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家族ですから

第三節


「完全に寝過ごした。急がねぇと」

現在の時刻は8時半をまわったところだった。家から学校までは自転車で5分たらずだか今日は始業式だ。早めに行かなければならなかった。昂は自室に入ると弥生が居なくなっていたことに気づいたが今はそれどころではなく制服に着替え、カバンを肩から下げ家を出ていった。


◇◇◇


「よぅ、昂!ギリギリだったな」

「そうだな。俺も焦ったよ直樹」

伊達直樹。彼は昂の友人であり幼なじみだ。一年の時はクラスの良きムードメーカーでだった。

「昂君、おはよう。遅刻するところだったね」

彼女は水無月苺花。高校からの友人である。女子の中では誰とでも話せると言う分け隔ての無い女の子である。

「おいおい。新学期だってのに全然来てないな」

「そうだな。休み明けってのもあるかもな」

「休み明けは起きるの辛いよね。特に昂くんみたいな人はね」

「それって遠まわしにバカにしてる?」

二人は小さく笑い合う。そんな姿を見て何も変わっていない。昨日や一昨日の出来事が嘘のように思えるほどに。だがそれが嘘ではなく現実だったことを突きつけられた。それは……


「お前達早く座りなさい。今日は転校生が来たぞ」

「先生!どんな子なんですか?」

「座れと言ったのが聞こえなかったのかな?直樹くん」

──そう言えば弥生のやつはどこに行ったんだ。朝から見てないけど

「じゃあ入ってください」

「はい」

入ってきた女の子を見て男たちは雄叫びをあげた。一人を除いて。男たちの歓喜の声で教室内は埋め尽くされ一時混乱状態にまでなってしまっていた。

「お前ら!うるさいぞ!女の子が怯えているだろ。ちょっとは黙りたまえ」

机を叩き、立ち上がったのは直樹だった。

──よく言ったぞ直樹

すると何故か直樹は前に立つと膝まづき

「僕と付き合ってください」

まさかの告白だった。だが答えは……

「あの、その……ごめんなさい」

──よく言ったぞ弥生

「直樹は点数引いとくな」

「やめてください先生!僕はただでさえ傷ついた心がさらにえぐれます」

「こんな男はほっておいて自己紹介をしてくれ」

崩れ落ちた直樹はよそに弥生は自己紹介をした。

「桜弥生です。一昨日ここに引っ越したばかりなのでわからないことも多いですが一生懸命頑張りたいと思います」

そこで皆が拍手をしたことで弥生はクラスの一員となった。


◇◇◇


「弥生もこっちの学校に来たんだな」

「はい。淮斗さんが昂さんと一緒の学校に行けと言っていましたので」

「どうやって転学したんだ?」

「校長先生が優しい方で良かったです」

「どおりで今日の始業式が潰れたのか」

想像がついてしまうほど校長は美少女好きだと言うことがわかっているからだ。

「ならこうして帰ることもやめといた方がいいな。同居してるのがバレたら騒がれるしな」

「家族なのですからいいのではないですか。それに昂さんと一緒にいても不快に思いませんし」

少し頬を赤らめながら弥生は言った。そんな態度に昂もドキッとしていた。

──期待しゃうからそういうのはやめようね。男は期待しゃうから。

「初めて家族というものになれたのですから」

この時の弥生の顔は笑顔であって笑顔ではなかった。そんな弥生を見て

「ならしょうがないな。一緒に帰るか」

横目で弥生を見ると笑顔でこちらを見ていた。

──やっぱり笑顔が似合うな

「ありがとうございます」

そのまま腕に抱きつかれ声を漏らしてしまった。

「……マシュマロ」

「何か言いましたか?」

「いや、その……くっつきすぎかなと思って……」

「家族なんですから普通です」

「こんなところ誰かに撮られでもしたら……」

その時後ろからフラッシュ音が聞こえ振り返ると昂達と同じ制服を着た女の子がカメラをこちらに向けていた。呼び止めるのにも遅れ女の子はあっという間にどこかに消えていった。

「なんだったんだあの子は」


◇◇◇


「一難去ってまた一難とはまさにこの時にこそ使う言葉だな」

家に着きポストを開けると黒色の封筒が入っていた。そして内容はもっと安易なものだった。

「『この封筒を24時間以内にほかの人に回せ。さもなくば死ぬ』か。バカバカしい」

「どうするんですか?」

「捨てるよ。誰がやったかはしらねぇけど面白くもなんともないぜ」

だがこの封筒に隠された秘密を知るのは少し後のことだった

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