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妖怪と話そう!


腕を組み1人で納得している図書委員。


何言ってんのこの子。なに「うんうん」って頷いちゃってんの。


「ええと、そういうことってどういう・・・」

「おかしいと思ったですよ。今まで見えなかったのに急に見えるようになるなんて。やっぱりきっかけがあったですね」

「あの、ちょっと」

「しかし地縛霊ですか。悪霊じゃないから仕方ないですが、全然気付かなかったです」


こいつ・・・!このままじゃこいつは一人で納得して帰るパターンもありうる。俺は図書委員の肩を掴んで言った。


「ちょっと待て。言ってる意味が全くわからねえ。説明しろ図書委員」

「月子は図書委員じゃありません。月子は月子です」

「じゃあ説明してくれ月子」

「い、いきなり呼び捨てですか、お兄ちゃん・・・」


月子は顔を赤くして手を頬に当ててしなを作った。


「お兄ちゃんねぇ」


横からから感じる夏海のジト目が痛い。梅島さんはきょとんとしている。どうやらあまり妹萌えなどの文化には詳しくないらしい。そこだけは救いだ。


「と、とにかく説明してくれ!」

「はいです。月子はここの制服を着てはいますが設定年齢がもう少し下の子供と言うことになってるですので、年上の男性に対してお兄ちゃんと呼んだのです」

「お兄ちゃんの説明じゃねえええ!しかも設定年齢って何!えっ、いきなりメタ視点?どうなってんの!?」

「月子は座敷童子ですから」

「あ、そゆこと。ってえええええ!!」


幽霊の次は妖怪かよ。俺は腕時計型召喚具は持ってねえぞ!


「リアクション感謝です。座敷童子は驚いてもらうのが一番嬉しいのです」


にぱっという音が似合うような顔で笑う。それを見た夏海が声を上げる。


「なるほどー!座敷童子ちゃんなんだね!ちょっと触ってみていい?」

「はいです!」

「おほー!可愛い!あきちゃんこの子めっちゃ可愛い!」

「のわああああ!お姉ちゃんもいい匂いがするですー!!」


頭ぐりぐりなでまわす夏海。月子もまんざらでもない様子だ。

この様子をみると妖怪だからといって特に害はなさそうだ。それに確か、座敷童子って良い妖怪だったよな。とにかく、なんでこいつがここにいるのかを聞かないと。


「で、その座敷童がなんで急にあらわれたんだ」


俺が椅子に座りながら話を元に戻すと月子はこっちを向いて言った。


「別に急にあらわれたわけじゃないです。月子はずっと学校に憑いてる座敷童子です。そっちが急に見えるようになったですよ」

「???どういうことだ?」

「認識の問題です。よっぽど小さな子供はともかく、普通の人は『妖怪なんて居ない』って思ってるです。そう思ってる人に月子は見えません」

「なるほど。そういえば座敷童子って小さい子供にしか見えないって言うもんな」

「お兄ちゃん顔がバカそうなわりにいい事言うですね。説明にメリハリが付くです」

「バカそうは余計だ」

「顔がバカなわりにいい事言うですね」


断定に変えちゃった!そしてそのせいで目や鼻のパーツの配置がおかしい人みたいになっちゃった!


俺と月子のやりとりを楽しそうに見ながら夏海が言う。

「あきちゃんはパーツの配置はおかしくないけど全体的に見ていまいちなんだよね」

うるせえ!


「わたしはあまり整いすぎている男性はどうかと思いますのでいいと思いますよ?」

適度に整ってないってことね!梅島さんまで!


「まあお兄ちゃんの顔がバカでブスなのはおいといて」

お前はひどすぎだろ!


「とにかく、そこの幽霊さんを見てしまったことにより『そういう存在っているんだ』と不思議な存在を当たり前に思ってしまったです。そうなると妖怪である月子の存在も認識してしまい、見えるようになったですよ」

「認識の問題、か」

「そうです。認識次第です。月子達は実在しているし、実在していない。そういう存在なのです」


ヒッ・・・

ひっ・・・

非っ・・・


「非実在青少年だーー!!!!!」

俺は立ち上がり絶叫していた。


「やった!やった!あった!あったんだ!俺は見つけたんだ!例え見た目が子供の相手に何か間違いを犯したとしても法に触れることのない存在が!ついに俺は見つけたんだーー!!!ラピュタはあったんだぁーー!!」


ゴイン


夏海の投げた金属バットが眉間にめりこむ。


「それで、月子ちゃんはどうしてここに来たの?」

ゆっくりと倒れていく俺を無視して夏海が月子に聞く。


「そうですね。お兄ちゃんが何故月子の事が見えたのか確かめに来たです。一応この学校の平和を守るのが月子の役目ですから。おかしなのが流れてきたらそれなりに対処しないとならないです。弱い人間の悪霊程度なら月子でも対処可能ですから」


「それって梅島さんを力ずくで退治するってことか。・・・そんなことはさせない!」

俺は床に倒れたままの姿勢でキメ顔で言ったが、月子は一瞥もくれなかった。ちょっとくらい見ろよ。


「それは違うです。さっきも言ったけどその幽霊さんは悪霊じゃないです。しかも成仏希望です。それなら素直に成仏してもらった方がいいです」

「そういうもんなのか?」

「その方が月子が楽なのです。除霊は疲れるです。成仏なんて未練の鎖を断ち切れば良いだけですし」

「未練の鎖?」

「はいです。幽霊さんというのは何か未練があって残ってるです。やり残したこと、ってやつです。それを叶えてあげたらおしまいです」


月子はてのひらをパッと開き、魂が霧散する様子を示した。それを見て俺と夏海は顔を合せる。梅島さんを成仏させてあげる方法があるんだ。俺たちで叶えてあげることが出来るかもしれない。


「あと、月子も幽霊さんの成仏のお手伝いをするです」

「え・・・なんで?」

「ヒマだからです」


そんだけ!?そんだけの理由で!?


「正確に言うと、久しぶりに人と話したり、人に認識してもらえて嬉しいからです」


少しだけ恥ずかしそうに月子が言った。そうか。こいつも、寂しかったんだな。元人間の梅島さんと違って月子は最初から妖怪だ。それでも、ずっとひとりってのは寂しいもんだよな。


「わかった。よろしく頼むよ。俺達も色々知ってる月子が居てくれると心強いよ」

「はいです。ちなみに『銀ブラ』とは銀座をブラブラするという略ではなく、銀座でブラジルコーヒーを飲むの略です」

「ホントになんでも知ってんな!」

「学校に憑いたのですがヒマなので図書室の本はほとんど読んだです。博識なのです」


ひょっとして、と思い改まって言ってみた。


「月子、お前はなんでも知ってるな」

「はいです!」


どうやらうちの学校の図書室には化物語は置いてないみたいだな。




次回は1月7日にアップ予定です。

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