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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第2章

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誕生パーティー5


「わぁ、がらが悪い!」


パーティー終盤になっても物珍しそうに会場をくるくる動き周るリリは、少し疲れると俺の所に戻って休憩してはまた遊びに行くという行動を繰り返している。

その行動がどれだけ周りの男達からの羨望の視線を集めているのか全く気がついていない。


「何がだ?伝統的な貴族の嗜みだぞ?」


「あれ?この匂い、冬の森みたいな匂い。シェイド様の匂い」


魔蒸香(まじょうこう)だよ。見た事なかったか」


「私の世界のタバコと同じ形だけど、煙じゃなくて蒸気なんですか?ここ、いろんな匂いがします」


コーナーに配置された広いソファーに座る俺達を見て眉を顰める姿さえも可愛い。


「魔蒸香は種類が数百あるんだよ。しかも掛け合わせて使う。微量に魔力を持つ植物や鉱物から作られる。つっても、庶民の魔力の十分の一ってとこか。俺のはウッド系だな。心地よいと感じる種類を探して、自分の魔力に合った物を蒸気にして吸う。リリは俺の魔力と相性がいいから、同じのでいいだろ」


「んー、私はいいです。魔力は、シェイド様のが欲しい」


「あ、そう、デスカ……」


「キスがいい」


「…………………………………………あとでな」


俺の答えに満足したのか、会場に戻り楽しそうにみてまわるリリは花の間を飛び回る妖精のようで、会場中の男がリリを追って目線を動かす。リリ本人はカケラも気付いていないが。


「妖精ちゃん、気付いてないけどすっごいおねだりだね~身も心もあなたの虜ですって言ってる様なもんなのに。魔力が欲しいなんて、男の妄想の中のセリフナンバーワンだよ~」


「かっっっわいっ!ナチュラルに脚の間に座るのやっべぇ!!うっわ!鼻血出た…!!俺のものになるはずだったのに!時間かけて絶対落とす!」


「うるさい、思春期新人少年。無自覚だろうな、あのご様子」


「そうでしょうね。リリ嬢はこちらの常識に不慣れですし。魔力の相性が良い相手なんて見つからないのが普通です。無自覚であれをされたら普通なら理性がとびます」


「おじさんの魔力もあげたい!!!もう全部あげちゃう!!絞り出す!」


「姫様……歩く凶器……」


「はぁ~~~、何なんだあの可愛い生き物!!妖精か!?妖精だな!?もうさらって部屋に戻りてぇ!俺の理性!!仕事しろ!!パーティーの間だけでいい!!耐えろ俺!!」


「団長、冷静になるためにヘスタのご令嬢問題を片付けてきては?先程からこちらをチラチラと伺っておりますよ」


クリフが視線で示した先には、真っ赤なドレスを着たヘスタの令嬢がソワソワとこちらを伺っている姿が見えた。


「忘れてた……そういえばそんなのいたな。めんどくせぇ……」


「思春期君、取り次いできなさい。あなたの婚約者でしょう?」


「んなわけねーだろ!!金で買ったんだよ!」


「わ~い、やっぱり~!無駄金うける~!!」


「お~若い奴は無駄金使ってナンボだよ!おじさん今度娼館おごってやる!」


「ここは地獄か!!なんでこんな強いやつばっかいんだよ!!!!」





◇◆◇





「わたくしは公爵様の魔力を受けられる体でしたわ!なかなかおりませんでしょう?きっと相性がよいのですわ!今日も楽しみにしておりましたの。終わったら、ダンスを踊って下さいませんか?」


面倒事を済ましてしまおうと、重い腰をやっと上げ対応したが、甘ったるい香水とギラギラとした目に辟易する。


「婚約者がおりますので」


失神したくせによく言うなと思っていると、背中に小さく華奢な感覚を覚えた。


「シェイドさまぁ、浮気はだめれす」

潤んだ桃色の瞳に上気した頬、とろんとした表情にギョッとする。


「なんだ!?誰の仕業だこれは!?」


「何がですかぁ?だっこしてくらはい。シェイド様は押しに弱いから、私が守ってないとらめれす」


「何食った!?いや……酒か!?」


「ふふふ~セフィロス様のプレゼントに、おいしいのありました~!」


「あんの、クソ坊主が!」


両手を広げて抱っこをせがむリリに

左肩の上衣をはずして頭から被せて抱き上げる。


また香水の香りを移されたら面倒なので、小さな魔力の球を女の目の前に出す。


「本来でしたら、三割五割七割の順で流すのですが、魔力差が大きいため一度目は計測出来ないほど、二度目は千分の一程の力で流しました。千分の一でもかなりの痛みを感じたと思います。流すのは危険ですので触れるだけに留めましょう。今日は五百分の一程度でしょうか。触れようとすれば、感覚でわかると思います。触れても大丈夫か、そうでないか。医師を呼んでありますが自己責任でお願いします」


「いいなぁ、私も欲しい……」

ポツリとリリが呟くのを聞いて、口角が上がりそうになるのを慌てて止める。


「おまえはあとでやるからちょっと待ってろ」

耳元で囁いてやると嬉しそうに笑う。

はぁ、クソ可愛い。


ヘスタ子爵令嬢が魔力球に手をかざそうとした姿勢のまま固まっている。あれだけでも相当の痛みと圧を感じるんだろう。リリはうっとり見ているが。


「シェイド様ぁ、私にも出来ます?魔力、流すの」


「練習すればな。相手も自分の体の一部だと思って循環させるイメージだな。それよりも水飲め。おまっ、その顔やめろ、これ終わったら部屋に下がるぞ。もう見せられるレベルじゃねぇだろ」


「循環かぁ……こう?」


「~~~~~~っ!?!?!?」


リリの剥き出しの魔力がキスと共に流されて、気が遠くなるほどの心地よさが押し寄せる。

あまりの快楽に腰が抜けそうになって、リリを抱えたまま膝をつく瞬間に移転魔法陣を複数展開させる。


リリを抱いて自室のベットに移転した俺は天を仰いだ。


「~~~~っんとにお前はマジでどうしてやろうか……っ」




◇◆◇




「シェイドが膝つく所見たかったな~。一生に一度見られるかどうか。姫ちゃん手加減なしの剥き出しの魔力流しちゃったんじゃねぇ?想像しただけでおじさん腰抜けそう!!黒竜が出て来た時も眉一つ動かさなかった奴が焦りまくってたな~」


「出した移転魔法が妖精ちゃん用に魔法陣だったのと、起動を早めるために重ねがけしてた事はさすがとしかいいようがないよね~あの一瞬でさ~」


「そりゃそうだろ。シェイドだし」


「僕あんな事出来ません……」


「アラン、出来ないのが普通です。ヘスタのご令嬢、汗びっしょりのまま失神しておりますね。触れてもないのに。はぁ、あの魔力球を誰が処分するのか決めましょうか。客がまだ沢山おりますので抜剣は無しです」


「え~僕やだよぉ。身内なら少しはマシでしょ!?アレックスさんか副団長お願い!」


「いやだ」

「嫌だよ~おじさんだって怖い!」


「姫様に取り込んでもらうしか……」


「思春期少年、行って来なさい。上官命令ですよ」


「は!?俺かよ!?」


「ぷ~クスクス!思春期少年~!!!」





思春期ルーファス「い゛っっっってぇーーー!!!」


クレッグ/ヴァルド「ワハハハハハハハハ!!腹いてぇ!」


アレックス 「うるさいのが増えた」


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