誕生パーティー3
「リリ、お前その顔やめろ……」
「だって、シェイド様すっごくかっこいい。はぁ、大好き……」
シェイド様がかっこよすぎてステップ忘れそう……
全部リードしてくれて、任せるだけってこういう事なんだなとシェイド様と踊ると分かる。揺蕩う波に乗っているみたいでふわふわする。
「………………この世界でリリだけだな。男に好き好き言うのは……」
「シェイド様は押しに弱い事が分かったので、私は一生押せ押せモードです!!」
「ブッッッハ!そんな理由かよ!」
「大事な事です!!!!」
「俺の奇跡。たとえ目が覚めても、もうはなしてやれない」
「大丈夫です!私がしがみついてますから!!っっわわっ!!」
子供みたいに高い高いされて、クルリとまわって降ろされた所で曲が終わり、一斉に拍手が鳴り響く。
「踊ってたの、私達だけだった!?」
「今更気づいたのか。主役の仕事はここまでだ。あとは好きに遊んで良いぞ。テオと菓子食う約束してるんだろ?」
「遊んでいいんですか?挨拶とか……」
「全部俺を通す様にしてある。リリ個人への挨拶は控える様に通達してあるしな。俺は少し付き合いがあるから楽しんでこい」
そう言って優しく背中を押してくれた先には、小さなわたしのお友達。
「テオ君!スーツ、可愛い!似合ってる!!」
「姫様の方がお可愛らしいです!本物の妖精姫が踊っているみたいです!!」
わたしのテオ君が今日も可愛い。
プレゼントしたアラン君ベアを片手に抱いて、空いた手で私と手を繋いでくれる。はぁ、尊い。
「公爵様が聖都の菓子店全部に競わせてるんです!きっと凄いです!!」
「楽しみだね!いっぱい食べよう!」
◇◆◇
「は~楽しかったし、美味しかったわ!王族が最後までいるとみんな楽しめないから私達はもう帰るけど、アレ、気をつけるのよ?」
エルの目線の先にはヘスタ領のマリアンさんがいて、灰色の髪の騎士にエスコートされている。深緑の隊服は見た事がないので、ヘスタの騎士団の隊服なのかもしれない。
「今日、三回目の魔力を流すんだって。パートナーがいるみたいだし大丈夫だよ」
「シェイド兄様も警戒はしていると思うわ?リリもちゃんと気をつけなさいよ」
そう言って去っていくエルとアスラン殿下を見送って、テオ君と会場を周る。
「テオ君、あれはなぁに?」
「遊騎盤ですね!貴族の遊びです」
「へぇ、人が結構いるね?難しいのかな?」
「どうでしょう、ゲームですからそこまでじゃないとおもいますよ?僕も初めて見ました!」
「テオ君が興味あるならいってみようか」
「はい!兄さんは下手らしいです!」
「ふふふ」
ポーカーみたいなゲームだろうか。それならアラン君は苦手そうだなとクスクス笑ってしまう。
近づいてみると、五角形の卓がそのまま大きな盤になっていて一辺に一人ずつが座っている。
騎士の形の駒があり、それぞれ五色に色分けされていてチェスに似たゲームの様だった。
「姫様!やってみましょう!僕ルール覚えました!」
近くの卓をじっとみていたテオ君が嬉しそうに誘ってくれる。えぇ……もう覚えたの?
「ん、興味はあるんだけど、私こうゆうの苦手なの。テオ君、一緒にやってくれる?」
「はい!!」
————「リリ様、どうぞこちらに」
呼ばれて振り向くと、マリアンさんのパートナーだった深緑の隊服を着た騎士様が椅子を引いてくれていた。
暗い灰色のフワフワしたくせっ毛の髪が目にかかるほどで、黒縁眼鏡の奥にも灰色の目が光る。
瞳は髪に比べて薄い青みのある透き通ったグレーで、騎士様というより研究者とか司書の様な雰囲気のある人だ。
「あ、はい。じゃあすこしだけ」
(どこかで、見た事ある人だな。灰色オオカミみたいな)
「卓ごとに地形が違うんです。この卓は山と谷、川がある地形ですね。
地形を活かした戦略を立てて、敵をたおし、領地を広げて駒を増やしていく。
駒はスタックもできるんですよ。二つ重ねると騎馬兵に、三つ重ねると魔法騎士になるんです。駒が五個以下になったら負けです。「詰みました」といって卓から離れます。残った兵も捕虜として扱われます。
一度一緒にやってみましょう!お手伝い致しますので!」
◇◆◇
「シェイド、あれ魔熱の重症患者だったやつだろ。いいのか?ほっといて」
アレックスが目線で示す先に、遊騎盤で遊ぶリリの姿が見える。その横に灰色の髪に眼鏡の男。
「リリにその気がないからな。ガチガチに守って隠すのはやめだ。警備には攻撃と誘拐にだけ警戒させろ。お前らが全員揃って滅多な事もおこらんだろ。自由にさせてやれ」
「あいつフリーの騎士らしいけど妖精ちゃんのパーティーに呼ばれてる領をしらみつぶしに調べたんだろうね~立派なストーカーだねぇ!ここにくるために報酬全部つっこんだかな~?」
「儀式の時は痩せすぎて眼鏡もなかったんで気付きませんでしたが、あいつ、僕と同期です。ルーファス・カリスト。カリスト伯爵家の嫡男です。歳は二つ下ですが、成績が良く飛び級で卒業した秀才です。強いのに文官志望で……聖都で文官にも騎士にもならなかったと思ったら、こんな所にいたなんて」
「アランの二つ下か~!十七!?子供のくせにデレッデレだね~!鼻の下伸びすぎ~!妖精ちゃん大丈夫かな~」
「リリ嬢、全身で防御なさってますね……団長への態度との差に可哀想になってきました」
「リリはああ見えて男に潔癖なとこあるからな。今椅子ずらして距離とったな」
「姫様、テオを抱きしめながらうまく視線もかわしてますね……テオの髪に顔うずめちゃってますが……テオ、全然気付いてない……そのままいい子にしててくれ!頼む!」
「ワハハハハ!結局あのちっこいのが一番の脅威なんじゃね?あそこまでの寵愛を見せつけちゃうとな~今度はあのちっこいのが狙われかねんな。有象無象があの子に取り入ってくるぞ」
「自覚してるはずだ。あいつは賢い」




