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1. 日常


何十年か前に、

国の偉い研究者が開発した、

運命の番を識別するデータベース


おとぎ話とか都市伝説だとかいわれていた

運命の番が、あちらこちらにみられるようになった。



まさに絵に描いたような【運命の番】な両親をみて育った俺は、人よりも運命の番に期待して生きてきた。


目が合った瞬間、

電流が走ったように感じ、

愛おしいという気持ちが溢れて止まらないー


濃く甘いフェロモンが香ると、

理性なんて吹っ飛んでしまい、

番の存在だけで頭と身体が支配されるー


本能からはじまる恋だけど、

理性を絡めた愛に変わるー



国も、学校も、親も、

みーんなそうやって口を揃えて話すもんだから、

14歳ではじめて Ω だと診断されたとき、

なによりもまず、運命の番が俺にもいるってことに、すげー喜んだ。

それからの毎日は、どこに行くにも楽しかった。

俺の番どこにいるんだろう。

運命なんだし、会えるんじゃねーかな。

って、国が指定する番との顔合わせまで待ちきれなくて、俺の番を求めて駆け回った。





そして、現在 19歳 もうすぐ大学2年になる俺は、

運命の番と一緒に暮らし始めて、1年になる。



「…愛してる。バース性なんて関係なく、

俺という人間が、君だけを愛して求めてるんだ。

わかってるだろう?」


なーんて、甘ったるくてくさいセリフを

今日もつらつらと垂れ流す俺の運命の番。



「仕事になんて行かずに、

一瞬たりともきみのそばから離れたくないんだ。

発狂しそうだよ。…あーー好きだなあ。」



心の底から愛おしそうな微笑みを浮かべて、

幸せそうに愛を囁く。



「…じゃあ切るね。また電話するよ。」




そう。

いつもいつも、必死に愛を囁くのだ。



俺じゃない、他の男に向けて。





「…すんません。…ヒート、はやくきちゃって…」


「謝ることじゃないでしょ。寝室いこう。」



国の制度により、

運命の番は、高校卒業と共にパートナー化を義務付けられる。

国から与えられた豪華なお家に住み、

Ω のヒート時には、α には休暇と Ω の看病が義務付けられ、その間、様々な援助や行政サポートが受けられる。

少子化や Ω への性的暴行を防ぐための制度ともいえる。


非人道的な策にも思えるだろうが、

運命の番をくっつける制度だからか、

最初は抵抗がある人達も、みな少女漫画のごとくおしどりカップルとなり、番のヒートを共に過ごせるため、非難の声が全くあがらないのだ。


おそらく、俺たちは、

この制度に苦しめられてる唯一の番だろう。


俺の番様は、

運命の番である俺ではなく、

幼馴染の α の男と少女漫画のような恋愛をしているのだ。


運命の番が幼少期に亡くなって、

この制度が適用されていない幼馴染くんと普段一緒に暮らしている俺の番は、俺のヒートのときだけ姿を現す。


最初のうちは、

そんなに愛しているのなら、

2人で生きていけよ!俺みたいな当て馬相手にしてねぇでよ!

って思うことはあったが、

俺の番 “東雲(しののめ) 右京(うきょう)”は

運命の番制度を立案した、当時の首相の孫。

その後も一族の者が何度も総理大臣を務め、

あげく現代の首相が彼の父親ときた。


愛しの幼馴染を餌に脅されているのか、

逆らえない様子。


国で唯一、外国有力企業達と張り合える巨大財閥である我が家・神楽坂(かぐらざか)家の嫡男が運命の番となれば、裏で手を回して俺をどうこうするなんてのも、絶対に出来ないだろう。


俺、平凡な家庭の子供だったら、

とっくに殺されてそうだな…


なんて心底思うくらいには、

東雲右京の幼馴染への執着は強い。



「神楽…」


俺のヒートにあてられて、

ラットになったときだけ、

こいつは俺の名前を呼ぶ。


普段は、目も合わせようとしないくせに。


運命の番の中でも、歴史上稀にみるレベルでかなり相性が良いらしく、俺のヒート中のフェロモンを嗅げば、必ずラットになって、毎度ひどく欲情しているのに、俺に少しの気持ちもわけることなく、ひたすら幼馴染への愛に生きる 俺の番。


一応、Ω としての本能なのかな

嫉妬というか、独占欲のようなものは、

ズキズキと俺の胸を痛めつける


だけど、それ以上に、

こいつの幼馴染へのデカすぎる愛情に、

太刀打ちできるはずもなく、

応援してしまっている俺もいる。



すげーじゃん。



本気でそう思ってしまっているのだ。




中学3年生、お互い15歳の誕生日。


はじめて顔合わせして、

番となったあの日ー


それ以前に、幼馴染と身体の関係があったのかなんて、知るよしもないけど、あの日から俺以外を抱けなくなったんだ。


それなのに、抱けもしない幼馴染を一途に愛し続けるなんて、相当愛してなきゃ無理だろ。




あーー

こんなん、勝ち目、ねぇなぁ…





ラットで理性がぶっ飛んでる東雲が全身に散りばめた、真っ赤な所有印達を眺めて、

でもなんの意味もねぇもんなぁ…これ…

って女々しく嘆く俺


「…はぁ」


乱れたベッドの中で、

ふと横をみるも、空虚な景色が目に入る



「…7日間おつかれ。ごめんねいつも。」



届くはずのない声を口にしたあと、

自分に呆れて笑ってしまう


「…あはっ、なーんで好きになっちゃったんだろ。」




あーあ。

運命の番の夢物語なんて、

信じなきゃ良かった。


そしたらもう少しくらいは、この虚無感、

どうにかなったんだろうなぁ。




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