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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第2章

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プロローグ

レイオフの花が月夜にぼんやりと光り、その薄紅色の波に影がうつる。

美しいあの人の、完璧なあの人の私を包む影。


「リリ、迎えにくるよ」


懐かしい声 

安堵と畏怖が混ざり合って私の中で荒れ狂う。


(おみ)、君」




◇◆◇

◇◆◇




「お引越し?このお部屋じゃだめなの?」


「ここはそもそも客間ですから。お嬢様は坊ちゃんの婚約者となりましたし、夫婦のお部屋へ移りましょうか」


「夫婦…………?シェイド様と…………同じお部屋………………?じいや!!すぐ!!今すぐ行こう!!!」


「ふぉっふぉっふぉっ、坊ちゃんが迎えに参ります故しばしお待ちを」


「姫様!お荷物は僕達が移しますので公爵様がお迎えに来るまで姫様はそのままでお待ちくださいね!」


家令のじいやの横でテオ君が嬉しそうに報告してくれる。

最近のテオ君はなぜかじいやにつけられて、執事見習いになっている。

いつもそばにいてくれた頃に比べるとちょっとだけ寂しいけれど、おじいさまの所でのお勉強は一緒にしているし、(テオ君が進みすぎて別メニューだけれど)本人がとても楽しそうなので良かったのだろう。


「お嬢様、お召替えをいたしますか?」


「ゔぅ……シェイド様に会えるなら、おめかし、したいです……」


私の侍女のケイトさんは優秀だ。

すでにクローゼットに消えている。


「ふぉっふぉっふぉっ、ではテオさん、参りましょうか」


「はい!スラン様!」


手を繋いで去っていく二人をニマニマしながら見つめてしまう。

この組み合わせ、尊いと思うの!!


「お嬢様、髪飾りはこちらにしましょうか?」


ふわふわしている間にばあやとケイトさんによってあっという間におめかしされて、お化粧も直される。


「うん!シェイド様からの新しいプレゼントなの!妖精風だよね!?」


銀の月桂冠のヘアーアクセサリーをはめ込んでもらってテンションがあがる。

シェイド様の好みは絶対に妖精風だと思う。

この世界に来て変わった髪も目も元々の自分の色だと言われて戸惑ったけれど、シェイド様に褒めてもらえて好きになった。


「まぁまぁ、お嬢様は天使様にも妖精様にもよくにてらっしゃいますよ?ばあやの自慢のお嬢様です!」


創世の神々である天使は私の母親で、妖精は姉ということになるのだろう。

聖典の中の二人の絵と私の顔立ちはそっくりだ。


「でも、シェイド様は妖精がタイプだと思うもの!」


だから聖典の妖精様の髪型をよく真似をする。おしゃれは苦手だけど、ケイトさんもばあやもばっちりリクエストに答えてくれて嬉しい。


「何の話だ?」


開いたドアに背を預けてだるそうに立つ私の婚約者がかっこいい!


「シェイド様!!わぁ!生シェイド様!!」


「はッ!何だそれ」

琥珀色の瞳が優しく揺れる。


「シェイド様になかなかお会いできないので寂しいです……」


私の婚約者様は忙しい。

王国の総騎士団長であって、

グラセン公爵として公爵領の管理もしているし、グラセン領独自でもっているグラセン騎士団の団長でもあるんだって。


「まぁもうすぐ落ち着くだろ、めんどくせぇから全部部下に振るからな」


そう言いながら私を抱き上げてくれる。

ドームで寝ていた四ヶ月のせいで、足の筋力が低下した私を気遣って、移動はいつも縦抱っこしてくれる。もう全然歩けるのに!!


「シェイドさま?私、もう歩けますよ?」


「気のせいだろ」


「ふふふ、気のせいかも!」


「部屋の話は聞いたか?」


「はい!すごく嬉しいです!!」


「そうか」


シェイド様は饒舌ではないけれど、一つ一つの言葉が優しくてあったかい。

それがたまらなく愛しくてお話しするだけでキュンキュンする。


「わぁ!すごく可愛い!」


私好みにスッキリ整えられたお部屋は、細々とした所に可愛らしさが意識されていて上品だ。

更紗の布が垂れた天蓋ベットの横には、お庭が望める窓があって、お気に入りのファブリックソファーとミニテーブルが置かれている。

私のお気に入りの場所をみんなが知ってくれていて、同じにしてくれようとしたその気持ちが嬉しい。


「気に入ったか?」


「はい…………嬉しい」


ティーセットを乗せたワゴンと共に後から入ってきたケイトさんが、テーブルにお茶を並べてくれた。


シェイド様はいつも乱暴な言葉を使うけれど、貴族マナーの所作はとっても上品だ。

ティーカップをもちあげる仕草がすごく絵になる。


「今日からシェイド様と一緒に寝られますか!?」


「ブフォッッッッッッ!!」


「?だめでした??」


「ゲホッゲホッ…………俺の妖精が無邪気に俺を殺しにかかる…………」


「シェイドさま?」


「俺の部屋は隣だ。そこの内扉で繋がってる。これがその鍵だ、渡しとく」


アンティークの真鍮キーが私の手の上に渡されて、ちょっぴりガッカリしてしまう。


「一緒に……ねないの?」


ガシャーーーーン!!

あ、シェイド様ティーカップ割った。ってゆうか握りつぶした。え、どんな握力?


「俺の方からは鍵穴がないから、安心しろ」


「…………そんな安心いらないもん…………」


「………………………………」


ふーんだいいもんね、突撃してやる!!!


「…………はぁ~~、成人は二十歳なんだろ?」


あぁ、飲酒の年齢の話を覚えてくれていたんだな。

こちらの世界は十五歳が成人で飲酒も十五歳だから、二十歳が成人と思ったのかな。

大切にしてくれているのがわかって、くすぐったい。


「ふふふ、はい。お話したくなったら、行ってもいいですか?」


「あぁ。いつでも自由に入ってくれていい」


嬉しくて、幸せすぎて怖いくらい。

シェイド様はクリストフさんから通信が入ったとかでまた出かけてしまったけれど、お部屋が一緒なら今よりもっと会えると思うと自然と口角が上がる。


夜遅く帰ってきたらお帰りがいえる。


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