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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第2章

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橘邸

臣君の家で生活する様になって三日が過ぎた。


臣君は朝ごはんと共に現れて、私の世話を焼き、夕方になると併設されている診療所へ行く。そのまま朝まで来ない。

一日に一人しか患者さんを見ないと言っていたので、お金はどうしているのか気になるけれど、臣君との会話は何がスイッチになって怒らせてしまうのかがわからないので未だ聞けずじまいだ。


私のお部屋から見えるお庭の奥の方に、第二騎士団の制服を着た人が二人見える。

距離がありすぎて、表情までは分からないけれど、シェイド様とクリストフさんだと分かる。

二人一緒にいることもあれば、どちらか一人の時もある。

走っていってお顔を見たいけれど、

昼間はべったり臣君がわたしのそばにいるし、夕方からは姿を現さない代わりに必ず使用人の監視が着く。


使用人の着物は統一されている様で、皆同じ着物をきている。柄のない薄い藤色の着物と白金の帯。男の人は狩衣(かりぎぬ)のような衣装で、こちらは深緑の落ち着いた色だ。どちらも常に目立たない事だけを念頭に置いたような色合いで、私と臣くんが一緒にいる時は視界に入らないように徹底されている。


逆に私は毎日振袖を着せられている。

どこに出かけるわけでもないのに。

錦の柄の物から上品な柄の総刺繍のものまであって豪華絢爛な着せ替え人形になっている。



藤色の着物を着た侍女らしき人が一人前(いちにんまえ)の御前を置いて退出していった。ここの侍女は黙礼はするけれど、一切口をきかない。


「臣君は、食べないの?」


「うん、僕この世界に来てからあんまりおなかへらないんだよね。リリはちゃんと食べてね」


トントン カンカンと何か工事の様な音がずっとしていて、遠いのか近いのか分からないような距離から人の声が沢山する。


「ああ、いそいで増築工事をさせているから少し忙しないね。工事の者はこの部屋の前の庭は通らない様に通達してあるから少しはマシかな?」


「どのくらいの人がここにいるの?」


「うーん、工事の者も含めて大体二百人くらい集まってるかな?寝泊まりしてるのはまだ五十人程度だよ」


「もう帰れないなら、ここを日本にしちゃえばいいんだよ。そのために、色々ね」


そう話す臣君は艶のある灰色の着物に藍色の羽織りを肩からかけ、長い髪をハーフアップに結っていて空色の組紐が揺れて上品だ。日本にいた時よりも少しガッチリしたようにも思える。


私にお茶を立てて、美しい所作で動く。お人形が動いているかのようで落ち着かない。

シェイド様のダルそうにドアに寄りかかる姿とか、どかっとソファーに座る対象的な様子が思い出されて自然と口角が上がる。

そんな私を機嫌がいいと受け取ったのか、臣君も上機嫌で話し続ける。


「ここにいる人たちみんな元の僕らの美醜の価値観をうえつけてあるからね。住みやすいと思うよ?黒への忌避感とか、エルフとか天使とか、変な美醜の感覚があるとやりにくいしね。患者はみんな切羽詰まってるから、腕さえ良ければ大丈夫だけど、あんまり怯えられたら困るからちょっとだけいじるよ」


洗脳したって事?

ここの人達みんな?

臣君ならできるのかもしれない。

医師免許があって、天才で、魔法が使える。


「リリと僕が住みやすい様にする程度だから心配しなくていいよ。外に集まって来る奴らもうるさいしね。むしろ変な縛りが無くなって、自由になったんじゃない?さあ、今日は何しようか?お茶?お花?習字もいいね。僕に嫁ぐ花嫁修行を僕が教えるなんて、なんていい世界なんだろうね」


「隣の部屋のピアノは弾いてもいいの?」


「ん?いいよ、リリのために取り寄せたんだよ。ピアノはリリの方が上手だから、僕が教えられなくてつまらないけど」


それは、嘘だ。

臣君はちゃんと弾けばコンクールも総なめな腕前のはず。

私がある程度出来るものに興味がないだけで。


「今日はお花にしようか。日本にはない変わった花ばかりで楽しいよね」


手元のベルを鳴らすと藤色の着物の使用人が二人、お花と道具を持って入室してきた。

既にここに来る前から今日は花道と決めていたのだろう。

臣君は、そういう人だ。

選択肢を与えている様で、その実人の話は聞いてくれない。


「日本にいた時にもたまに教えていたし、花道はもうあんまり教えることもないかな?工事が終わったら、この館の花はリリが活けていいからね。ちょっと広いから、好きな所だけで大丈夫」


「このお花は?」


「ああ、それ?イレイの木の花だね。真っ黒で変わってるよね。桔梗に似てるけど、枝花を使った生け花を一緒にやったこと無かったでしょ?年中咲くらしくって、庭にもあるから練習にちょうどいいかなって」


「真っ黒……」


「こちらの世界の人は忌避してさわりもしないそうだよ、僕も実はあんまり好きではないね。何だかゾワゾワするし。梅や椿で練習したかったよ。庭の工事はこれからだし、似た様な木を探させてる所。リリは椿が似合うしね。今日の着物もすごく可愛いよ」


臣君はそう言って、椿の柄の振袖を褒める。

この人の着せ替え人形の私に拒否権は無いのだし、シェイド様がいないのにおしゃれに興味はないので心底どうでもいいのだけれど。


「お米がみつかれば良いよねぇ。魔法で種子が出来るかなぁ、ちょっと自信無いなぁ。物質なら簡単なのにね」


「物質は、簡単、なの?」


「ん?そりゃあ、成り立ちと動きさえ分かってればね。専門書の類を読み漁っといて良かったよ」


臣君はやっぱり天才だ。

人に出来ない事を軽々やってのける。

洗脳の力もあるのかもしれないけれど、臣君本人に人を惹きつける魅力がある。

だからこの人の周りはいつも人がいっぱいだ。


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