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図書室に行こう!


完全にミートポイントで捕らえられた後頭部をさすりながら俺はひとり図書室へ向かっていた。しかし夏海よ、あのスイングスピードは帰宅部にしておくには惜しすぎるぜ。お前だったら俺のことを甲子園に連れて行くことだって・・・いや、もしもの話はやめておこう。何故なら俺は特に野球に興味がないからだ。


なぜ図書室に向かっているかというと、幽霊に関する書籍を探すためだ。一人の幽霊を成仏させる為には俺たちには圧倒的に知識が足りない。それを補完する為にまずは先人の知識を借りようというわけだ。


なぜ俺がひとりで向かっているかというと、まあ、そうだよね。夏海が図書室に行って俺と梅島さんが二人っきりなんてことはないよね。「梅島さんのパンツと死後の世界はセットになりますが、ご覧になりますか?」とにこやかに金属バットを構えた夏海に言われては仕方ないよね。


しかし・・・


しかし先ほどの会話、すごい収穫だったぞ。『触れようと思えば触れられる。触れられたいと思えば触れさせられる』とはな・・・ということは例えば俺の身体をすり抜けて手だけであんなことをしたり、実際にそんなことをする際には半透明の彼女であるからしてまさかの夢の断面図が見れてしまったりするのではないか!漫画の中だけの描写だと思っていたがこれの実現可能性がわずかでも存在するとは!!


まあ、前提として梅島さんが『触れてほしい』って思わないといけないので、あんな可愛い子は俺みたいなもんにそんな感情を持つはずもないんだけどな。ただひょっとしたら成仏まで持っていけたら!そうすればひょっとしておこぼれというか最後の思い出作り的な展開もないわけではないのではないだろうか!1%でも可能性がある限り、俺は諦めないぜ!!


と、ガッツポーズを決めた所で着いた。

図書室は夏休みなのにクーラーが効いていて、受付では制服を来た女子が座って本を読んでいた。俺は私服のままだったのでまずいかなと思ったけど、女子生徒はこちらを気にもとめていない。図書委員かな?夏休みまでご苦労さまだな。


「あの、すみません」


女子生徒に声をかける。一瞬チラリとこちらを見るが、すぐに目線を本に戻した。なっ!なにそれ!ひどい!この図書委員ひどい!中学の時に女子からされてた態度だこれ!「なんだ、竹ノ塚か」って言わんばかりの態度だ!怖い!初対面なのに!!


初対面、だよな?女子生徒のことをよく見てみる。髪はおかっぱでツヤッツヤ。目はくりんくりん。背は、座っているからわからないけど多分めちゃくちゃ小さいな。てゆうかこの子、襟章見る限り同級生だけど本当に高校生かな。肌は真っ白だけど、ほっぺが少し赤い。田舎の子供って感じだな。


「あのー、聞いてます?」


そう言って女子生徒の前で手をヒラヒラと振る。顔はもちろん満面の愛想笑いだ。すると女子生徒はくりんくりんの目を見開いてこっちを見た。そんなに驚かなくても。


「つ、月子のことですか!?」

「月子って言うんだ。はい。他に誰もいないでしょ」

「あ、す、すみませんです。なんの用ですか?」

「幽霊とかそういう系の図書を探しているんですが」

「あ、はい。それでしたらAの2番の棚の一番下です」


探すのに手間取るだろうなと思っていたがさすが図書委員。完全な無視をキメた割に態度も丁寧だし。多分よっぽど本に集中してたのかな。大量の幽霊関係の本を抱えて受付に戻る。


「あ、あの、貸出しですか?」

「あ、大丈夫。自分でやるから。本読んでていいよ」


基本的にうちの図書室はセルフサービスだ。学生証の番号を打ち込んで本の裏にあるバーコードをリーダーで読み込んで貸し出し処理をする。ピッピとレジ打ちの気分を味わっていると、図書委員はじっとこちらを見ている。


「ん?どしたの?」

「なんでも・・・ないです」


まあこんだけ大量に幽霊関係の本を借りてたらおかしなやつだと思うわな。図書委員が本に目線を戻した(でもチラチラこちらを見ていたが)のを確認し、10冊以上の本を抱えて開かずの教室に戻った。


***


「あきちゃんおっそいよ!」

「しょうがねえだろ、こんだけ大量に持ってきたんだから」

「夏海さんとふたりで脳内出血が遅れて来てどこかで倒れてるんじゃないかって話をしていたんですよ?」


コロコロ笑いながら梅島さんが言う。良かった。女同士で話をして、冗談を言い合えるくらいの仲になったんだ。冗談、だよな?


大量の本を見て夏海は少々げんなりしている。まあ仕方ないよな。勉強が苦手な俺らはこういうのはちょっと厳しい。


「でも、よしっ!ちふゆちゃんを成仏させるため、頑張って読むぞー!!」


夏海が拳を上に突き出す。「オー!」と俺と梅島さんと図書委員が続く。


図書委員?


いつの間にか俺の後ろに図書委員が居た。小さすぎて気付かなかったのか!図書委員はまじまじと梅島さんを見ている。これは、やばいのかもしれない。図書委員が騒いで先生に言いに行ったりしたらおおごとになるだろう。そうしたら梅島さんの成仏なんて、俺達に手伝うことはできなくなるかもしれない。どうしよう、なんて言おう。俺が躊躇していると図書委員が口を開いた。


「なるほど。そういうことですか」


次回は1月6日にアップ予定です。

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