第一話 転校
第一話
「雄一、私たち引っ越すことになったから。」
「・・・・はっ!」
そう、僕「妹尾 雄一」は、高校二年生のある日引っ越すことになった。僕の父親「妹尾 隆弘」はそこそこ有名な作曲家であり、家族も音楽一家であった。ちなみに僕はヴァイオリンをやっており、母親「妹尾 晴子」もヴァイオリンの先生をやっている。その父が「新しいインスピレーションを見つける」などと言い出し、突然に決めた事だったのだ。都会に住んでいた僕にとって、ド田舎に引っ越すことはあまり気が進まなかった。
「たのしみだなぁ〜、なあ晴子」
「そうですねっ、隆弘さん」
いつもハイテンションな父親とおっとりしている母親は、僕の今の気分なんか分かっちゃいなにいだろう。案の定、ここでの生活はやはり不便だった。学校までは徒歩で三十分かけて通わなければならなかったし、コンビニやファミレスなどはかなり離れたところにあった。しかし・・・
「ここでなら新しいインスピレーションが見つかるぞ!」
父親はそんな僕の憂鬱な気分お構いなしにはしゃいでいる。母親はそんな父親を微笑ましい顔で見ているのだった。そして、当然のことだがここの高校に通うので、その視察に向かった。事前に手続きは済ませてあったので、簡単な面談と校内見学だけで終わった。
「明日が楽しみね、雄一」
「・・・・・そうだな」
まだあまり憂鬱はぬけてなかった。その帰り道、僕は一人の女の子とすれ違った。髪は肩まで届いたセミロング、華奢な体つきで、大きい丸い目が印象的だった。僕はあまり他人に興味を持たないのだがその子のことだけは妙に記憶に残った。すれ違ったあと、彼女の視線をずっと感じていたのは気のせいだろうか・・・・?
久しぶりに新作を作ってみました。
今回は恋愛ものに挑戦です。
どうぞよろしくお願いします。