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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第2章

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お茶会


ホール近くの中庭でのお茶会はシェイド様との恋バナをラミア様に根掘り葉掘り聞かれる会となってしまっている。


今日は無理やりケイトさんを置いてきたので、私にはクリストフさんの護衛だけだ。

じいやはシェイド様のお仕事のお手伝いに行ったので、後で合流する事になっている。


エルの目がハートになったまま治らないので、ラミア様の独壇場である。


「デート?」


「そうです!聖都の観劇は見に行かれました?グラセン領も独自に栄えておりますものね、あのレンガの街並みは素敵ですし、有名なカフェも多いですし」


「デートってそんなにするものです?」


「え?それは婚約者や夫が皆おりますもの。少なくても月に二、三度は誘って頂けますわよ?」


「誘って頂く……?」


「ええ、男性側からお誘いするのがマナーですもの。公爵様とはどのような交流を?」


「え……と、あれ?」


少し離れて控えてくれていたクリストフさんが青い顔をしているのが見えて余計に狼狽えてしまう。


「あらあら、恥じらうお姿もまたお可愛らしいですわね!うふふ、また次回話して下さいましね!」


ちょうどよく誤解してもらったせいで、追求は免れたけれどあたまの中はパニックで、その後のお茶会の記憶が曖昧なまま、終了になった。


帰りは迎えにくるって仰っていたけれど、お茶会が思いの外早く終わったので、シェイド様の執務室に向かって歩く。


「リリ嬢、誤解なき様!団長はあなたのことを溺愛しておりますよ!」


クリストフさんが珍しく語気を強めて慰めてくれるけれど、なんだか頭がふわふわしてしまってうまく返事が返せない。


「え?あ、うん、そうかな……」


あれだよね、シェイド様はお忙しいし、一緒に住んでるから交流も何もないよね。きっとそう。




◇◆◇




初めて来る王城の南側はどこよりも無骨な作りで、騎士団の隊服を着た人がわらわらいて落ち着かない。


「リリ!まって!」


声が聞こえて、振り返るとエルが侍女も連れずに追いかけて来ていた。


「エル?どうしたの?」


「なんだか様子が変だったから、心配だったし、お見送りに来たの」

近くにクリストフさんがいるのにちゃんと私の目を見てくれていて、気遣いに嬉しくなる。


「大丈夫だよ、でもありがとう」


突き当たりのドアが突然あいて、中から父娘(おやこ)と見られる、中年の男と金髪の美しい御令嬢が出て来た。すぐ後ろにシェイド様が見える。


「二回目は日が近い方がよろしいかしら?明日もここに伺っても?」


「主人は明日はグラセンでの職務がございますので。また日を改めて」


じいやがドアを押さえて二人を通しながら言う。


「あら?でしたら私もグラセンにまいりますわ。ヘスタにも優秀な魔法騎士はおりますのよ?移転魔法をさせますのでどこでも大丈夫ですの!」


「…………では午前に公爵邸で済ませましょう」

シェイド様の声が聞こえる。


シェイド様は私と目が合うと優しく笑ってこちらに来て下さった。


「まぁ、落ち人様ですわね?私、是非仲良くなりたいわ?」


シェイド様の目線の先を追ったのか、私を認めて駆け寄って来る。甘い、ローズの香水の匂い。


「あなた、不敬よ?先に話しかけるなんてどんな教育を受けているの。下がりなさい」


「これはエルスウィーズ殿下、私マリアン•ヘスタと申します。私どうしても、リリ様とお友達になりたくって!」


エルが驚愕の表情で固って、怒りで震えているのが分かる。


マリアン•ヘスタ。臣君に日本の価値観を植え付けられたままの御令嬢。

貴族だろうと王族だろうと敬語だけで許される価値観。

アブレシアの価値観も残ってはいるはずなので、ミックスされておかしなマナーの持ち主になってしまっているのだろう。

隣にいた父親らしき人もニコニコとしているのでこの人も被害者なのかもしれない。


「いいの、エル。リリ•ユウキと申します」


「マリと呼んでくださいな!グラセンとヘスタは切っても切れない関係でございましょう?仲良くして頂きたいの。来月のお誕生日パーティーにご招待くださらない?」


「あ……はい」


「まぁ、嬉しい!公爵様は準王族でございましょう?側室を取ることも許される身。一生の付き合いになるかもしれませんものね?二人で公爵様をお支えしましょう?」


「………………側室……」


「ヘスタ子爵令嬢、私は王太子殿下にお子様ができ次第すぐに王位継承権は放棄する旨陛下に承認頂いております。側室を取るつもりもございません。ご承知おき下さい」

シェイド様の乾いた冷たい声、久しぶりに聞いた。


「まぁ、そんなの、どうなるかまだわかりませんわ?」


「リリ、戯言だ。そんな事にはならない」

シェイド様が耳元で小声で囁くので頷く。


マリアン嬢はにこにこと笑い金髪の髪をいじる。


「本日は施術頂き感謝申し上げますわ!承諾のお手紙を頂いた時は、天にも昇る気持ちでしたのよ?」


「お手紙………………」

シェイド様からの、お手紙。

シェイド様からの、お返事。

どんなに手紙を送っても、私には返って来たことはない。


「りり?あなた顔が真っ青よ!?

兄様、少し私の部屋で休ませるわ、

兄様はすこし反省したほうがよろしくてよ?こんな不敬な女をリリに近づけるなんて!」


エルに庇う様に手を回されて、踵を返して歩く様に背中を優しく押される。


みんなの声が耳に入らない。

甘い、ローズの香りだけが鼻につく。


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