夢は過去話
第二節
「はぁ~いつもより早く起きちまったな。でもこれから掃除しないといけないからな」
昂は伸びをし、ソファーに座り直す。今日は春休み最後の日曜日。普通の高校生には二択ある。一つは宿題を終わらせた優等生。一つは宿題に追われる者。だが昂は違う。もう一人の住人である弥生の部屋を確保するために物置になっていた部屋の掃除をしなければならなかった。当然、弥生にも手伝ってもらわなければならないが女の子を引っぱたくほど昂は常識から離れた人間ではなかった。結果……
「一人でやるか……一人の方がはかどるか。弥生がやったら余計に散らかるかもしれないし……」
そういいながらテレビをつけ昨日のニュースを見る。やはり天使の話題でニュースは持ちきりだった。いい年のおじさん達がここまで熱心に議論し合うと逆に気持ち悪い。画面が切り替わり昨日の天使が出現した街が映し出される。いや、もう瓦礫の山という方が正しいかもしれない。街は復旧作業を続けているようだった。
「ここは静かだな。平和そのものだな」
テレビを消し、日差しに照らされながら目を閉じた。
◇◇◇
少年は地面座り込み泣いていた。人達は通り過ぎるばかりで誰も少年に話しかけるものはいなかった。少年は肩を小さく震わせて小さな声で「お母さん、お母さん」と泣いている。そんな少年に一人の少女が近づいてきた。年は少年といっしょかそれより若い。
「どうして泣いてるの?」
「お母さんとはぐれたんだ」
「お母さんが来るまで私と遊ぼうよ」
少女は少年の手を引き、遊具を使い遊んだ。遊ぶに連れて少年は寂しい気持ちは薄れていってしまっていた。時間はあっという間に過ぎて夕方になっていた。
「昂!どこに行ってたの」
「お母さん!」
少年は母親の声を聞くと駆け寄った。そしてもう一度少女に近づき言った。
「また今度も遊ぼうよ」
少女は頷き公園から走って出ていった。その日を境に二人は毎日のように遊んだ。そしてあっという間に季節は過ぎた。夏が過ぎ、秋、冬が過ぎた春の三月のある日。四月から少年は小学生になる。そのことを少女に伝えるために公園に向かった。公園に着くとそこには誰もいなかった。少年は待った。十分、三十分、一時間。だが、少女が来ることはなかった。少年は諦めて帰ろうとした時だった。眩しい閃光と爆風に少年は目が眩み風に飛ばされた。次に目を開けるとそこは公園だった場所だった。周りに火の海になっていた。少年は怖くなった。
「家に帰らなくちゃ……」
家へと走った。だが、少年の希望は一瞬にして砕けちった。家はもう……
◇◇◇
「うわぁぁぁぁあ!!!」
昂は目を覚ますと額からは汗が流れ、息切れを起こしていた。周りはもう暗くなっていた。窓からは月明かりが差し込んできている。時計を見ると18時になっていた。
「寝ちまってたのか……」
そして昂は今日もリビングで寝る覚悟をした。
「弥生もまだ寝てるのか……そろそろ起こしに行ってやるか」
階段から声をかけてみるが返事は返ってこない。部屋の前に行きノックをするが声が返ってくることはない。
「入るぞ」
部屋の中は暗くベットの上に人影があるということしかわからなかった。電気をつけて弥生を見ると昨日のそのままのカッコで寝ていた。
「結局そのままかよ。おい!起きろ。夜だぞ」
肩を持ち体を揺するが起きない。
「一人で飯でも食べるか」
起こすの諦めて部屋から出ようとした時だった。
「あれ?昂さん?」
「食い意地でも張ってんのかよ……」
後ろに向くとまだ寝ていた。ただの寝言だったようだった。ため息を漏らしリビングへと帰っていった。そして例のごとくレトルトカレーをつくって食べると電気を消してソファーに転がり寝てしまった。こうして二日目も何もなく終わった。
◇◇◇
少し外が明るくなった早朝。特徴的な赤色のバイクがポストに手紙を入れていく。三上家のポストに一通の黒色の手紙が入れられた。この手紙がこれから運命を決めることをまだ誰も知らなかった