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検証してみよう!

「うーむ・・・」


家でさっさと朝飯を済ませてから俺と夏海はまた開かずの教室に戻り、梅島さんを挟んで向かい合っていた。


「そ、そんなに見つめられると恥ずかしいです・・・」


梅島さんは身体をもじもじとひねる。くそー、とんでもなく可愛いな。しかし目を凝らして見ると、やはり梅島さんは透けている。そして梅島さんだけでなく、梅島さんが着ているセーラー服も透けていた。セーラー服ごしに考えている夏海が見える。


「やっぱり全体的に透けてるな・・・」

「うん、そして・・・」


話しながら夏海が後ろから梅島さんの肩に手をかける。と、夏海の手は梅島さんには触れず、そのまま通り抜けた。

「触れることも出来ないってことだね」


と、言うことは。


「と、言うことは、身体と服は別のレイヤーで表現されているものではないということだ。もしも別のレイヤーで表現されているとしたら近づいたり角度を変えたりを繰り返すことによってちょうど服と身体の間に俺の目を持っていくことにより梅島さんの美しい肢体を思う存分に堪能するぅわああああーーー!!!」

「あきちゃん、何言ってんの?」


にこやかな表情でどこからか持ってきた金属バットを片手で振りかぶっている夏海。


「ち、違うんだ!妄想がつい口から!!」

「そしたら何も違わないでしょうが!」


夏海がバットを振り下ろそうとすると、クスクスと梅島さんの笑い声が聞こえた。


「おふたりは本当に仲が良いんですね。息がピッタリです」

「まあ、こんなエロバカでも10年以上一緒にいるからね」


夏海がバットで自分の肩を叩きながら言う。た、助かった。


「それじゃあ梅島さんは見えるだけであたし達と触れたり、物を動かしたりは出来ないってことになるのかな?でも、あれれ~?そうしたらここって2階じゃん?触れられないなら1階に落ちちゃわない?」

「子供名探偵口調をやめろ」


しかし夏海の疑問ももっともだ。何にも触れられないのならば校舎の1階に落ちるだろうし、それどころか地面も透けて行ってマントルを超え、核をすり抜け今頃ブラジルに出て、あられもない姿でリオのカーニバルで腰を振っているはずだ。あられもない姿で腰を振る梅島さん・・・ゴクリ。


「あ、いえ、何も触れられないってことはないんです」


カーニバル終了。まあそうだよね。「というと?」俺は続きを促した。


「ええと、そこは私の意識によるところが大きくて、私が手で触れようと思った時にはそれに触れることが出来るんです。同じように足で立とうと思った時にはそこに立てるんです。まあ、足はないんですけど」


梅島さんは恥ずかしそうに笑う。なんで!?幽霊ギャグなの!?


「普段は机も椅子も通り抜けちゃいますけど、さっき竹ノ塚くんのお財布を拾って渡したじゃないですか。そういう風に『これを拾おう』って思うと触れるんです」


なるほど、そういうことか。梅島さんのさじ加減ってことね。すると梅島さんは夏海の方を向き直った。


「夏海さん、もう一度さっきのように肩に触れてみてください」

「え、うん、いいけど」


夏海が梅島さんの肩に手をかけると「ポン」と音がした。


「えっ」

夏海が驚いて梅島さんを見る。

「はい。そうなんです。わたしが触れて欲しいと思えば、触れてもらうことも出来るんです」


「ふむ・・・」

俺は静かに考えこんだ。しかしその動きと裏腹に、脳はフル回転していた。普段は触れられない、しかし本人が触れて欲しいと思えば触れられる。ということはたとえ幽霊でも男と女の関係になることも可能!しかも触れるかどうかは本人の意思次第!!口では「いやぁ」と言っていてもそこに触れられるとすれば心では許しているということになり、これぞ本当の意味での「口では嫌だと言っていても身体は正直だな」が発動するということになるということか!!ええい!妄想がはかどるぞ!


「・・・ちゃん、あきちゃん!」


夏海の声で現実世界へと戻される。危ない。あやうく帰ってこれなくなるところだった。「大丈夫?」と心配する夏海に頷き、梅島さん向き直る。


「な、なるほど。だいたいわかったかな。うーんと、あとはその足かな?」

「足・・・ですか?」

「うん。いや、見た感じ足が『無い』んじゃなくて『見えない』って表現が妥当だと思うんだ」

「そう・・・ですね」

「実際のところ、どこまでが見えててどこからが見えてないのか、そこをはっきりさせて検証することで成仏の可能性が飛躍的に上昇すると思うんだ」

「そうなんですか!」

「つきましては、少しずつ、ゆっくりでいいからスカートを上げていってもらってよろしいかな」

「え、でも・・・」

「大事なことなんだ」


俺が真剣にそう言うと、梅島さんは顔を真赤にしながらもスカートの裾を持った。そしてゆっくりと手を引き上げる。5センチ程上がり、膝があわらになる。梅島さんは耳まで赤く染め、横を向く。


「大丈夫。ゆっくり。ゆっくりだよ」


優しく、警戒されないように声をかける。警戒心の高い獲物はハントする瞬間が一番逃げやすい。ここで慌ててはいけない。6センチ、7センチ、8センチの所までスカートが上がった瞬間。


ゴインッ!!!


鈍い金属音が頭に響く。薄れゆく意識の中で、金属バットを振り切った夏海の姿が見える。ああ、8センチまで夢を見させてくれて、ありがとよ・・・




本日中に完結するつもりでしたが、今日はここで一旦終わらせて頂きます。

すみません。

次回は明日、1月5日にアップする予定です。

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