場ってなんじゃ!?」


 ガンツは苦笑いを浮かべ妾を置いて事務所に向かっていく、腑に落ちないが場所を改める必要があるのじゃろう、素直に着いて行くことにするか。


 保安官事務所で差向いに座ると目の前にグラスが2個置かれたが中身は空だった…、酒を入れろって事じゃろぅ?。

 立ち上がりグラスを腰の辺りに置いて指先から酒魔法でシードルをエスカンシアール、ガンツの前に置き自分にも用意して腰掛ける。


「おいおい、今度はなんだ?サイダーか?」


「サイダーの原型じゃ、シードルと言って林檎の酒じゃ、一気に呑むが良い」


 妾は甘みのあるシードルを一口含み笑顔になる。

 エスカンシアールすることで強めの炭酸と林檎の酸味と甘味、甘口のシードルじゃが昼じゃし良いじゃろ?。

 妾に言われた通りシードルを一気飲みしたガンツのグラスを取って2杯目を注ぎガンツの前に置いてやろう…としたら手首を掴まれた。


「なんじゃガンツ、妾に惚れてしもうたか?才色兼備じゃからのう妾は、罪作りな(おんな)じゃのぉ、すまんガンツは好みではないお断りさせていただく」


「俺も変な格好した嬢ちゃんには興味ねぇよ、リーナが出しているその酒の出処を教えろ、手品か奇術かで出してるんだろ?」


「手品でも奇術でも無いんじゃ、酒魔法じゃぞ?魔法光も見たじゃろ」


「にしたってよリーナ、酒魔法なんて見たことも聞いたことも無いぞ、出鱈目な事を言うなよ」


「何じゃガンツ、昨日振る舞ってた酒は妾が何処かに隠し持ってたと言いたいのか?それに何人も魔法光を見ておるじゃろ、証言に連れてくれば良い」


「魔法光も奇術だろそれ以外考えられん、それに魔法使いなんて軍隊か研究施設にいるのが普通だ、冒険者の中にも少し居るとは聞いているが、一般人は魔法光と奇術の区別なんかつくかっ」


「なら、魔法光が本物で妾が冒険者ならぬ岡っ引きで魔法使いで問題ないであろう?」


「問題無い訳無いだろ?それに禁酒法を知らねーとか言わせないぞリーナ、酒を作ったり売買したりするのは法律違反だってのはお前も解ってるだろ、つまりリーナの立場は容疑者、宿屋ではなく独房に寝泊まりさせたのは禁酒法違反の容疑者だからだ」


 いやいやいや、自分で独房に入って好きに出入り出来るなんて…心当たりがあるなそういう人。

 とりあえずそれは捨て置いて禁酒法。

 そういえばそんな法律を小耳に挟んだことがあるな。

 ふむ思い出したぞ、酒神の知識を舐めるではないぞガンツ、ザルの様な法律ではないか。


「確か、製造と売買は禁止されておるが飲酒は禁止されておらん筈じゃ、ならなんの問題があるんじゃ?」


「だから出処を教えろと言ってるだろ、製造自体は禁止されてるんだから……ん?、本当に酒の出処が酒魔法でリーナが出してるだけ…なら大丈夫なのか?製造でも蒸留でも醸造でもないが………大丈夫なのか?」


「大丈夫じゃろ、妾は魔法で酒を出し振る舞った、食堂で皆が呑んだ分は料理代金に含まれておった、それで誰も罪に問われる事は無い、どうじゃ丸く収まってる気がするじゃろ?ガンツ、どうじゃ」


 妾はふんすっとドヤ顔。


 指で顎をなぞり思案顔のガンツだったが妾の顔を睨みつけて左腕を撫でてからニヤリと笑う、妾も悪い笑顔でグラスとグラスをぶつけ乾杯した。


「リーナ、お前やはり悪人(いいやつ)だな、極東の奴らは悪人ばかりなのか?」


「悪人は失礼だろガンツ、物凄い悪人顔になっててるぞお主、ガンツも極東出身じゃったか?」


 ふんすっと鼻息をはいてからグラスを空にする。


「言うじゃねぇか、確かに俺もワルガキだったが覚えてないだけで極東出身だったかもな」


 乾杯をして二人共一気に煽るようにして呑み干す


「エールも良いがシードルも良いだろ?」


「たしかに悪くねぇな、悪いがちーとばかし確認したい事が有るから出かけてくる、事務所の中を荒らすなよ?事務所荒らしで逮捕するからな」


 ガンツも妾に慣れてきたのか口調も砕けてきたし、悪いやつでもなさそうじゃ、ニヤリと笑ってガンツが出て行った。


 シードルをちびちびやりながらぼんやりと保安官事務所を見渡していく。

 掲示板に張り出してある指名手配犯の人相書と賞金を眺めるとカウボーイやギャングが多いが、珍しいところでは呪術師とかおるのかぁ、呪われそうじゃ、かかわり合いになりたくないのぉ。


 掲示板を見ながら過ごし1時間位たった頃背後に足音と気配。


「戻ったのかガンツ、また呑むのか?」


 掲示板から視線を離さず声だけ掛けた。


「リーナ様、貴女様にお話が御座います」


 ガンツだと思い込んでおった妾は女性の声で呼ばれて振り向く。

 昼間に挨拶したガンベルトメイドさんがお辞儀をしておったのじゃ、同時にガンツが保安官事務所に入ってくるタイミングじゃった。


 ガンベルトメイドさんをよく見ると胸元にはガンツと同じバッジ。

 保安官兼メイドとは珍しいのぉ。

 そういえば彼女は犬耳じゃったなコレが本当の犬のおまわりさんか。

 ほっこりするのぉ。

 妾のほっこり気分はガンベルトメイドさんの腰のホルスターから抜かれた回転式拳銃の銃口と、ガンツの申し訳無さそうな顔。


 犬のおまわりさんの一言で幕を閉じた。


「リーナ様、貴女を禁酒法違反の容疑で逮捕します、ご同行願います」

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