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学校へ行こう!(昼に)

濃い青色ののっぺりとした空に照りつける太陽。天気予報では最高気温35度と言っていたが、体感だと40度超えてるんじゃないかと思う。本来ならば俺は部活をやっているわけじゃないから今頃はクーラーの効いた部屋でゴロゴロと甲子園でも見ながらジンジャーエールを飲んでいるはずなんだが、何故か夏休みの校舎を見上げていた。


イチ、ソーレ!ニ、ソーレ!と号令をかけながら野球部がランニングしているグラウンドの脇を通り抜ける。甲子園を見てても思うんだけど、なんで高校野球ってわざわざ夏にやるんだろうな。春とか秋の過ごしやすい時期にやった方が選手本来の力が発揮出来て、プロのスカウトだって良いだろうに。それがダメならせめて屋根のない甲子園球場じゃなくて東京ドームでやればいいのに。


いつもの下駄箱から上履きに履き替えて、ガランとした校舎を歩く。夏休みだから冷房は切っているはずなんだけど、校舎ってのは何故か涼しいんだよな。2階に上がり、自分の教室を覗いたけど、やっぱり誰もいない。遠くでセミと野球部の声が聞こえるだけだ。うちの学校は進学校だから部活もまあ、そんなに強くもない。受験勉強の為の鍛錬にしてはちょっと今日野球するには暑すぎるな。


校舎2階の奥の方にある音楽室。その奥には音楽準備室。そしてその角を曲がった所に「開かずの教室」はある。昼間なのにその奥まった教室への廊下は光が届かず、薄暗い。近くにある蛍光灯のスイッチを入れるが、蛍光灯は反応しなかった。


まあ、誰も使ってないからな。仕方ない。ひんやりとした壁に手をついて開かずの教室の前まで歩く。教室の扉は普段はベニヤ板で固定されている。そのベニヤ板が少し横にずらすだけで取っ払える事を発見さえしなければこんな暑い中、学校まで来る必要はなかったのに。


『普段は』と言ったのは、昨夜俺がそのベニヤを外して横に立てかけて、そのまま帰ったからだ。今はそのまま入れるようになっている。「フー」と大きく息を吐き、引き戸を開ける。開かずの教室といっても作りは普通の教室と同じで、大きな窓からはグラウンドでキャッチボールをしている野球部が見える。机と椅子も20組ほどあるが、昨夜の俺らのせいだろうか、何組かの机と椅子は倒れていた。


はあ。さすがにこのままってわけにもいかないよな。そう言いながら倒れている机を直す。そこで割れた懐中電灯を見つけた。ウチのだ。あー、割れちゃってたか。まあでも電球だけだから交換すれば親にはバレないかな。で。そんなもんよりも大事な財布を、多分ここに落としてんだ。誰もいない教室で這いつくばって財布を探す。


「竹ノ塚、明さん?」


やさしい声で名前を呼ばれた。でも開かずの教室で急に後ろから声かけるなんて、ビックリするだろうが。夜だったらまた昨夜の二の舞になるとこだ。知り合いだったら一発ぶん殴ってやろうと思い振り返ると、そこには。この世のものとは思えない、美少女が居た。


陽の光を浴びてキラキラ光る、ふんわりとした綺麗な髪。白いというより、透き通るような肌。吸い込まれそうな大きな瞳。少し首をかしげてニコリと笑う。かなり細めで、セーラー服からすらっと伸びた手。そしてイマドキの女子高生にしては控えめな、膝丈のスカートからすらっと伸びた足。が、無い。


「ぎゃああああああああああああああ!!!」


2日連続、今期2度目の悲鳴。




次回も本日、1月4日中にアップします。

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